愛猫の食欲が低下したとき、強制給餌をするべきか迷う飼い主さんは多いのではないでしょうか。
一回食べなかったくらいでは気にする必要はありませんが、食欲不振が続くと心配ですよね。
そこでこの記事では猫の強制給餌をすべきタイミングや正しい方法、それ以外の対処法について解説します。
目次
猫の強制給餌(きょうせいきゅうじ)とは
強制給餌(きょうせいきゅうじ)とは、一時的に食事をしなくなった猫に強制的にフードを食べさせること。
ストレス、あるいは消化器系の病気や感染症などによって食欲が低下してしまった猫への対処法のひとつです。
強制給餌は、飼い主がおこなったり手術が必要であったりと、猫の状態によって方法はさまざま。
病気の可能性があるなら、必ず動物病院で検査をしましょう。
猫がフードを食べない理由や病院へ行く目安は、以下のコラムで詳しく解説しています。
強制給餌の目的と必要性
強制給餌は、栄養不足になって衰弱しないように体力をつける目的でおこないます。
2~3日食事をしない状態が続くと、猫は肝臓の機能が低下して脂肪肝(肝リピドーシス)という病気になる恐れがあります。
猫が肥満気味の場合だと、さらにリスクが高まるため注意が必要です。
脂肪肝は、栄養不足の状態が続くことで分解された脂肪が急激に肝臓に蓄積されることによって起こる病気。
命を落とすケースも多い危険な病気なので、食事をしない状態が続く場合は注意をしましょう。
また、病気の影響でフードを食べなくなるケースもあります。
その場合には、強制給餌をしても病気の根本的な治療になりません。気になる症状がある場合は、動物病院を受診しましょう。
そして、強制給餌は猫が自分で食べられるようになるまでのサポートであり、あくまで最終手段だということを忘れないでください。
猫があまりにも嫌がるなら無理して続けることはせず、必ず獣医師に相談しましょう。
猫が食欲不振になっているときは、食欲増進剤を使うなど強制給餌以外の方法もあります。
まずは強制給餌以外の方法も検討してみてください。
猫が食欲不振になったときの強制給餌以外の対処法
先述した通り、強制給餌は猫が食欲低下に陥った際の最終手段です。
猫が自分の意志でフードを食べてくれるようになれば、それに越したことはありません。
食欲増進剤を使用したり、食事の環境を変えたり、できることは強制給餌以外にもあります。
以下より強制給餌以外にも対処法を紹介しますので、ぜひ試してみてください。
食欲増進剤を使用する
猫の食欲増進剤には、「ミラタズ軟膏」というお薬があります。
経口投与ではなく、猫の耳に塗るだけと投薬のしやすさがポイント。
塗るだけで食欲が復活するなら、こんなに嬉しいことはないですよね。
猫の食欲低下が認められた場合に、検討すべき方法の一つです。
ミラタズ軟膏の効果や使用方法については以下のコラムでも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
食事の環境を変える
食事の環境を変えてみるのも、猫の食欲を回復させる方法の一つ。
猫は繊細なので、ちょっとした音でもストレスになっている可能性もあります。
もし洗濯機や冷蔵庫などの音が気になるような場所で食事をさせているなら、静かなところへ移動してみましょう。
また、もしかしたら使っている食器では食べづらいということもあるかもしれません。
ごはんの食器を変えてみるのも検討してみてください。
フードを温める
フードを温め香りを強くすることで、猫の食欲を刺激する効果があります。
ドライフードならお湯をかける、温めたウェットフードと一緒に出しましょう。
ウェットフードの場合は電子レンジや湯煎で温めます。
いずれも温めすぎないよう注意してください。
猫の強制給餌の方法
強制給餌は、一時的にフードを食べない猫へ短期間でおこなうのが一般的です。
無理やり食べさせる行為である強制給餌は、長期間おこなうと愛猫や飼い主さんにとってストレスになりかねません。
お互いに負担をかけないためには、愛猫の意思で食事をすることが理想です。
ではここから、猫の強制給餌の方法を紹介していきます。
スムーズにおこなえるように、強制給餌について正しい知識をもっておきましょう。
強制給餌で使うもの
ここでは、強制給餌で使うものを紹介します。
猫に強制給餌をおこなう場合には、事前の準備が大切です。
■準備するもの
1:シリンジ
※成猫は20〜30ml、子猫は1.0~2.5mlを目安に、使いやすいサイズを用意。
動物病院やホームセンターなどでも購入可能。
2:流動食
ウェットフードを使用すると与えやすい。
カリカリ(ドライフード)の場合は、ふやかすこと。
3:バスタオル
猫が暴れる場合、バスタオルで包んで落ち着かせる。
4:ミル
カリカリのフードを与える場合は、ミルで細かくすることができるので便利。
流動食
流動食は、猫の体調や食欲、好みに合わせて選んであげてください。
やわらかい状態にして、飲み込みやすくしてあげるとよいでしょう。
ウェットフードとドライフード、どちらを使用してもかまいません。
ウェットフードの場合は具材をすりつぶし、ドライフードはミルなどで粉砕してお湯や水を加えて、なめらかな状態にすることで与えやすくなります。
水分が多すぎると与える量が増えて強制給餌の時間が長くなるため、状態を見て加減してください。
また、流動食は作り置きはせずに食事のたびに作って、新鮮なものを与えましょう。
強制給餌の具体的な手順
猫への強制給餌には、以下の2つの方法があります。
・上顎につける方法
・シリンジを使う方法
これらの方法には、それぞれの特徴があります。
愛猫になるべく負担をかけないためには、適した方法で正しくおこなうことが大切です。
ここからは、強制給餌の具体的な手順を紹介していきます。
上顎につける方法
上顎につける方法は、飲み込む力がある若い猫に向いている強制給餌になります。
手順は、以下のとおりです。
1.ペースト状にしたフードを指にとる
猫の口のサイズに合うように、少なめの量から始めること。
2.猫の口をあける
指2本を猫の口の端に入れることで、開きやすくなる。
3.上顎にペーストを塗る
口が開いた瞬間に、上顎にペースト状のフードを塗って手を離すと、猫が口を閉じることで嫌でも飲み込む。
手前に素早く塗って、噛まれないように指は奥まで入れないこと。
シリンジを使う方法
シリンジを使う方法は、飲み込む力がない、指で与えても吐き出す猫に有効です。
手順は、以下を参考にしてください。
1.シリンジにペースト(流動食)を入れる
流動食を入れたシリンジを数本用意すると、食べた量が把握しやすく効率もよい。
2.猫の口の脇からシリンジの先端を入れる
猫はシリンジを嫌がる子が多いため、舌で舐められるように少量ずつゆっくり、無理のないペースで与えること。
3.猫の口からこぼれたペーストをおしぼりなどで拭く
少し温かいタオルやおしぼりが拭きやすい。
猫に強制給餌をするときの注意点
猫に強制給餌をおこなう際、注意点がいくつかあります。
まず、おこなう前に必ず獣医師さんに相談すること。
咽喉頭、頸部に病気がある愛猫への強制給餌は危険です。
また、体力がなくなっている老猫は強制給餌の負担がかなり大きくなってしまうかもしれません。
愛猫の健康状態などを確認したうえで、一回の量や間隔を獣医師さんと相談しましょう。
そして強制給餌をする際の注意は、一回の量を多くしすぎないこと。
猫の胃袋は小さいため、一回で多くの量をあげすぎないよう注意してください。
目安としては一回で0.5ml~1ml程度、そこから徐々に増やしてみましょう。
間隔としては3~6時間置きが目安です。
上記はあくまで目安なので、猫の状態や体格を考え給餌をしてください。必要に応じて獣医師さんに相談しましょう。
参考
・往診わんにゃん保健室「食べさせたい(強制給餌/誤嚥させたくない/犬猫往診)」(外部リンク)
PetSmilenews for ネコちゃん【獣医師監修】老猫がごはんを食べない!流動食の与え方や強制給餌の方法(外部リンク)
また、強制給餌では普通の食事ではおこりにくい事故も発生しやすくなります。
通常であれば、誤飲をしそうになると咳などで吐き出そうとしますが、強制給餌ではうまくおこなえません。
猫の意思ではなく、人間に無理やり食べさせられているからです。
そのため、与えたフードは猫の気管に入りやすくなり、強制給餌によって誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こしやすくなります。
誤嚥性肺炎を防ぐためにも、強制給餌は猫の呼吸状態などに注意しながらおこなう必要があります。
栄養を摂らせたい気持ちはわかりますが、食欲がないのにフードを流し込む行為は、猫にとって苦痛です。
リスクも伴うので、自己判断でおこなわないようにしましょう。
必要な場合には獣医師さんと相談をしながら、安全に強制給餌をしてください。
強制給餌が難しい場合の対処法
強制給餌が難しい場合の対処法を紹介します。
鼻や食道、胃にカテーテル(チューブ)を設置して、流動食を投与する方法です。
■鼻カテーテル
鼻から胃まで細いチューブを挿入。
・設置期間:3日~数週間。
・メリット:部分麻酔での設置が可能。
・デメリット:食事は液体のみ。簡単に抜ける。
■食道カテーテル
首の横に穴をあけて、食道までチューブを挿入。
・設置期間:数週間~数ヶ月。
・メリット:全身麻酔だが比較的簡単に設置可能で、抜けにくい。太いチューブでドロドロした状態の食事も可能。
・デメリット:食道に疾患がある場合は使用不可。免疫力低下時には挿入部位の感染症に注意が必要。
■胃カテーテル
左わき腹にチューブを挿入。
・設置期間:数ヶ月~数年。
・メリット:設置のストレスが少ない。太いチューブで、ドロドロした状態の食事も可能。
・デメリット:全身麻酔での内視鏡オペ。癒着が不十分な場合にはチューブから食事が漏れて腹膜炎のリスクがある。感染症にも注意が必要。
まとめ
飼い主さんとしては、食事をしない愛猫を放置できません。
しかし、猫にとって強制給餌は大きなストレスがかかる危険な行為です。
理由がわからない愛猫にとっては、「大好きな飼い主さんに意地悪をされている」と感じてしまうかもしれません。
さらに、強制給餌では、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあります。
理想は、愛猫の食欲が戻って自分の意思でフードを食べること。
食欲増進剤を使う、フードを温めるなど、まずは愛猫が自ら食べてくれるような方法を取ってみてください。
強制給餌は自己判断ではおこなわずに、必要な場合には獣医師さんへ相談して強制給餌をおこないましょう。
愛猫の健康を守るためにも、正しい知識をもって適切な対処をすることが大切です。
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