犬がフィラリア症になることは知っている人も多いかと思いますが、猫も感染します。
室内飼いの猫でも感染することがあります。
犬と比べて症状がわかりづらく、無症状で元気そうにしていた猫が突然死することも…。
治った後も肺や呼吸器に損傷が残った場合、治療薬を飲ませ続ける必要があるのです。
たとえ室内飼いであったとしても、万全を期するなら予防薬の定期投与をしておくに越したことはありません。
ここでは、猫のフィラリアについて掘り下げます。
目次
フィラリアとは?猫における影響
フィラリア症とは、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が犬や猫に感染する病気です。
猫がフィラリアに感染すると、心臓や肺に寄生し、呼吸促拍や発咳などの呼吸器症状、嘔吐などの消化器症状を引き起こすことがあります。
猫の体内でフィラリアの成虫が死亡すると、成虫の死骸が肺を詰まらせることで突然死することもある恐ろしい病気です。
猫のフィラリア感染を防ぐためには、予防薬の定期投与が重要です。
猫のフィラリア症の感染率
猫のフィラリア症の感染率は、その地域でフィラリア予防をしていない犬の感染率の5%~20%と報告されています。
日本では、1959年~1995年に実施された病理解剖(剖検)で、本州および九州で収容された野良猫3,617頭のうち0.5%~9.5%。
家猫158頭のうち3%~5.2%にフィラリア感染が確認されています。
また1989年~1995年に行われた埼玉県の収容猫の病理解剖による報告では、2歳以上の猫368頭のうち4.1%で成虫感染が見られたとの報告もあります。
参考
猫の犬糸状虫症の2例(外部リンク)
猫のフィラリアってどうやってうつるの?感染経路について
フィラリア症の感染経路について解説します。
フィラリアは蚊が媒介する寄生虫
フィラリアが猫に感染するまでの経路を図にしてみました。
上の図のように、猫にフィラリアがうつるときも、フィラリア感染した動物の血を吸った蚊が媒介します。
フィラリアは「犬糸状虫」という名前の通り、特に犬に寄生する寄生虫ですが、他の動物に寄生するということもわかっています。
犬糸状虫の宿主域は広く、犬科動物以外にも猫やフェレット、ウサギ、クマ、アザラシ、オランウータン、ペンギンなど40種以上の哺乳類・鳥類の自然感染が報告されている。さらに、犬糸状虫の幼虫はヒトに感染することがあるため、人獣共通寄生虫症としても重要な疾病である。
思っていた以上に、多くの種類の動物にフィラリア感染の可能性があるということがわかります。
その中でも、人間のごく身近にいる動物として代表的な動物が、犬や猫です。
そのため、犬や猫のフィラリアは話題に上ることが多いですが、人間が飼育することが多いフェレットやウサギにもフィラリアは感染することがあります。
住んでいる地域によっては、外飼いの犬や猫、野良犬や野良猫、野ウサギが多くいることがあると思います(野良フェレットはあまりいないと思いますが)。
そのような地域では、フィラリア感染に充分警戒した方がよさそうです。
猫がフィラリア症に感染するとどうなる?
フィラリア症に感染した猫は、突然死することもあります。
猫がフィラリア症に感染すると、どのような症状があらわれるか詳しく解説します。
フィラリア症にかかった猫の症状は
猫がフィラリア症に感染すると、次のような症状がみられます
- 呼吸困難
- 咳
- 嘔吐
- 食欲の低下
- 体重減少
- 元気消失
- うつ など
本来犬に入るはずのフィラリア幼虫が猫の体内に入ると、通常は死滅します。
問題は、死滅したフィラリア幼虫が肺血管に達した際の免疫反応によって、過呼吸や咳などの呼吸困難を引き起こすこと。
獣医師も診断が難しく、これらの症状によって猫が「フィラリア症にかかった」とわかるケースは稀。
どれもありふれた症状ですし、そもそも猫のフィラリアの寄生数が少なく血液検査でも検出しづらいからです。
したがって猫に現れている症状ごとに投薬され、根本治療が行われにくいのが現状です。
症状が出ると数時間で死に至ることもある
しかも厄介なことに猫のフィラリアは、突然死を引き起こすことがあり、大変危険なものです。
フィラリアは、蚊からもらってしまう時にはすでに幼体の状態で猫の体内に取り込まれます。
駆虫されずに体内に住み続けると、フィラリアは猫の体の中でどんどん成長していき、成虫となっていずれ心臓や肺動脈に住み着きます。
フィラリアは、従来は右心室に住み着くものですが、まれに右心室を離れ、後大静脈などに移動してしまうことがあります。
そうなると、後大静脈症候群(VCS)などの、重大な病気を発症することがあります。
VCSなどに陥った猫は、症状を現わしてから数時間で死に至ることもあります。
また、フィラリアが成虫となって心臓に住み着いてしまうと、手術が必要になることがあります。
ですが、猫が麻酔に耐えられず死んでしまうことや、心臓が小さいため、負担のかかる手術ができずに死んでしまうこともあるのです。
フィラリアの生態について、詳しくはこちらの記事でも取り上げていますので併せてごらんください。
猫フィラリア症の予防法
フィラリア症は、毎月フィラリア予防薬を投与することで予防できます。
室内飼いの猫もフィラリアに感染するので、完全室内飼いの猫もフィラリア予防は必要です。
猫のフィラリア症は診断が難しく、症状が出ることがあっても喘息やアレルギー性気管支炎などと誤診されたり、見逃されてしまったりすることがあります。
その他、猫がフィラリア症に感染すると、急死してしまうことが多く、生前の診断が難しいのが現状です。
また猫がフィラリア症に感染し、肺にダメージを受けてしまうと完治が難しく、生涯にわたり治療が必要になります。
そのため、愛猫がフィラリア症に感染しないように、毎月予防することが大切です。
猫のフィラリア予防薬
猫用のフィラリア予防薬には、スポットオンタイプと錠剤(飲み薬)の2種類ありますが、スポットオンタイプ(製品名:レボリューション、ネクスガードキャットコンボなど)が主流です。
商品名 | タイプ | 効果 |
---|---|---|
レボリューション | スポット | フィラリア予防、ノミ・ミミヒゼンダニ・猫回虫の駆除 |
ネクスガードキャットコンボ | スポット | フィラリア予防、ノミ・マダニ・ミミヒゼンダニ・回虫・鉤虫・条虫(瓜実条虫、猫条虫、多包条虫)の駆除 |
ミルプラゾン | 錠剤 | フィラリア予防、回虫・鉤虫・鞭虫・多包条虫の駆除 |
このブログを運営する、私たち「ぽちたま薬局」では、レボリューションやネクスガードキャットコンボをはじめ、さまざまな犬猫用のフィラリア予防薬を取り扱っています。
フィラリア予防薬の副作用
フィラリア予防薬には、次のような副作用があります。
- 食欲不振
- 嘔吐
- 下痢
- 嗜眠(しみん)
- 蕁麻疹
- 皮膚のかゆみ
- 一過性の流涎
- 投与部位に炎症、一過性の脱毛 など
スポットオンタイプの場合、薬剤を猫が舐めてしまうと嘔吐や流涎などの症状を引き起こすことがあるため、舐めてしまわないよう注意が必要。
猫のフィラリア予防はいつからいつまで?
近年、猫の飼育方法は完全室内飼いが基本となっており、蚊に接触する機会は無いように感じます。
ですが、近年の地球温暖化の影響で、日本においても、蚊は一年中どこかに潜んでいることが明らかになりました。
AHS(アメリカフィラリア協会)では、フィラリア予防薬の通年投与を推奨しています。
一般的なフィラリア予防薬の投薬期間は、犬のフィラリア予防薬の投薬期間と同じです。
お住いの地域が関東・甲信地方ですと、5月~11月までとなります。
その他の地域のフィラリア予防期間については、こちらの記事をご覧ください。
フィラリア検査
フィラリア予防薬を猫に投与する前に、必ず動物病院で診察(体重測定など)やフィラリア検査を行う必要があります。
猫はフィラリアに感染しても少数の寄生にとどまることが多く、血液検査をしてもわからないことが多いです。
しかし、フィラリア予防薬の添付文書には、「投与前に犬糸状虫寄生の有無を検査等により判定すること」と記載されています。
そのため、投薬開始前に必ず動物病院でフィラリア検査を受ける必要があります。
猫フィラリア症の治療方法
猫がフィラリア症の陽性になった場合は、駆虫薬を用いた治療はNGとされています。
薬によってフィラリア成虫を死滅させても、それによって免疫反応を起こしてしまい、最悪の場合は死に至ることも…。
手術のような外科治療も、心臓の大きさの問題から慎重を要します。
したがってさらなる悪化を防ぐための予防薬の月1回の投与と、症状に応じた対症療法を一生続けていくことになります。
猫のフィラリア症は治る?
仮にフィラリア症にかかっても、無症状で一生を終える猫もいます。
しかし、咳や呼吸困難、嘔吐などの症状を一度でも起こした場合、投薬を止めた途端に再発してしまうケースも多く、完治は困難です。
そのため、猫がフィラリア症にかかった場合は、残念ですが生涯にわたり、お薬と病院通いを続けざるを得ないと覚悟が必要です。
猫の体内にいるフィラリアの寿命ってどのくらい?
猫の体内に入ったフィラリアの寿命は1~3年と言われています。
フィラリアは、犬が「最適な宿主」で、犬の体内では5~6年の間、生き続けます。
それに対して、猫の方では1~3年とかなり短くなるので、猫の体内では住みにくいのだということがわかります。
しかも、猫には特に、この「フィラリアが死ぬタイミング」で、重篤な症状が出ます。
そのため、フィラリア症は猫が突然死する原因にも挙がっているのです。
フィラリア症は猫から人間にうつる?
フィラリア症に感染した猫や犬から、人間にうつることはありません。
しかし、人間も蚊に刺されることで、ごくまれにリンパ系フィラリア症に感染することがあります。
そのため、蚊が発生する時期は、人間も蚊に刺されないように対策することが大切です。
猫のフィラリアまとめ
- 猫の約1割はフィラリアにかかっている
- 猫にフィラリアが寄生すると突然死することがあり、とても危険
- 猫にもフィラリア予防は必要
- 予防薬の投与は通年投与がおすすめだが、一般的には5~11月の間(関東・甲信地方の場合)
猫のフィラリアが、表に出ることが少ない理由が分かりました。
しかし、感染するととても危険な病気だということも分かりました。
苦しい目に遭わせることのないよう、愛猫のフィラリアの予防はきちんと行いましょう。
長生きしてもらうためにも、飼い主が正しい知識を身に着けておくことは必要ですね。
猫が大好き!な、ぽちたま薬局ライターです。
我が家の2匹を含んだ地上にいるすべての猫たちのために!猫のための情報をおとどけします!現在は猫の食事について日々勉強中(*‘ω‘)