猫風邪は、”風邪”と名称がついていますが、決して油断ならない病気です。
体力のある若猫であれば自然治癒する可能性もありますが、免疫力の弱い子猫や老猫の場合、最悪命を落としてしまう可能性もあります。
そんな猫風邪ですが、残念ながら特効薬などは存在せず、症状に合わせた対症療法を中心に治療を進めていくことになります。
そして厄介なことに、猫風邪の病原体によって治療内容も少しずつ異なります。
この記事では、猫風邪の病原体ごとの治し方や、早く治すために必要なケアなどをご紹介していきます。
目次
猫風邪の治し方は?
猫風邪の治し方は、原因となる病原体で異なります。
基本的には抗ウイルス薬や抗生剤を投与して症状を抑えながら、栄養をしっかり摂って回復を待ちます。
以下に、猫風邪の原因それぞれの対処法や用いられる治療薬を紹介していきます。
今回は、病原体ごとの詳しい症状については、言及しておりません。
猫風邪の具体的な症状について知りたい方は、コチラの記事を参考にどうぞ。
猫ヘルペスウイルス
猫ヘルペスウイルスの治療には、抗ウイルス薬の内服薬や点眼薬が使用されます。
■猫ヘルペスウイルスの治療に用いられるお薬の一例
商品名 | ゾビラックス | イドクスウリジン点眼液 |
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パッケージ | ![]() |
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効果 | ウィルスの増殖抑制 | ヘルペスウイルス性角膜炎の治療 |
詳細へ | >>薬の詳細へ | >>薬の詳細へ |
抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑え、その他の症状を対症療法的に治療しながら回復を待ちます。
他には、二次感染を予防するための抗生物質や、免疫力強化のサプリなども併用されます。
お薬以外の対処法としては、水分やご飯をしっかり食べさせて、猫の抵抗力を低下させないようにすることが重要です。
動物病院によっては、なかなかご飯を食べない猫には、食欲を増進させるためのお薬を用いるケースもあります。
参考
猫ヘルペスウイルス性眼疾患について | 千寿製薬株式会社(外部リンク)
猫カリシウイルス
猫カリシウイルスは、特別有効な治療法は見つかっていません。
インターフェロンなどを用いてウイルスの増殖を防ぎながら、しっかりと水分と食事を摂り抵抗力を保つことが重要です。
■猫カリシウイルスの治療に用いられるお薬の一例
商品名 | インターフェロン | オフロキサシン点眼液 |
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パッケージ | ![]() |
![]() |
効果 | ウィルスの増殖抑制 | カリシウイルス性結膜炎・角膜炎 |
詳細へ | 取り扱いなし | >>薬の詳細へ |
しかし、猫カリシウイルスには口内炎の症状も強く出る特徴があり、ヘルペスウイルス以上に栄養管理が困難です。
口内炎の症状を抑えるための抗生剤なども併用しながら、手厚い看護が必要です。
参考
猫カリシウイルス上部気道感染症(外部リンク)
大草潔, 折戸謙介 編集. 犬と猫の治療薬ガイド 2023, EDUWARD Press, 2022.11. 978-4-86671-183-6.(外部リンク)
猫クラミジア
猫クラミジアは細菌のため、抗生物質による治療が効果的です。
主にテトラサイクリン系の内服薬や点眼薬が用いられます。
■猫クラミジアの治療に用いられるお薬の一例
商品名 | ビブラマイシン | テラマイシン眼軟膏 |
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パッケージ | ![]() |
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効果 | 細菌の増殖抑制 | 細菌性結膜炎・角膜炎の治療 |
詳細へ | >>薬の詳細へ | >>薬の詳細へ |
治療の際は、クラミジアを確実に排除する為に、少なくとも4週間の治療継続が必要です。
それ以前に治療を切り上げてしまうと再発する恐れがあるので、症状が治まった後も2~4週間の投薬継続が推奨されています。
参考
感染防御および管理に関するABCDガイドライン(外部リンク)
猫風邪は一生治らない?
ヘルペスウイルスが原因の場合、症状を抑えることは可能ですが一生治ることはありません。
症状が落ち着いた後もヘルペスウイルスは体内には残り続けるため、免疫力が低下したときに症状もぶり返す可能性があります。
猫の免疫力が落ちるタイミングとしては、例えば以下の要因が挙げられます。
- 加齢
- 生活環境の変化(引っ越し、家族が増えたなど)
- ストレス(室温、騒音、トイレが汚いなど)
- 運動不足
- 飼い主さんがかまいすぎる など
また、カリシウイルスの場合はまた別の理由でぶり返すリスクがあります。
カリシウイルスは症状が治まった後もウイルスを排出し続ける特徴があり、他の猫に感染し再感染を繰り返す恐れがあります。
猫風邪は、ストレスや生活環境に影響を受ける可能性もあるため、獣医師さんに相談して原因を突き止めることも大切です。
猫ヘルペスの再発と、それを予防するために飼い主さんができることについてはコチラを参考にどうぞ。
猫の風邪はどのくらいで治る?
猫風邪が治るまでの期間は、症状の程度や年齢、環境によってさまざまです。
軽度の猫風邪であれば、1~2週間程度で症状の回復が見られる場合もあります。
しかし、抵抗力が低い子猫や老猫への感染は重症化しやすいため、長引くリスクも高まります。
猫風邪は、悪化すると治るまでの期間もさらに長くなるため、早期発見と早期治療が大切です。
くしゃみや鼻水など、愛猫に異変が見られる場合は早めに動物病院を受診しましょう。
猫風邪は自然治癒する?
健康で体力のある猫であれば、軽症の猫風邪なら自然治癒する場合もあります。
しかし、体力のない子猫や老猫の場合は特に、自然治癒を期待して様子を見ることは非常に危険です。
前述したように、猫風邪は死亡リスクも伴う非常に危険な病気。
たかが風邪と思って油断していると、あっという間に症状が進行し重症化してしまう場合もあります。
愛猫に苦しい思いをさせないためにも、少しでも風邪の症状が現れたら獣医師に相談することを心がけましょう。
治療せず放置するとどうなる?
猫風邪は、放置すると命に関わる恐れがあるため非常に危険です。
自然治癒するケースもありますが、猫風邪が重症化してしまうリスクも否定できません。
たかが風邪だろうと放置した結果、眼に後遺症が残って愛猫の眼球を摘出しなければならない状況に陥る可能性もあります。
さらに、肺炎を併発した場合は死亡するリスクもあります。
目の後遺症や失明などのリスクについては、コチラの記事で詳しく解説しています。
猫風邪を早く治すために、飼い主さんができること
ここからは、猫風邪を早く治すために注意すべきことを解説していきます。
水分・栄養補給を欠かさない
愛猫が猫風邪になった場合、水分と栄養補給を欠かさないようにしてください。
猫風邪で食欲が著しく低下すると免疫力が落ちてしまうため、猫は症状と戦う力も奪われてしまいます。
自分自身で水や食事を摂ることが難しいケースでは、獣医師さんの指示で強制給餌や食欲増進剤を用いる場合もあります。
愛猫の免疫力を低下させないためにも、食事を十分摂れていない場合は相談してみましょう。
猫への強制給餌のやり方や、うまくできないときの対処法に関してはコチラの記事を参考にどうぞ。
猫の身体を温める
猫風邪を早く治すためには、猫の体を温めることも重要です。
体温が下がると免疫力も低下しますが、症状は室温を22~25℃前後、子猫は28~30℃前後に保つことで改善しやすくなります。
また、猫風邪の対策では湿度管理も大切です。
ウイルスの活動は湿度が高い環境で弱まるため、室内は50~60%を目安に保ち、増殖を抑えてあげましょう。
人間用の風邪薬は厳禁
人間用の風邪薬は、猫風邪を発症した猫には絶対に使用しないでください。
猫の治療に人間用のお薬を用いるケースもありますが、人間の風邪と猫風邪はまったく違う病気です。
さらに、体の作りや大きさが異なる人間と猫とでは、用量にも大きな差があります。
人間に効果があるお薬も、猫にとっては毒になる恐れがあるため、絶対に使用しないようにしましょう。
猫風邪に関するよくある質問
猫風邪に関するよくある質問をまとめました。
ぜひ、参考にしてみてください。
抗生物質が効かない時は?
抗生物質は、細菌が原因のケースには効果がありますが、ウイルスによる感染症には有効ではありません。
猫風邪への治療効果が見られない場合、細菌による感染症ではない、または複数の病原体による感染の可能性も考えられます。
抗生物質で改善が見られない猫風邪は、放置すると危険な場合もあるので獣医師さんに相談してみましょう。
猫風邪は人や猫にうつる?
猫風邪は、人間や犬にはうつりませんが、猫同士は感染率が高いので注意が必要です。
感染猫との接触で簡単にうつるため、猫風邪を持った猫を迎え入れた際に、先住猫に感染させてしまうケースもあります。
家族として迎え入れる猫は、感染の有無を確認できるまで隔離するなど、猫風邪が広がらないように対策することも重要です。
また、感染猫のお世話をする際は、他の猫に感染させてしまうリスクにも注意しておきましょう。
風邪と油断せず、しっかり看病を
猫風邪は、健康な猫であれば自然治癒するケースもありますが、油断してはいけません。
原因菌や症状によっては重症化する可能性もあるため、失明や抜歯だけでなく、最悪の場合は命を落とす恐れもあります。
猫風邪になった場合は獣医師さんの指示をよく聞いて、愛猫が少しでも早く元気になれるように看病してあげましょう。

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