フィラリア症は、犬の命を脅かす危険な病気です。
犬種や年齢、体重や体調に関わらず、どんな犬でも感染のリスクがあります。
フィラリア予防は一般的になってきましたが、そもそもなぜ予防が必要なのかを飼い主さんが知っておくことは、とても大切です。
愛犬を守るためにも、フィラリア症の知識を身につけておきましょう。
目次
フィラリアとは?
フィラリアは、10~20cmほどの長さにもなる、そうめんのように細く白い寄生虫です。
犬糸状虫とも呼ばれ、感染すると体内で育った成虫が肺動脈や心臓に寄生して、さまざまな症状を引き起こします。
詳しくはフィラリアの症状の項目で解説しますが、症状が進行すると心臓をはじめ、肝臓や腎臓など他の臓器の機能も低下し確実に寿命を縮めてきます。
参考
後発動物用医薬品に関する犬の飼い主の知識と意識(外部リンク)
フィラリアの感染経路
フィラリアは、感染犬の血を吸った蚊に刺されることで感染が広まります。
感染犬の血液中にはミクロフィラリアという子虫がいて、蚊が血液を吸うことで一緒に子虫が体内に入ります。
このミクロフィラリアは、皮下組織で1ヶ月ほどかけて成長すると血管に移動し、血流にのって心臓や肺に到達、やがて健康被害をもたらします。
フィラリアの感染経路について、より詳しく知りたい方はコチラの記事を参考にどうぞ。
フィラリアを媒介する蚊
フィラリアを媒介する蚊は、主に以下の2種類です。
アカイエカ
イエカ属として代表的なアカイエカは、日本全国に生息している蚊です。
家の中に侵入することが多く、最も一般的な蚊として知られていて、特に深夜の時間帯に吸血を行うことが多いです。
冬季は休眠し活動を停止しますが、アカイエカの亜種であるチカイエカは、温度が20度前後に保たれた建物の中であれば1年中活動が可能です。
ヒトスジシマカ
ヤブカ属として最も代表的なヒトスジシマカは、体長が4.5mmほどで黒い体に白いしまもようが入っていることが特徴です。
主に東北や関東で生息していて、公園や雑木林などの直射日光が当たらない場所を好み、昼から夕方にかけて血を吸います。
アカイエカと同様に、冬は活動を停止しています。
フィラリアに感染する確率は?
フィラリアの予防をしなかった場合、約22%の確率で感染します。
さらに、外で飼育していて3年間予防薬を投与していない場合は、92%にも達します。
予防薬を正しく投与している場合の感染率は0%なので、いかに予防が大切かは明らかです。
フィラリアの感染確率について、より詳しく知りたい方はコチラの記事も参考にどうぞ。
外飼いは要注意
外で犬を飼育している場合は、とくに注意が必要です。
フィラリアは蚊が媒介する病気なので、人間も外出時の蚊に刺されるリスクが上がるように、外で生活している犬は感染リスクが上昇します。
最近は、犬用の蚊取り線香や虫よけグッズもありますが、完全に防ぐことは困難なので、外で飼育している場合は注意しましょう。
同様の理由で、保護犬もフィラリア感染率が高いと言われています。詳しくはコチラの記事をご覧下さい。
>>保護犬がフィラリア陽性。飼うときの心構えと生活上の注意点
フィラリアにかかった犬の症状
感染初期や、感染数が少ない場合はほとんどが無症状です。
そのまま何の対応もせずにいると、数年で以下のような症状が現れます。
- 物が詰まったような咳
- 食欲が無い
- 運動を嫌がる
- 体重減少
- 口や目などの粘膜が白っぽい
- 尿に赤みがある
- 腹水が溜まる
フィラリアの症状は、心臓がダメージを受けることで起こります。
感染が軽度であればたまに咳をする程度ですが、重度になると慢性的な咳や運動をしたがらない様子などがみられます。
また、フィラリアが寄生いている場所や数などによっては、体調が急変して命を落とすこともあり危険です。
気付かない内に病状が進行しているケースも多い為、気になる症状があれば動物病院で検査を受けさせましょう。
フィラリアの症状について、より詳しく知りたい方はコチラの記事を参考にどうぞ。
フィラリアにかかった犬の寿命は?
フィラリアに感染した犬の寿命は、個体差の影響が大きく差があるため断言できません。
基礎疾患の有無や、フィラリアの寄生数によっても変わります。
そのため、感染後に発作を起こして数日で寿命を終える犬もいれば、苦しい症状を抱えながら10年以上生きるケースもあります。
しかし、フィラリアに感染した犬は、健康な犬と比べて確実に生活の質が落ちてしまいます。
症状が現れるのはいつ?
フィラリアに感染してから症状が現れるまでは、2~3年ほどかかるとされています。
初期はほとんど症状がないので、感染している事実に気づくことは困難です。
また、フィラリアの寄生数や犬の基礎疾患の有無によって寿命が変わるように、感染後に症状が現れるまでの期間も異なります。
犬から人にうつることはある?
感染した犬のフィラリアは、人間に直接うつることはありません。
その為、感染犬とスキンシップを取っても健康上は全く問題ありません。
蚊を介してうつることは稀にありますが、フィラリアにとって人間の体内は成長に適していません。
その為、成虫にまで成長することはなく、何かしらの健康被害が出ることはほとんどありません。
人間にうつるフィラリアについて気になった方は、コチラの記事を参考にどうぞ。
フィラリアの治療
フィラリアの治療には、以下の方法が用いられます。
・外科手術
・駆除薬の投与
・長期間の予防薬投与
・対症療法
寄生数が多い、緊急な処置が必要な場合は外科手術、それ以外は基本的に投薬で寄生虫を駆除します。
また、病状によっては対処療法をおこなう場合もあります。
治療は犬の年齢や寄生状況、基礎疾患の有無などでも異なるため、治療内容や機関はさまざまです。
そのため、費用は病状や動物病院によって大きく差があります。
犬にとってはどの治療法もリスクが大きいため、感染させないことが大切です。
フィラリアの治療について、コチラの記事でも詳しく解説しています。
フィラリアは完治しない
残念ですが、症状が現れるまでに進行したフィラリアは完治しません。
上述した治療によってフィラリアの駆除ができたとしても、感染期間に受けた心臓や肺へのダメージが消えることはありません。
感染してすぐに治療をおこなえば、完治に近い状態にできる可能性もありますが、初期症状がないことがほとんどなので、気づくことが困難です。
フィラリアが心臓に与える影響については、コチラの記事で詳しく解説しています。
悪化させないための過ごし方
フィラリアに感染してしまったら、悪化を防ぐ過ごし方が重要です。
最も影響を与えるのは運動なので、以下をなるべく控えて行動しましょう。
・散歩
・階段の昇り降り
・子供との遊び
・シャンプー
活発な犬は、ゲージやサークルでなるべく落ち着かせてあげましょう。
また、排泄のための散歩などやむを得ないときは、短時間で済ませて絶対に走らせないようにしましょう。
このように、感染してしまうと本来の犬らしさが失われていまいます。
それは同時に愛犬の生活の質を著しく低下させることになるので、感染させないことが最も重要であり、飼い主の義務と言えます。
フィラリアは予防で100%防げる
フィラリアは、予防さえしていれば愛犬を100%守れます。
上述したように、3年間予防しなければ感染する確率は92%ですが、適切に予防していれば0%です。
後述するフィラリア注射やフィラリア予防薬は、フィラリアを確実に防ぐ方法として獣医師も推奨しています。
フィラリアから愛犬を守るためにも、飼い主さんがしっかり予防してあげましょう。
フィラリアの予防方法
フィラリアを予防する方法は、大きく分けて注射と予防薬の2種類があります。
フィラリア注射
注射は1回で予防効果が1年持続するので、投薬を忘れる心配がありません。
しかし、フィラリア以外の寄生虫には効果がないので、別途で予防薬などを使用する必要がある点がデメリットと言えます。
予防注射の効果と費用について知りたい方は、コチラの記事も参考にどうぞ。
フィラリア予防薬
フィラリアの予防薬には、食べるタイプや滴下タイプがあります。
食べるタイプは犬が好む味つけがされている物が多く、滴下タイプは皮膚に直接垂らすだけで投薬が完了します。
最近の主流は、フィラリア以外の寄生虫にも効果があるオールインワンタイプです。
ノミやマダニ、お腹の虫などをまとめて予防することができます。
それぞれの寄生虫を駆除するために複数の薬を投与する必要がないので、犬と飼い主の双方にとって負担が小さいのがメリットです。
犬にお薬を投与するのは難しいですが、最近のフィラリア予防薬は投薬のストレスが軽減されるよう工夫されているものが多いです。
犬用のフィラリア予防薬には、以下のようなお薬があります。
有効成分 | 商品名 |
---|---|
・カルドメックチュアブル ・イベルメック ・キウォフハート ・パナメクチン錠 |
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・レボリューション ・レボスポット ・ストロングホールド |
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・シンパリカトリオ ・アドボケート ・プロハート12(注射) |
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・ネクスガードスペクトラ ・クレデリオプラス ・パノラミス錠 |
犬用のフィラリア予防薬については、以下の記事をご覧ください。
予防が必要な期間は?
お住いの地域にもよりますが、フィラリア予防が必要な期間は一般的に5~12月です。
フィラリアは幼虫であれば薬で駆除できますが、大きくなった幼虫には効果が不十分なので、1ヶ月に1回の投薬を続けて駆除し続ける必要があります。
しかし、近年は地球温暖化や蚊の活動時間の変化から、病院によっては1年間の予防が推奨されています。
予防をより確実にしたい場合は、フィラリア予防薬の通年投与がおすすめです。
地域ごとのフィラリア予防薬の投与期間については、コチラの記事を参考にどうぞ。
室内飼育でも予防は必要?
室内飼育でも、予防は必要です。
外で生活している犬に比べると感染リスクは低いですが、室内で過ごしていても蚊に刺される可能性があることに変わりありません。
エアコンで室温を下げていても、室内への蚊の侵入を完全に防ぐことはできません。
愛犬を室内飼育している場合でも、感染リスクはあるため予防は必ず行いましょう。
愛犬のために予防の徹底を
フィラリアは、命を脅かす危険な病気です。
外にいても室内にいても、フィラリアの感染経路となる蚊は防げません。
また、近年は地球温暖化の影響から1年中蚊に刺されるリスクも高まっているため、フィラリア予防薬の通年投与も推奨されています。
愛犬の健康を守ることは、飼い主の愛情のひとつです。
フィラリアに感染しないようにしっかり対策して、愛犬と長く楽しい生活を送りましょう。
ぽちたま薬局のライターです。猫が大好きです!
特に白が混ざった茶トラが好きで、来世できれば茶トラに生まれ変わりたいと少し本気で思っています。