猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス(FIV)が原因の感染症です。
発症すると完治することはありませんが、治療によって症状を緩和することが可能です。
この記事では、猫エイズの症状や原因、治療方法、治療薬などを解説していきます。
猫エイズに関するよくある質問も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
・猫エイズの症状
・猫エイズの原因
・猫エイズの治療方法
・猫エイズの予防策
目次
猫エイズとは
猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス(FIV)が原因で発症する感染症です。
正式名称は猫免疫不全ウイルス感染症で、猫後天性免疫不全症候群とも呼ばれます。
猫エイズの原因FIVは、猫の免疫に関わるリンパ球や樹状細胞などに感染して増殖します。
増殖したFIVは細胞を攻撃するため、感染すると最終的に免疫不全を引き起こします。
しかし、感染した猫はすぐに症状が現れるわけではありません。
数ヶ月~数年にわたり潜伏期間があるため、猫の体内にFIVが潜んでいても、健康なまま寿命を全うするケースもあります。
参考
猫免疫不全ウイルス感染症(FIV) / 猫の病気|JBVP-日本臨床獣医学フォーラム(外部リンク)
猫エイズの症状
猫エイズは、以下のステージによって症状が異なります。
・急性期
慢性潰瘍性口内炎、よだれの増加、口臭、食欲低下、くしゃみ、咳、発熱、下痢など
・キャリア期 無症状
・持続性全身性リンパ節症期
リンパ節の腫れ(目視できる部位:下顎周辺、膝の裏、四肢の付け根など)
・エイズ関連症候群期
貧血、血小板や白血球の減少、リンパ節の腫れ、口内炎、風邪症状、下痢の慢性化、皮膚病、毛並み状態の悪化など
・後天性免疫不全症候群期
更なる食欲低下、体重減少、悪性腫瘍、貧血、日和見感染、全身の機能が著しく低下、数ヶ月で命を落とす
猫エイズの原因
猫エイズに感染する原因は、猫エイズに感染した猫の唾液や血液に含まれるウイルスです。
ほとんどの感染経路は、噛み傷などから唾液や血液が体内に入る、感染猫とのケンカです。
グルーミングや食器の共有で感染は起こりませんが、愛猫に傷口がある場合は体内に唾液が入る恐れがあります。
また、猫エイズは交尾や猫エイズを保有している母猫から感染する可能性もあります。
猫エイズのほとんどは感染猫とのケンカが原因なので、多頭飼育や愛猫を外出させている場合は注意しましょう。
猫エイズの診断方法
猫エイズの診断は、血液検査で行われます。
検査には、血液に含まれる抗FIV抗体を検出するキットを使用します。
なお、幼猫は母猫からの抗体が影響するため、正確な診断は6ヶ月齢以上で可能です。
猫エイズへの感染の有無は、採取した少量の血液を検査キットにかけてから10分ほどで確認できます。
参考
FIV検査 / 猫の病気|JBVP-日本臨床獣医学フォーラム(外部リンク)
猫エイズの治療方法
現時点では、猫エイズの治療法は確立されていません。
有効な治療薬がないため、現在の医療では感染した猫の体内からFIVを完全に排除することは不可能です。
そのため、感染した猫への治療には、症状を緩和するための対症療法が用いられます。
生活の質を向上させるために対処療法を行い、進行を遅らせて症状を和らげます。
猫エイズの治療薬
猫エイズの治療に用いられる治療薬は、主にステロイドとインターフェロンです。
猫エイズで現れた症状を和らげたり、ウイルスの増殖を抑えます。
ここからは、ステロイドとインターフェロンそれぞれの治療方法について解説します。
ステロイドの投薬
猫エイズの治療では、ステロイドの投与が用いられます。
ステロイドは、口内炎や炎症などの緩和に有効な治療薬です。
口内の痛みによって食事や水分を十分に摂取できない猫に投与することで、改善効果が期待できます。
しかし、ステロイドの長期使用は副作用の懸念もあります。
治療に使用する場合、投与期間には注意しましょう。
インターフェロン療法
猫エイズに用いるインターフェロン療法は、ウイルスの増殖を抑制する方法です。
インターフェロンは、猫の体内にも存在している抗ウイルス物質ですが、猫エイズに感染すると生成できなくなります。
そのため、猫エイズの治療ではインターフェロンを投与することで、FIVの増殖を抑制させます。
なお、インターフェロン療法は、キャリア期に効果的とされる治療法です。
免疫力が低下した後は、選択できないので注意しましょう。
その他の対症療法
猫エイズには、ステロイド投与やインターフェロン治療以外にも対処療法があります。
使用される治療薬は抗生剤や鎮痛剤、抗がん剤などです。
抗生剤は免疫低下による二次感染の予防、鎮痛剤は痛みの緩和を目的として使用します。
また、悪性腫瘍の増殖を抑える場合には、抗がん剤治療が用いられる場合もあります。
>>抗生物質・抗菌剤(猫)の詳細はこちら
>>抗がん剤(猫)の詳細はこちら
猫エイズを発症させないための予防策
猫エイズを発症させないための予防策は、以下の通りです。
- 完全室内飼育を行う
- 感染猫との接触を避ける
- 去勢や避妊手術を行う
- 新しく迎え入れる猫は検査を行う
猫エイズは、感染猫とのケンカによる傷からの感染がほとんどです。
去勢や避妊を行っていない猫は、発情期に自宅から脱走する可能性が高くなります。
また、多頭飼育している家庭で新しい猫を迎え入れる際には検査を行い、感染していた場合は隔離して感染対策をしましょう。
よくある質問
ここからは、猫エイズに関するよくある質問を紹介していきます。
猫エイズは人間にうつりますか?
猫エイズは、人間にうつることはありません。
感染源になるFIVは、猫のみに感染するウイルスです。
人間のエイズが猫には感染しないように、猫エイズも人間には感染しません。
愛猫が感染した場合は触れ合っても問題ないため、今まで通り可愛がってあげてください。
猫エイズは治りますか?
猫が猫エイズに感染した場合、治ることはありません。
有効な治療方法も確立されていないため、進行の食い止めや完治はできません。
なお、対処療法を用いて症状を緩和することは可能です。
猫エイズは完治できませんが、寿命を全うできる場合もあります。
猫エイズの治療費用はいくらですか?
猫エイズの治療にかかる費用は、治療方法によって異なります。
治療費の目安は、以下の通りです。
・抗生物質: 5,000~10,000円/1回
・インターフェロン:1,000~5,000円/1回
・ステロイド:1,500~4,000円/1回
※動物病院によって異なります。
悪性腫瘍によって外科手術や抗がん剤治療が必要であれば、さらに高額になる場合もあります。
また、完治することのない猫エイズの症状は繰り返すことが多いため、定期的に治療費が必要になるでしょう。
猫エイズにワクチンはありますか?
猫エイズには、ワクチンも存在しています。
しかし、実際はワクチンを接種しても、100%予防できる効果はありません。
さらに、猫エイズのワクチンは製造中止になったこともあり、供給が不安定という理由から接種を推奨していない動物病院もあります。
また、猫エイズで使用するウイルス検査は、主に抗体を検出するものです。
そのため、ワクチンで抗体が誘発されて、感染が判断できなくなる恐れもあります。
猫エイズのワクチンを検討する場合は、メリットとデメリットを考慮したうえで判断してください。
まとめ
猫エイズは、猫免疫不全ウイルス(FIV)によって免疫不全を引き起こす感染症です。
治療法は確立されていないため、感染した場合は対処療法によって症状を緩和します。
新しく迎え入れる猫や、愛猫が猫エイズと診断されてしまった場合は、適切なケアでウイルスの増殖を抑えて症状を和らげ、健康な状態をなるべく維持してあげましょう。
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