胴長でまん丸いお尻がかわいらしい「ウェルシュ・コーギー」。
しかし胴長の体形ゆえ、足腰の病気にはとくに注意が必要です。
年齢別にみると、以下のような病気になりやすい傾向にあります。
こうした病気について、詳しい症状や治療法、治療にかかる費用などをまとめて紹介します。
病気の予防策や健康に暮らすための飼育ポイントも紹介するので、コーギー愛にあふれる飼い主さんはぜひ参考にしてください。
目次
ウェルシュ・コーギーの特徴と性格
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
体高・体重 | 25~30cm オス 10~12kg メス 9~11kg |
毛質 | ダブルコート |
身体的特徴 | 体長が長い胴長体型 筋肉質でがっしりした体格 |
平均寿命 | 約12.6歳 |
病気のなりやすさ | 平均的 |
気をつけたい病気 | 変性性脊髄症(DM)、椎間板ヘルニア、膿皮症など |
コーギーは、長い胴体や断尾された丸いお尻が特徴的な犬種。
体重は10kg前後で、中型犬に分類されます。
ひとくちにコーギーといっても、「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」と「ウェルシュ・コーギー・カーディガン」という2種類の犬種に分かれ、このうち現在ポピュラーなのは「ペンブローク」です。
陽気で社交的な性格ですが、警戒心が強くて気が強いという一面も。
また食欲旺盛な子が多く、体重コントロールに手を焼く飼い主さんも少なくありません。
ウェルシュ・コーギーの平均寿命は12.6歳
コーギーの平均寿命は12.6歳で、人間でいえば66歳ほど。
中型犬としては平均的で、とくに短命ということはなさそうです。
犬の年齢まとめ表
ちなみに最高齢のギネス記録はありませんが、日本における最高齢は20歳という情報も。
しっかり健康管理をして、できるだけ元気に長生きさせてあげたいですね。
ウェルシュ・コーギーの病気リスクは平均的
動物病院での診察費用のデータから、犬種ごとの病気のなりやすさを調べてみると、コーギーの病気のなりやすさは平均的といえます。
体が弱いわけではないものの、気になるのはコーギー特有の遺伝子疾患があること。
とくに、脊髄に異常が出て歩けなくなる「変性性脊髄症(DM)」や、血液の病気である「フォンウィルブランド病」には注意すべきといえます。
ウェルシュ・コーギーがかかりやすい病気ランキング
ペット保険の請求実績を参考に、コーギーが注意したい病気やケガはこちらです。
ペット保険の請求実績からコーギーに多い病気を調べたところ、「骨格筋の病気」がとくに多いという結果がみえてきました。
他の犬種に比べて4倍以上のリスクがあるので、とくに注意が必要です。
詳しくは以下のとおりです。
病名 | 病気の特徴 | おもな症状 | 治療法 | 予防法 |
---|---|---|---|---|
変性性脊髄症 (DM) |
脊髄の障害により麻痺が進行する遺伝病 | ・脚の麻痺 ・排泄困難 ・呼吸困難など |
・四肢の保護 ・体重管理 ・理学療法など |
確実な予防法がないため発症後に適切なケアをおこなう |
椎間板ヘルニア | 背骨の椎間板が飛び出して神経を圧迫する | ・痛み ・歩行困難 ・麻痺など |
・投薬治療 ・手術など |
・肥満を避ける ・床の滑り止め ・負担のかかる抱っこの仕方をしない |
膿皮症 | バリア機能の低下により常在菌が繁殖する皮膚病 | ・皮膚のかゆみ ・発疹 ・膿疱 ・脱毛 |
・抗生剤 ・薬用シャンプー |
定期的にシャンプーする |
膀胱炎 | 膀胱の炎症により排尿異常がおこる | ・頻尿 ・尿が出ない ・血尿など |
・抗生剤 | ・水分を摂る ・結石を防ぐフードを選ぶ ・陰部を清潔にする |
リンパ腫 | リンパ球が腫瘍化する | ・体のしこり ・食欲低下 ・元気がないなど |
・抗がん剤 | 早期発見を心がける |
フォンウィルブランド病 | 血が止まりにくくなる遺伝病 | 鼻血や発情時に血が止まりにくい | 必要に応じて輸血を実施 | 出血を伴う手術をするときは点鼻薬で止血管理をおこなう |
参考
アニコム家庭どうぶつ白書(外部リンク)
1位:筋骨格の病気
コーギーが最もなりやすいのは「筋骨格の病気」です。
ミニチュア・ダックスフンドと同じように、胴体が長いため足腰への負担が大きく、こうした病気にかかりやすいと考えられます。
なかでもコーギーは、「DM」と呼ばれる変性性脊髄症や、椎間板ヘルニアに要注意です。
変性性脊髄症(DM)
変性性脊髄症(DM)は、脊髄の障害によってゆっくり麻痺が進行していく遺伝症。
人間の難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に似た病気とも考えられています。
この病気になると、後ろ足から麻痺が始まり、やがて呼吸困難や嚥下障害を起こして死に至ります。
10歳を過ぎて発症することが多く、発症後の余命は3年ほどとされます。
初期の症状は、後ろ足をすって歩く、腰が安定せずにふらふらと歩く、後ろ足を交差させながら歩くといった、異常な歩き方が特徴です。
次第に前足も麻痺するため排泄が困難となり、病変が脳幹まで達すると呼吸困難などを起こします。
現時点では、この病気の治療法は確立されていません。
また遺伝性疾患であるため確実な予防策もありませんが、発症後は運動を積極的に取り入れることで、自力で歩ける期間を延ばせると考えられています。
変性性脊髄症(DM)の発症確率
変性性脊髄症(DM)は、変異遺伝子が原因だと考えられています。
こうした変異遺伝子の保有率を調査したところ、2016年には国内にいるコーギーの48.4%に発症リスクがあることが確認されました。
しかしその後は、遺伝子検査を取り入れた繁殖計画など、DM撲滅に向けた取り組みがおこなわれ、2019年は14.5%、2022年は2.9%と、発症確率は減少傾向にあります。
コーギーの遺伝子検査の費用・方法
遺伝病である変性性脊髄症(DM)は、遺伝子検査で発症リスクを調べることができます。
現在、遺伝子検査のサービスは複数の企業から提供されており、費用は1疾患につき5,000円ほどで調べられるのが一般的です。
検査方法は簡単で、検査キットが自宅に届いたら、愛犬の口の中を拭って粘膜を採取。
その検体を返信用の封筒で返送すると、遺伝子解析の判定結果が送られてきます。
変性性脊髄症(DM)
- 治療法:四肢の保護、理学療法など
- 治療費:症状による
- こんな症状に注意!
後ろ足をすって歩く、ふらふら歩く
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、背骨の椎間板が飛び出して神経を圧迫することで、強い痛みが出る病気です。
コーギーやダックスフンドといった、軟骨異栄養犬種が発症しやすいとされます。
初期の時点では、抱っこをすると痛そうに鳴いたり、散歩や段差の昇り降りを嫌がったりします。
しかし進行すると歩行が困難となり、足が麻痺して強い刺激にも反応できない状態に陥ります。
椎間板ヘルニアの治療は、軽度のうちはステロイド剤などで炎症を抑える投薬治療を、重度になると外科手術をおこなうのが一般的です。
発症を予防するには、負担のかかる抱っこの仕方をしない、肥満を避ける、足が滑りにくい環境を整えるなど、腰に負担をかけない対策が有効です。
椎間板ヘルニア
- 治療法:投薬、手術など
- 治療費:およそ100,000円
- こんな症状に注意!
抱っこすると鳴く、歩きたがらない
2位:皮膚の病気
足腰の病気のほかにも、コーギーは皮膚の病気になりやすい傾向があります。
とくに皮膚に菌が繁殖して起こる膿皮症には注意が必要です。
膿皮症
膿皮症は、ブドウ球菌などの常在菌が引き起こす皮膚炎です。
常在菌は通常なら悪さをしませんが、皮膚のバリア機能が低下すると皮膚に感染して炎症を引き起こします。
症状としてみられるのは、赤い発疹や膿疱(膿を伴う発疹)、かゆみ、脱毛など。
全身にあらわれますが、とくに指の間や脇、お腹、股のまわり、背中に多く発現します。
悪化すると、膿疱が破裂して皮がめくれたり、黒い色素沈着が起こったりして、痛々しい状態になってしまいます。
この病気の治療は、抗生剤の投薬や、抗菌作用のある薬用シャンプーの使用が一般的です。
定期的なシャンプーは膿皮症の予防策としても有効ですが、シャンプー剤が残ると皮膚トラブルの原因になるため、十分に洗い流すことが必要です。
膿皮症
- 治療法:抗生剤、薬用シャンプー
- 治療費:およそ26,000円
- こんな症状に注意!
体をかゆがる、赤い発疹が出る、脱毛する
3位:泌尿器の病気
コーギーは泌尿器の病気にも注意が必要です。
コーギーは遺伝的に結石ができやすく、その結石が原因で膀胱炎になりやすいとされます。
膀胱炎
膀胱炎とは、膀胱に炎症が起きて痛みや排尿異常が起こる病気です。
発症すると、トイレの回数が増える、排尿体勢になるのに尿がほとんど出ないなど、排尿の異変がみられます。
やがて尿に濁りや血液が混じる、痛みで排尿時に鳴くといった状態に。
さらに進行すると結石が詰まって尿路閉塞を起こし、急性腎不全で命の危険が生じることもあります。
膀胱炎の治療方法は、抗生剤の投与が一般的です。
この病気を予防するには、たっぷりと水を与える、結石ができにくいフードを与える、陰部を清潔にするといった対策が有効です。
なお、先述のとおり、コーギーは変性性脊髄症(DM)になりやすい犬種です。
この病気になると末期には排尿困難になるため、膀胱炎を発症するケースが多いようです。
膀胱炎
- 治療法:抗生剤
- 治療費:およそ27,000円(年間)
- こんな症状に注意!
頻尿、あまりおしっこが出ない
4位:腫瘍
コーギーがなりやすい病気の4位は「腫瘍」です。
なかでもコーギーは、リンパ腫や脳腫瘍を発症しやすい傾向があります。
リンパ腫
リンパ腫は、免疫にかかわる細胞であるリンパ球が腫瘍化する病気です。
6歳以降の中高齢期に多くみられ、リンパ節が腫れて病気に気づく飼い主さんが多いようです。
おもな症状は、体のしこりや食欲低下、元気消失のほか、のどのリンパ節が腫れると呼吸がしにくい、いびきをかくといった様子がみられます。
さらに進行すると肝臓や脾臓、骨髄に入り込んで機能低下を招き、無治療での余命は平均1~2ヶ月とされる危険な病気です。
リンパ腫には抗がん剤治療がおこなわれ、約80%の症例で効果が認められています。
発症に対する予防策はありませんが、抗がん剤により寿命を延ばすことができるケースが少なくないので、できるだけ早期治療を心がけましょう。
リンパ腫
- 治療法:抗がん剤
- 治療費:およそ240,000円(年間)
- こんな症状に注意!
体にしこりがある、リンパ節が腫れる
参考
腫瘍(がん)|埼玉動物医療センター(外部リンク)
5位:血液・免疫の病気
コーギーは、血液や免疫の病気にも注意が必要です。
なかでも、血が止まりにくくなる「フォンウィルブランド病」は、コーギーにおける発症リスクが高いため気をつけましょう。
フォンウィルブランド病
フォンウィルブランド病は、止血に重要な役割を果たす「フォンビレブランド因子」の量が少ない、あるいは働きが弱いことなどが原因で、血が止まりにくくなる病気です。
犬の遺伝性疾患の中でよくみられる病気で、コーギーも好発犬種とされています。
日常の出血程度ではさほど問題ありませんが、鼻血や発情、歯の生え変わりなどのタイミングで血が止まりにくくなり、発覚することがあるようです。
とくに治療は必要ありませんが、大きな出血や貧血などが起きた場合は、必要に応じて輸血します。
また、手術をするときは、術前に酢酸デスモプレシンという点鼻薬を使って止血管理をおこないます。
病気そのものを予防することは難しいですが、もし血が止まりにくいと感じたら獣医師さんに相談しましょう。
フォンウィルブランド病
- 治療法:必要に応じて輸血など
- 治療費:症状による
- こんな症状に注意!
血が止まりにくい
▼犬種別かかりやすい病気を見る▼
ウェルシュ・コーギーは腫瘍による死亡に注意
コーギー独自データはありませんが、全犬種では腫瘍が最も多い死因となっています。
- 腫瘍(癌など)
- 循環器系の疾患
- 泌尿器系の疾患
コーギーはリンパ腫や脳腫瘍になりやすいとされる犬種。
リンパ腫は体を触ればしこりに気づける可能性がありますが、脳腫瘍は初期段階では症状に気づきにくいケースも少なくありません。
気づいたときにはすでに腫瘍が大きくなっている危険があるので、定期的に健康診断を行って病気に早く気づけるようにしましょう。
参考
動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析(外部リンク)
ウェルシュ・コーギーの病気を防ぐ対策
愛犬にいつまでも元気でいてもらうには、飼い主さんのサポートも欠かせません。
ここからは、コーギーに多い病気に対する予防策を紹介します。
スキンケアで皮膚病を予防
膿皮症をはじめとした皮膚病になりやすいコーギー。
肌のバリア機能が低下すると、皮膚表面で細菌が繁殖しやすくなり、皮膚トラブルにつながります。
こうした皮膚トラブルを防ぐためにも、定期的なシャンプーや保湿ケアは欠かせません。
被毛の汚れや余計な湿気を取り除くブラッシングも、皮膚の健康を保つために必要なケアの1つです。
ケアをするときは、皮膚の赤みがないか、フケが多くないか、しこりができていないかなど、愛犬の皮膚をチェックしながら病気の早期発見につなげましょう。
排尿チェックで泌尿器疾患を早期発見
コーギーは体質的に結石ができやすく、膀胱炎にもなりやすい犬種です。
こまめにおしっこをチェックして、早めに異変に気づけるようにしましょう。
チェックするときは、次の項目を参考にしてください。
・色が濃い、または薄い
・血が混じっている
・濁っている
・臭いがいつもと違う
・排尿姿勢をしているのに尿が出ない
・排尿時に痛がって鳴く
・陰部を頻繁に舐める
・水を飲む量や尿の量が多くなった
いずれかに当てはまるときは、何らかの病気が隠れているかもしれません。
異変に気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。
スキンシップで腫瘍をチェック
毎日のスキンシップは、腫瘍を早期発見するための重要な手段です。
愛犬を丁寧にマッサージしたり、全身にくまなく触れたりして、体の感触や愛犬の反応に変化がないかチェックしましょう。
とくにコーギーは、リンパ腫に注意が必要な犬種。
下あごや脇の下、後ろ足の関節など、リンパ節がある部位は念入りに確認しましょう。
定期的な血液検査・健康診断はマスト
コーギーの健康を維持するためには、定期的な血液検査や健康診断は欠かせません。
飼い主さんが気づきにくい病気も、専門的な検査で見つかることがあります。
とくにコーギーは、血液の病気であるフォンウィルブランド病になりやすい犬種です。
この病気は日常生活で気づくことは難しいですが、病院の検査で病気を把握できれば、万が一のリスクにも備えられるので安心です。
遺伝性疾患には『遺伝子検査』という選択肢も
コーギーがかかりやすい変性性脊髄症(DM)は、変異遺伝子が原因で発症する病気。
早期発見につなげるためにも、事前に遺伝子検査で発症リスクを把握しておくことは有益といえるでしょう。
この病気に確実な治療法はなく、末期には介護状態となり、最終的に死に至る病気です。
しかし早い段階から運動を取り入れれば、自力歩行ができる期間を延ばせるとの見方もあります。
できるだけ長く愛犬に元気で過ごしてもらうためにも、早めに気づいてあげられるといいですね。
ウェルシュ・コーギーは足腰の病気に注意
コーギーは、胴長の体型により筋骨格の病気になりやすい犬種です。
とくに変性性脊髄症(DM)や椎間板ヘルニアには、注意が必要とされます。
愛犬が健やかに過ごすためには、飼い主さんのサポートが欠かせません。
無理な姿勢で抱っこしない、フローリングにはラグを敷くなど、足腰に負担をかけない対策が必要です。
愛犬が過ごしやすい環境を整えて、できるだけ元気な姿で長生きさせてあげましょう!
ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』スタッフのブログです。
このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。