日本において、犬のフィラリア陽性率は全国平均で30~40%と言われています。
大切な家族でもある愛犬が、「フィラリア陽性」と判明したらとてもショックですよね。
でも、フィラリア陽性であっても、ケアを受けながら日常生活を送ることができている犬はたくさんいます。
そこで、フィラリア予防薬などペットのくすりを扱うぽちたま薬局スタッフが、「フィラリア症の治療」や「生活上気を付けること」、「検査・予防の重要性」などをお伝えします。
- フィラリア症に感染すると、ダメージを受けた臓器が治ることはない
- 症状が進行しないように駆虫等の治療を行う
- 併せて運動制限や症状を改善する治療を行う
- 予防することで、100%防げる病気
- 保護犬はとくに陽性率が高い
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目次
愛犬がフィラリア陽性と診断された!フィラリア症は治る?
犬がフィラリア陽性と診断されたとしても、すぐに命を落としたり、何か重篤な症状が出るというわけではありません。
しかし、犬のフィラリア症は、完全に治ることはありません。
フィラリアに感染され、臓器がダメージを受けた場合、残念ながら完全に元の状態に戻ることはないのです。
肺や心臓などに寄生されていた場合、フィラリアをすべて取り除いたとしても、肺や心臓の治療を継続していく必要があります。
フィラリア症は、予防をすることで100%防げる病気ですが、感染すると完全には治らない。
だからこそ、フィラリアは予防することが大切です。
フィラリアの治療法と治療費
フィラリア陽性と診断された場合、適切な治療をしながら生活していくことになります。
治療を続けることで、陰転(陽性から陰性に転じること)することもあります。
フィラリア症の主な治療法として、外科手術、ボルバキア治療、温存治療があり、これらと併せて運動制限なども行われます。
治療法 | 温存療法 | ボルバキア治療 | 外科手術 |
---|---|---|---|
治療期間 | 5~6年 | 1~3年 | 1~3ヶ月 |
1ヶ月の費用 | 1,000円~6,000円 | 6,000円~10,000円 | 65,000円~80,000円 |
費用の内訳 | ・フィラリア予防薬 ・ステロイド薬 |
・抗生物質 ・フィラリア予防薬 ・ステロイド |
・開腹手術 (入院費用は含まない) ・フィラリア予防薬 |
温存療法法 詳細へ |
ボルバキア治療 詳細へ |
外科手術 詳細へ |
主な3種類の治療法以外に、成虫の駆除薬を投与する方法がありますが、現在日本国内では成虫の駆除薬が入手できないことに加え、死んだ成虫が肺に詰まることで命を落とすリスクがあるため、動物病院では基本的に行われない治療法になっています。
温存療法
温存療法は成虫の寿命を待つ方法です。
ミクロフィラリアだけに効果のある予防薬を月に一度、長期間投与し、これ以上成虫が増えないようにします。
ミクロフィラリアの死滅によるアナフィラキシーを防ぐために、同時にステロイドも投与します。
いつ成虫が後大静脈に移動するか分からないので、常に観察が必要です。
毎月の治療費は1000~6000円で済みますが、治療は成虫の寿命でもある5~6年と長期間に渡ります。
投与するフィラリア予防薬は、ぽちたま薬局で扱っているものと同じです。
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ボルバキア治療
近年ではボルバキア治療という方法を適応する動物病院も増えています。
ボルバキアはフィラリアと共生関係にある細菌で、ボルバキアを除去することで、フィラリアも死亡もしくは生殖不能になります。
ボルバキア治療では、このボルバキアを抗生剤で除去しますが、約1~3年ほどの治療期間が必要になります。
外科手術
外科手術により成虫を取り除き、その後フィラリア予防薬により幼虫を駆虫していく方法で、治療期間自体はもっとも短く済みます。
しかし、強陽性といって、咳や失神などの強い症状が出ていて、かつ全身麻酔を使用した手術に耐えられる体力がある場合に限定されるため、選択されることが少ない治療法です。
外科手術を行う場合、手術費用の相場は7万円前後、さらに入院費用や幼虫の駆除薬の費用も必要になります。
フィラリア陽性の場合の運動制限
フィラリア陽性の犬は、心臓や肺動脈にダメージを受けているため、心臓や肺に負担をかけるような、激しい運動は避けてください。
また、興奮を高めるような遊びも避けた方が良いです。
しかし、運動させないと肥満やストレスをかける原因になるので、散歩は推奨されています。
避けた方がいい運動
・全速力で走る
・ジャンプで高いところに登ったり降りたりする
・ボール投げ
・引っ張り合い
・水泳
推奨される軽い散歩の方法
・人間が小走りについていく程度の速度
・犬に合わせて30分~1時間程度
・犬が興味を示さないときは無理に散歩しない
暑さも寒さも動物の心臓に負担をかけます。
部屋の気温を適切な状態に保ってあげるようにしてください。
シャンプーをしなければならない場合は、シャワーの温度をぬるま湯に調節することをおすすめします。
フィラリア症の診断・検査方法
フィラリア症の疑いがある場合は、次のような検査を行い診断します。
・抗原検査、ミクロフィラリア検査
フィラリア症の疑いがある場合は、抗原検査と顕微鏡下でのミクロフィラリア検査を行います。
・心臓の超音波検査
咳や心雑音などといった症状がある場合は、超音波検査を行います。
心臓の超音波検査を行うことで、犬の心臓内にフィラリアが寄生していないか確認します。
もしフィラリア症と診断された場合は、さらに詳しく血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行い、重症度を判定します。
こんな症状が出たら、フィラリア症かも?
犬フィラリア症の初期の症状は、ほとんどが無症状のため、検査を受けないまま重度のフィラリア症になってしまうことも珍しくありません。
下記の症状が出たときは重度のフィラリア症と言えます。
・咳(他に思い当たる病気をしていない)
・元気がない
・散歩を嫌がる
・運動中に失神
・お腹が膨れる(腹水)
・血尿
これらの症状は、相当数のフィラリアが寄生しており、肺や血管がダメージを受けることがきっかけで発症する症状です。
見過ごしてしまいがちな初期の症状で、唯一気づきやすいのは、「咳」です。
毎日愛犬の体調に気を付け、少しでもいつもと様子が違うようであれば、動物病院を受診しましょう。
保護犬はフィラリア陽性率が高いので注意
フィラリアの感染率を高める要因として、屋外飼育と予防薬の不使用・飲み忘れがあります。
・屋外飼育
・フィラリア予防薬を使っていない(飲ませるのを忘れた)
予防薬を投与せず、屋外で3年間飼育し続けた場合、犬がフィラリア陽性になる確率はなんと92%です。
保護犬は、飼育放棄や飼育環境悪化により保護された犬で、この2つの要因が合わせて起こりやすい環境に置かれていることが多いです。
そのため、保護犬はフィラリア陽性である確率が高いといえるのです。
フィラリアの感染初期は症状が出ないことが多いため、今大丈夫そうでもフィラリアに感染している可能性は十分にあります。
保護犬を迎えた場合、まずはフィラリアの検査を受けて、感染の有無を確認しましょう。
飼い始めには必ず検査!
「保護施設ではフィラリアは陰性と言われたのに、その後の検査で陽性になった」
保護犬を飼い始めた方からは、少なからずこういった声が上がります。
フィラリア検査では抗原検査が最も感度が高いですが、寄生虫が未成熟で少数の場合は偽陰性になることもあります。
そのため「フィラリア陰性の保護犬だったはずが、陽性だった」ということが起こるのです。
お迎えした後にフィラリア駆虫薬を飲ませ始める前には、直前の検査で陰性だったとしても、必ずフィラリア検査をしましょう。
検査をせずに、いきなりフィラリアの予防薬を投与してしまうと、もしお迎えした保護犬がフィラリア陽性で、体内で成虫から多くの幼虫が生まれていた場合に、幼虫の死滅によりアナフィラキシーショックを引き起こすことがあります。
そのため、保護犬を引き取ったら一ヵ月前後でフィラリア検査を受けさせるようにしましょう。
フィラリアは人間にも感染します
フィラリアは犬だけでなく、人間にも感染する「ズーノーシス(人獣共通感染症)」です。
実は日本では2004年までの間に、約100名の人間への症例が報告されています。
ほとんどは無症状ですが、咳、血痰、腰痛、呼吸困難などがみられることがあり、まれにリンパ系が大きくダメージを受けることで、足が大きく腫れる病気、象皮病など、身体障害を引き起こす場合があります。
まとめ
1980年代は、犬がフィラリアにかかっていることは珍しくありませんでした。
フィラリアにかかったまま、気づかずに生活している犬もたくさんいたのです。
現在では治療法も考えだされていますし、フィラリア陽性でも、記事に挙げたように治療や生活に気を使いケアすれば、ワンちゃんは幸せに生きていくことができます。
・フィラリア陽性の場合、ダメージを受けた臓器は治らない
・フィラリア症の治療法は主に3種類ある
・フィラリア陽性でも犬に合った治療で問題なく生活できる
・心臓に負担が及ばないように生活環境を整える
・保護犬の場合フィラリア予防薬を飲ませる前にまず検査する
飲ませ忘れ、屋外飼育によってフィラリアにかかる可能性はありますが、毎月予防薬を与えればフィラリアは予防できる病気ですので、フィラリア検査が陰性だったとしても予防は続けましょう。
ぽちたま薬局では、病院処方と同じフィラリア予防薬も扱っています。
どんなものがあるのか、気になる方はチェックしてみてください。
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ぽちたま薬局のライター。犬も猫も大好き!
猫を三匹飼っていて、過去にはうさぎ飼育経験も。