小さな体型で被毛が多く、コロンとしたフォルムが特徴的な「ポメラニアン」。
そんなポメラニアンは、呼吸器の病気や心臓病に注意が必要です。
このほか、ポメラニアンがとくに注意すべき病気や遺伝性疾患について、その症状や費用、予防策を紹介します。
健康寿命を延ばすための飼育ポイントも紹介するので、愛犬の元気な姿をいつまでも見ていたいという飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。
目次
ポメラニアンの特徴・性格
ポメラニアンは、ふわふわの被毛とくるりと巻いたしっぽといった身体的特徴をもちます。
体高は18〜24cm、体重は1.8〜3kgほどの小型犬です。
先祖は大型犬のサモエドともいわれ、小型犬でありながら、まれに大きく成長する「祖先返り」という現象もみられます。
親しみやすく明るい性格で、家庭での飼育もしやすいのが特徴です。
ポメラニアンの平均寿命は13.8歳
ポメラニアンの平均寿命は13.8歳で、小型犬としては平均的です。
人間の年齢に換算すると、68~70歳ほどの年齢になります。
犬の年齢まとめ表
ちなみに、ギネスの最高齢記録は、21歳8ヶ月のアメリカ出身Cotyちゃん。
2024年現在では22歳のポメラニアンもいるようで、飼い主さんがしっかりサポートしてあげれば、平均寿命よりも長生きできる可能性は十分あるでしょう。
ポメラニアンの病気のなりやすさは『中程度』
犬種ごとの年間診療費から、病気のなりやすさをみてみると、ポメラニアンは中程度(Bクラス)となります。
犬全体の年間診療費が「70,683円」なのに対して、ポメラニアンが「75,616円」となり、平均的なレベルであるといえるでしょう。
ポメラニアンがかかりやすい病気ランキング
ペット保険の請求実績から算出した、ポメラニアンがかかりやすい病気ランキングはこちらです。
具体的には、次のような病気に注意が必要です。
病名 | 病気の特徴 | おもな症状 | 治療法 | 予防法 |
---|---|---|---|---|
気管虚脱 | 気管が狭くなる | ・喉からの異音 ・呼吸困難など |
テオフィリンなどの気管支拡張薬や鎮咳薬の投薬 | ・肥満予防 ・激しい運動を避ける |
僧帽弁閉鎖不全症 | 心臓の弁の不具合で血液が逆流する | ・咳 ・運動量低下 ・呼吸困難など |
・血管拡張薬、利尿薬などの投薬 ・手術 |
・肥満予防 ・早期治療 |
骨折 | 骨が細い前肢の骨折が多い | キャンと鳴いて片足を浮かせる | ・ギプス固定 ・プレートを入れる手術 |
・スロープ設置 ・床の滑り止め |
膝蓋骨脱臼(パテラ) | 膝の骨が外れる | ・関節が伸びない ・歩き方が変 |
・鎮痛剤 ・運動制限 ・手術 |
・スロープ設置 ・床の滑り止め |
他の犬種と比較して、格段に発症リスクが高いのは「気管虚脱」。
小型犬に多い病気ですが、ポメラニアンはとくに注意すべきといえるでしょう。
このほかにも、ポメラニアンは骨が弱いため、骨折や膝蓋骨脱臼といった骨に関連するトラブルも注意が必要です。
参考
アニコム家庭どうぶつ白書(外部リンク)
犬の遺伝性疾患について|公益社団法人埼玉県獣医師会(外部リンク)
1位:呼吸器の病気
ポメラニアンがかかりやすい病気ランキング1位は、呼吸器の病気です。
なかでも多いのが気管虚脱で、ポメラニアンにとって顕著にリスクが高いため、とくに注意すべきといえます。
気管虚脱
気管虚脱は、気管が狭くなって呼吸がしにくくなる病気です。
初期症状としては乾いた咳が特徴ですが、呼吸時に「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような音が聞こえることもあり、重症化すると呼吸困難やチアノーゼ、失神が起こる可能性もあります。
治療は、気管支拡張薬や鎮咳薬などの投薬で症状緩和を図ります。
手術で完治を目指すこともできますが、処置できる病院が限られるため投薬治療が基本となります。
気管虚脱の予防や悪化を防止するには、気管に負担をかけないことが重要です。
首輪ではなくハーネスを使用する、激しい運動や興奮を避ける、室内の温度は適切に保ってパンティング(ハァハァという激しい口呼吸)を防ぐなどの対策をしてあげましょう。
気管虚脱
- 治療法:内服薬
- 治療費:およそ66,000円(年間)
- こんな症状に注意!
喉からガーガーという音が聞こえる、咳をする
2位:循環器の病気
ポメラニアンがかかりやすい病気ランキング2位は、循環器の病気です。
とくに心臓病は命にかかわるため、しっかりケアしてあげる必要があります。
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁に異常が生じ、血液が逆流してしまう病気です。
この病気は高齢の小型犬に多く、ポメラニアンも遺伝的に発症しやすい傾向にあります。
初期では心雑音が聞こえる程度で飼い主さんが気づくのは難しいですが、中程度になるとえづくような咳や運動量の低下といった異変がみられるようになります。
末期には肺水腫を伴い、呼吸困難を引き起こして命の危険にさらされることもあります。
治療には、血管拡張薬や利尿薬、強心薬など心臓の働きを促す内服薬が使われますが、発症を確実に予防する方法はありません。
心臓への負担を軽減するために、肥満を予防し、早期発見を心がけて進行を遅らせることが大切です。
僧帽弁閉鎖不全症
- 治療法:内服薬
- 治療費:およそ131,000円
- こんな症状に注意!
咳をする、散歩中に座り込む、動きたがらない
3位:筋骨格の病気
ポメラニアンが注意すべき病気3位は筋骨格の病気。
とくに多いのは、骨折や膝蓋骨脱臼(パテラ)です。
骨折
ポメラニアンは骨が細く、骨折しやすい犬種です。
運動中や事故だけでなく、日常生活の些細な動きで思いかけず骨折する可能性も。
激しくキャンと鳴く、足を床につかなくなるといった場合は、骨折している恐れがあります。
治療法は基本的に、人間と同じようにギブスで固定します。
場合によっては、手術でプレートを埋め込む必要があるケースもあります。
骨折予防には、室内での対策が必須です。
高い場所の昇り降りはリスクがあるため、ベッドやソファにはスロープを置き、フローリングは滑らないようマットを敷いてあげましょう。
骨折
- 治療法:ギプス固定、手術
- 治療費:およそ240,000円
- こんな症状に注意!
キャンと鳴く、足を床につかない、歩き方がおかしい
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼は「パテラ」とも呼ばれ、膝蓋骨(いわゆる膝のお皿の骨)が正常な位置から外れてしまう病気です。
ポメラニアンは遺伝的にリスクが高いとされており、発症すると、後ろ足を床につけない、関節を伸ばさない、歩き方が不自然になるなどの症状がみられます。
基本的に鎮痛剤やサプリメントを投与したり、運動制限や減量をしたりする保存療法が選択されますが、根本的治療を目指す場合は外科手術が必要です。
できるだけ発症を防ぐためにも、適正体重を維持しながら、フローリングは滑り止めを施す、足裏の毛は適切な頻度でカットするなど、膝への負担を減らすようにしましょう。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
- 治療法:内服薬、サプリメント、運動制限、手術
- 治療費:およそ80,000円(年間)
- こんな症状に注意!
片足を上げて歩く、スキップするように歩く、寝起きに後ろ足を伸ばそうとする
番外編|ポメラニアンがとくに注意したい病気
ここまでポメラニアンがかかりやすい病気ランキングをご紹介しましたが、ここからは、ランキングには入っていないものの、遺伝的要因や身体的特徴から、とくに注意したい病気を紹介していきます。
病名 | 病気の特徴 | おもな症状 | 治療法 | 予防法 |
---|---|---|---|---|
脱毛症 | ダニなどさまざまな原因で毛が抜ける | ・左右対称に脱毛する ・赤みやかゆみを伴う |
・ノミ・ダニ予防薬 ・アレルゲン除去 ・内服薬など |
ノミ・ダニ予防をおこなうなど |
白内障 | 目の水晶体が白濁して失明の可能性もある | ・目が見えにくい ・目が白い |
・点眼薬 ・内服薬 ・手術など |
早期治療が重要 |
流涙症 | 涙が過剰に分泌されて炎症が被毛の変色が起こる | ・涙があふれる ・被毛が変色する |
・マッサージ ・洗浄液によるケア ・手術など |
目の周りのケア |
それぞれの初期症状を把握し、いち早く愛犬の異変に気がつけるようにしておきましょう。
脱毛症
被毛が多いポメラニアンには、脱毛症が多くみられます。
毛が生え変わる換毛期にたくさん毛が抜けることは当然ですが、肌が透けて見える、左右対称に脱毛する、皮膚の赤みやかゆみが伴うといった症状は治療が必要です。
原因はさまざまありますが、原因の1つと考えられるニキビダニ(毛包虫)による症状であれば、ノミ・ダニ予防薬で予防できます。
脱毛症
- 治療法:ダニ予防薬、アレルゲン除去、内服薬など
- 治療費:およそ44,000円(年間)
- こんな症状に注意!
左右対称に脱毛する、地肌が見えるほど毛が抜ける、かゆみや赤みがみられる
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白内障
白内障は、水晶体に濁りが生じて視力が低下する病気で、失明するリスクもあります。
発症すると眼が白くなるほか、暗い場所で動くことを嫌がったり、物にもぶつかりやすくなったりします。
初期段階では点眼薬やサプリメントで進行を抑える治療がおこなわれ、症状が進行した後は、水晶体の白濁を取り除いて人工レンズを入れる手術も選択肢に入ってきます。
手術で視力は取り戻せますが、費用の問題や全身麻酔のリスクもあるため、必ずしも手術を選択しなければならないわけではありません。
効果的な予防方法がないため、病院での定期検査により早期発見を心がけ、早期に治療を始めることで進行をなるべく遅らせることが重要です。
白内障
- 治療法:点眼薬、内服薬、手術など
- 治療費:およそ47,000円(年間)
- こんな症状に注意!
夕方になると動きが鈍い、物にぶつかる
流涙症
流涙症は、涙が過剰にあふれてしまう目の病気で、被毛が変色する「涙やけ」が伴います。
原因としては、涙の通り道が詰まる鼻涙管閉塞や、まぶたが内側に入ってまつ毛が刺さる眼瞼内反症などが考えられます。
治療においては、涙の詰まりを改善する鼻のつけ根のマッサージや鼻涙管の洗浄のほか、異物を取り除く、あるいはまぶたを正常な位置に戻す手術などがおこなわれます。
悪化を防ぐには目周りの被毛を短くカットすることが有効ですが、改善されない場合は獣医師さんに相談してみましょう。
流涙症
- 治療法:マッサージ、洗浄液によるケア、手術など
- 治療費:およそ19,000円(年間)
- こんな症状に注意!
常に涙が多い、目周りの被毛の変色
▼犬種別かかりやすい病気を見る▼
ポメラニアンの死因となる病気
ポメラニアンはどのような原因で死亡することが多いのでしょうか。
統計データを調べると、ポメラニアン独自の数値はないものの、犬全体では「腫瘍」が最も多い死因となっています。
- 腫瘍(癌など)
- 循環器系の疾患
- 泌尿器系の疾患
人間と同じように、犬にとっても腫瘍は、悪性(癌)の場合に生存確率が低くなる病気です。
ポメラニアンも例外ではないので、体にできる腫瘍やしこりには、普段から気をつけておく必要があります。
また、ポメラニアンの発症リスクが高い気管虚脱や僧帽弁閉鎖不全症も、悪化すれば命に関わります。
病気の早期発見・早期治療を心がけ、進行してしまう前から早めに対処することが重要です。
参考
動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析(外部リンク)
ポメラニアンに長生きしてもらうために
愛犬に長生きしてもらうには、具体的にどういったことを意識すべきなのでしょうか。
ここからは、ポメラニアンの飼い主さんに気をつけてほしい4つのポイントを紹介します。
健康診断を受ける
愛犬に長生きしてもらうためには、定期的に健康診断を受けることが大切です。
ポメラニアンがかかりやすい病気には、血液検査やエコー検査などを受けることで、初めて見つかる病気もあります。
健康診断を受ける理想的な頻度は、1歳になったら年に1回、シニア期に入ったら年2回です。
被毛が多いポメラニアンは、見た目の異常にも気づきにくいため、定期的に健康診断を受けて病気が隠れていないか調べてあげましょう。
肥満にさせない
健康な状態を維持するには、肥満にさせないことも重要です。
肥満になると気管が圧迫されて、ポメラニアンに多い気管虚脱のリスクがより高まります。
骨にも負担がかかるので、骨折や膝蓋骨脱臼(パテラ)にもなりやすくなります。
愛犬の体重管理をするためにも、高カロリーな食事やおやつは避けて、毎日の散歩や室内での遊びで適度な運動を心がけましょう。
高い場所に注意
ポメラニアンの骨折原因をみてみると、次のようなケースで起きているようです。
- ・ソファやベッドからの飛び降り
- ・抱っこからの飛び降り
- ・フローリングでの転倒
こうした事態を避けるため、ベッドやソファにはスロープを置く、床に滑り止めを施すなど、家の中で骨折しないように工夫してあげてください。
また、抱っこ中に落とさないように、抱っこする際は愛犬を腕の中でしっかり安定させましょう。
「片手でスマホを操作していて犬から気がそれてしまった…」といったことのないように注意してください。
毎日ブラッシングする
ポメラニアンは被毛が多い犬種なので、毛が絡まって皮膚炎や脱毛症などを引き起こす恐れがあります。
ブラッシングで絡まりをほどき、被毛間に余分な湿気がたまらないようにしましょう。
とくに、換毛期はとんでもない量の毛が抜けるため、できれば毎日、少なくても週3回のブラッシングが理想です。
ポメラニアンは気管虚脱や骨折に注意
ポメラニアンは、遺伝的要因や身体的特徴から、気管虚脱や骨折に注意が必要です。
病気を見逃さないためにも定期的に健康診断をおこない、愛犬にいつもと違う様子や気になることがある場合は躊躇せずに、獣医師さんに相談しましょう。
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このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。