近年、温暖化の影響で日本の各地でマダニ被害が増えています。
マダニによる人間の被害の他に、犬や猫の飼い主さんは
「散歩中に愛犬が寄生されたらどうしよう」
「うちの猫、外に出かけるけど大丈夫?」
と心配になる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今すぐできるマダニの予防策や知っておけば役立つ噛まれたときの対処法、さらに人に被害を及ぼすマダニの種類やマダニの簡単な見分け方を詳しく紹介します。
目次
マダニとダニの違い
マダニは、世界で2万種以上が発見されているダニの一種です。
屋内に生息するのはイエダニやツメダニ、チリダニで、肉眼で確認するのが困難な1mm以下の大きさです。
それに対してマダニは別の種類で、屋外に生息していることがマダニとダニの違いとして挙げられます。
また、マダニは体長約2~4mm(50円玉の穴が4mm)とダニの中でも比較的大きな部類で、吸血すると体が10倍ほどの大きさに膨らみ、ホクロのように見えます。
マダニは肉眼でも見つけられる点が、マダニとダニのもうひとつの違いです。
マダニの種類
日本では約50種類のマダニが確認されており、全てのマダニが哺乳類、鳥類、爬虫類に寄生して吸血を行います。
マダニは暖かい時期に活動が活発になると言われていますが、冬でも活動しています。
ここからは、人に吸血する主なマダニ5種類を紹介します。
参考
日本本土に産するマダニ科普通種の成虫の図説(外部リンク)
フタドゲチマダニ
日本でマダニ被害が最も多いのが、フタドゲチマダニです。
体長は約2~3mmあり、ダニ類の中では大型です。吸血すると約10mm(1円玉の約半分)の大きさになります。
草地や山林のほか、市街地にも多く生息しているため、公園や空き地の芝地・草むらなどで犬や子どもが被害にあうこともあります。
タカサゴキララマダニ
タカサゴキララマダニは、日本に生息するマダニの中で最も大きく、体長が約7~8mmもあります。
吸血すると2倍以上の大きさになり、中には2.5cm(1円玉が2cm)を超える個体もいます。
雌と雄で体色が異なり、雌は赤褐色、雄は暗褐色をしています。
温暖な気候を好むため、関東から西の地域で生息が確認されていますが、近年は温暖化の影響で東北地方でも被害が確認されています。
キマチダニ
キマチダニは、日本全国で一年中活動しています。
体長は約3mm、吸血すると8mmほどです。
全身褐色で、背面の黒い紋様が特徴的です。
キマチダニは鳥獣類に寄生しますが、日本では特に野ウサギとの接触により被害が発生することが多いです。
ヤマトマダニ
ヤマトマダニは、体長約2~3mmで黄褐色の体色をしています。
マダニの中でも、人への吸血被害が多く報告されている種類です。
北海道から鹿児島まで広く分布しており、南の地域ほど生息域が広いとされています。
山林部に生息しているため、山菜取り、登山、キャンプでの吸血被害が多く見られます。
シュルツェマダニ
シェルツェマダニは、北海道・本州・四国の山間部に生息しています。
北になるほど生息域が広くなり、北海道や青森県では市街地を除く平野部にも生息しています。
体長は約3mmで褐色、鳥獣類に寄生しますが、人への被害も報告されています。
日本では、ライム病を発症するのはシェルツェマダニの吸血被害によるもので、ヨーロッパではダニ媒介性脳炎を媒介するため恐れられています。
マダニの見分け方
マダニは、ダニに関する知識がなくても比較的簡単に見分けることができます。
マダニの見分け方の一番のポイントは、「目に見える大きさであること」です。
室内などに生息するダニはとても小さく、肉眼で確認することは困難ですが、マダニは2~10mm程度の大きさがあります。
50円玉の穴の大きさ(4mm)をイメージすると、肉眼で簡単に確認できる大きさであることが分かるでしょう。
マダニとツツガムシの違い
マダニと同様に、屋外の草むらや藪などに生息するツツガムシというダニがいます。
人を刺すツツガムシは幼虫のみで、春から初夏、秋から冬にかけて被害が発生します。
マダニとツツガムシの違いとして、人を刺す幼虫のツツガムシは体長が約0.2mm、マダニは体長が約2~10mmと、肉眼で確認できるかどうかが大きな違いとして挙げられます。
ツツガムシの幼虫は「つつが病リケッチア」という病原体を保有している場合があり、ツツガムシ病という病気に感染する可能性があります。
ツツガムシ病に感染した場合、発熱(39度以上の高熱)・発疹・悪寒・全身の倦怠感などの症状が現れます。
重症化した場合は肺炎や多臓器不全を起こし、死に至る場合もあります。
参考
つつが虫病について|厚生労働省(外部リンク)
マダニに噛まれた場合の症状
マダニに噛まれた部位は、痛みやかゆみなどの症状が出る場合もあります。
しかし、マダニの唾液には麻酔様物質が含まれているため自覚症状がなく、吸血によりマダニが大きく膨れてから気づくというケースも多いです。
なお、マダニ7日ほどで満腹になります。
厄介なことに、マダニに噛まれると命の危険がある感染症を起こす可能性があるため、噛まれるのは危険です。
マダニが媒介する主な感染症は、以下の通りです。
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
・日本紅斑熱
・ダニ媒介脳炎
・ライム病
・つつが虫病
いずれの感染症も死亡するケースがあるため、迅速な対処と注意が必要となります。
マダニに噛まれた場合に行うべき対処方法は、次の項目で紹介します。
参考
ダニ媒介感染症|厚生労働省(外部リンク)
マダニに噛まれた場合の対処方法
マダニに噛まれた場合の対処方法として、できるだけ早く皮膚からマダニを除去することが大切です。
マダニに吸着されてから時間がたつほど除去が難しくなり、媒介性の感染症リスクも上がるためです。
基本的に、マダニに噛まれた場合はなるべく早く病院で処置してもらうことが推奨されています。
なお、自分で除去する場合は、ピンセットなどを使って、マダニの口の部分を摘まんで引く抜きます。
ただし、自分で取る場合はマダニの口器がちぎれて、皮膚内にマダニの口が残ってしまうリスクがあります。
また、誤ってマダニの腹部を摘まむと体液成分が皮膚内に流入しやすくなるため、うまく取れなかった場合は皮膚科や外科を受診してください。
もし発熱、倦怠感、発疹、関節痛、腹痛、下痢といった症状が出た場合は、感染症に感染している可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
マダニに噛まれないための予防策
マダニは葉の先端や裏側で、寄生対象の生物がくるのをじっと待っています。
シカやイノシシ、野ウサギなどの野生生物が生息する山林はもちろん、種類によっては市街地の公園に生息している場合もあります。
このような緑の多い場所に行くときは、長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、マダニがよじ登ってきても肌に吸着できないようにしましょう。
なお、マダニに効果がある虫よけ剤の使用もおすすめです。
また、屋外での活動後は入浴時に体にマダニが吸着していないか確認しましょう。
犬や猫などのペットを飼っている場合、ペットに寄生したマダニが飼い主さんを吸血するケースもあるため、ペット用のマダニ駆除薬を投与しておくと、ペットも飼い主も安心して過ごせます。
よくある質問
マダニに関してよくある質問を紹介しています。
気になる疑問点がある方は、ぜひご活用ください。
マダニの色は何色ですか?
マダニは褐色に近い体色をしている種類がほとんどです。
赤褐色や黒褐色といった色の違いのほか、背中に黒い紋様が入っている種類もいます。
吸血すると腹部が大きく膨れるほか、血液により黒っぽい色に見えることが多いです。
マダニは家の中にいることがありますか?
マダニが家の中にいることもあります。
マダニは屋外に生息していますが、外出時に人の衣服や服、ペットの体に寄生・付着することにより、マダニが家の中に持ち込まれる場合があります。
また、マダニの幼虫はネズミを宿主にしているため、家に侵入したネズミによってマダニが持ち込まれるケースもあります。
マダニが1匹いたらどうしたらいいですか?
マダニは1回で2000~3000匹の卵を産むほど強い繁殖力を持つため、マダニが1匹いたら繁殖して増えている可能性があります。
そのため、家の中でマダニを見つけた場合、すみやかに以下の駆除・対策を行いましょう。
・殺虫剤で駆除する
・家の中をこまめに掃除する
・駆除業者へ依頼する
まとめ
・マダニに噛まれると、命の危険がある感染症に感染するリスクがある
・マダニの予防策として、肌を露出しない服装やペット用のマダニ駆除薬が有効
ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』スタッフのブログです。
このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。