犬におけるイベルメクチンの使用

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犬におけるイベルメクチンの使用

イベルメクチンは犬用の寄生虫駆除薬の一種です。
さまざまな寄生虫に駆除効果があり、一般的にフィラリア予防薬としても使用されています。

しかしコリーなどの犬種では、イベルメクチンの使用が原因で副作用が出ることもあるため注意が必要です。

今回はイベルメクチンの効果や副作用、またイベルメクチンを使用できない犬種にはどのような医薬品が使用できるのかについて解説していきます。

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イベルメクチンとは

イベルメクチンは世界でも幅広く使用されている、動物用の医薬品です。
犬用の医薬品としては、カルドメックなどの有効成分として知られています。

もともとは1979年に発見された新種の放射菌の研究により開発されました。
この放射菌からは寄生虫やダニ、ハエなどに強い殺虫作用を発揮する物質が発見され、「エバーメクチン」と命名されています。

そしてエバーメクチンの抗寄生虫作用を高め、動物への作用を軽減することで誕生したのがイベルメクチンです。

誕生してからは犬や牛、羊、豚など多くの動物に寄生虫駆除薬として用いられています。

また動物用だけではなく、イベルメクチンは人間用の医薬品としてオンコセルカ症や疥癬の治療に使用されています。

イベルメクチン、犬への効果

イベルメクチンの犬に対する効果は、次のようになります。

・フィラリアの予防
・疥癬の治療
・毛包虫症の治療
・ミミヒゼンダニの駆除

幅広い駆虫効果を持つため、イベルメクチンはさまざまな場面で犬用の治療薬として活躍します。

イベルメクチンは寄生虫や節足動物の神経に作用し、麻痺を起こすことで駆虫効果を発揮します。
またイベルメクチンの作用は寄生虫や節足動物にのみ選択的に働き、犬など哺乳類の動物にはほとんど影響を及ぼしません。

特にフィラリアの予防や駆虫効果に優れ、イベルメクチンの登場により犬の寿命が2倍以上に延びたことも分かっています。

イベルメクチンの副作用

元気のない犬

犬にイベルメクチンを投与した際に見られる副作用は、次のような症状になります。

・よだれ
・嘔吐
・運動失調
・ふるえ
・意識障害
・徐脈
・呼吸の低下
・昏睡

主に神経症状が現れるのが、イベルメクチンの副作用です。

ただしイベルメクチンは、基本的に副作用が起こりにくい治療薬とされます。
しかし3ヶ月齢未満の子犬に投与した場合、発育が不十分なため副作用が起こりやすくなるので、注意してください。

参考
農林水産省(外部リンク)

イベルメクチン中毒になりやすい犬種

元気のない犬

イベルメクチンは、基本的に副作用が起こりにくい医薬品です。
ただし以下のような犬種では、イベルメクチンを投与すると中毒を起こしやすいとされています。

・コリー系
・シェットランド・シープドッグ
・オーストラリアン・シェパード

通常イベルメクチンは、寄生虫や節足動物にのみ作用し、犬には影響がありません。
犬の体には医薬品を投与されたとき、脳や脊髄などの重要な組織に薬物が侵入しないようなバリア構造があるためです。

しかしこのバリア構造が不完全な場合、イベルメクチンを投与したときに多量の薬物が脳などに入り込み、副作用が起こりやすくなります。

またイベルメクチンをフィラリア予防に用いる場合は低用量であるため、一般的に副作用が起こりにくいとされています。
ただ、副作用が絶対に起こらないとは言い切れないため、油断は禁物です。

参考
コリーにおけるIvermectinの安全性の評価(外部リンク)

イベルメクチンの代替品

コリー系やシェットランド・シープドッグなどイベルメクチンの中毒を起こしやすい犬種の場合、代替品となるフィラリア予防薬が必要になります。

イベルメクチンに中毒を起こしやすい犬種でも安全性が確認されているのは、次のような種類のフィラリア予防薬です。

・セラメクチン(商品名:レボリューション)
 安全性が確認されている。

・ミルベマイシンオキシム(商品名:ネクスガードスペクトラ)
 指示された投与量を守ることで、安全に使用できる。

これらのようなフィラリア予防薬であれば、安全性が確認されているためイベルメクチンの代替品として使用できます。

イベルメクチン、犬への投与量

イベルメクチンをフィラリア予防薬として使う場合、犬の体重1kgあたりイベルメクチンとして6~12μgを経口投与します。

イベルメクチンを主成分としたフィラリア予防薬の中で主流となっているのが「カルドメックチュアブル」です。
カルドメックチュアブルには成分量が異なる複数の種類が登場しており、犬の体重別に使い分ける必要があります。

ここでは、カルドメックチュアブルを例に、使用する際の用量を犬の体重別に紹介します。

・5.6kg以下:カルドメックチュアブルP34を毎月1回、1錠を投与
・5.7~11.3kg以下:カルドメックチュアブルP68を毎月1回、1錠を投与
・11.4~22.6kg以下:カルドメックチュアブルP136を毎月1回、1錠を投与
・22.7~45.3kg以下:カルドメックチュアブルP272を毎月1回、1錠を投与

その他、疥癬や毛包虫症の治療としても使う場合は、高用量を投与します。
疥癬や毛包虫症の治療でイベルメクチンを使用する際は、獣医師の指示に従ってください。

注意点

イベルメクチンをフィラリア予防薬として使用する際には、いくつか注意点があります。
使い方を間違えると健康を害する恐れもあるため、使用前に以下の内容を確認してください。

■投与前に必ず血液検査をする
万が一フィラリアに感染している犬にイベルメクチンを投与すると、体内に寄生したフィラリアが一斉に死滅し、体内の血管に詰まる恐れがあります。
ショック症状により命を落とす危険性もあるため、イベルメクチンの投与前には必ず血液検査をするようにしてください。

■特定の犬種や月齢に関する注意
イベルメクチンはコリー系の犬種に投与した場合、中毒症状を起こしやすくなります。
また3ヶ月齢未満の子犬の場合、副作用が起こりやすいと報告されています。

特定の犬種や月齢の犬の場合は、イベルメクチンの使用前に獣医師に相談するようにしてください。

よくある質問

イベルメクチンの犬への使用に関するよくある質問を、Q&A形式で解説していきます。
安全に使用するためにも、次に解説する内容をチェックした上で投与するようにしてください。

イベルメクチンは妊娠中、授乳中の犬にも使える?

妊娠中や授乳中の犬の場合、安全のためにも獣医師に相談した上でイベルメクチンの投与を開始するようにしてください。

イベルメクチンは子犬にも使える?

イベルメクチンは3ヶ月齢未満の子犬の場合、脳内に医薬品の成分が入り込むのを防ぐバリア構造が未成熟なため副作用が起こりやすくなります。
使用前には月齢を確認し、3ヶ月齢未満の子犬にはイベルメクチンを投与しないように注意してください。

イベルメクチン(飲み薬)投与後に吐き出してしまった場合、どうしたらいい?

イベルメクチンの投与後3時間以内に吐き出してしまうと、薬の成分が十分に吸収されずフィラリアの予防効果が得られなくなる場合があります。
もしも投与後すぐに愛犬が嘔吐をしてしまったら、もう一度飲ませるようにしてください。

まとめ

イベルメクチンは動物用の寄生虫駆除薬として、犬だけでなく牛や豚、さらに人間にも幅広く使用されている医薬品です。
体内の寄生虫や節足動物にのみ選択的に作用し、副作用の発生率も高くありません。

しかしコリー系やシェットランド・シープドッグなど、特定の犬種ではイベルメクチンを投与した際に中毒症状を起こしやすくなります。
これらの犬種の犬には、フィラリア予防の際にイベルメクチン以外の種類の予防薬が必要です。

最近ではフィラリア予防薬にもさまざまな種類が登場し、セラメクチンやミルベマイシンオキシムなどコリー系などの犬種でも安全に使用できる予防薬が登場しています。
コリー系などの犬種を飼育されているご家庭では、イベルメクチンの代替品としてセラメクチンやミルベマイシンオキシムなどの成分を配合しているフィラリア予防薬を使うようにしてください。

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