猫コロナウイルスは「猫腸コロナウイルス感染症」とも呼ばれ、日本国内の多くの猫が持っているウイルスで、感染しても症状が出ることはほとんどありません。
しかし、猫コロナウイルスが突然変異を起こすと、致死率が極めて高いFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症します。
ウイルスが突然変異する要因は解明されていないため、FIPを発症しないために、まず猫コロナウイルスに感染させないことが重要です。
ここでは猫コロナウイルスの症状や感染経路、治療、予防方法について詳しく説明します。
目次
猫コロナウイルス(FCoV)の症状
猫コロナウイルス(FCoV)とは、生物学的に「猫腸コロナウイルス(FECV)」に分類されます。
この猫腸コロナウイルスは、感染したとしても無症状であることがほとんど。
まれに軽い下痢の症状が見られる程度で、症状から感染を判断することは難しいです。
「猫腸コロナウイルス」は、日本国内の家庭猫の約47%が感染しているという調査データもあり、猫の常在菌として知られています。
参考
家庭猫における猫免疫不全ウイルス抗体,猫白血病ウイルス抗原および猫コロナウイルス抗体の陽性率(外部リンク)
猫コロナウイルスが引き起こす病気、猫FIPとその症状
猫コロナウイルス自体の病原性は低いですが、まれに猫の体内で「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」へと突然変異することがあります。
この突然変異したウイルスが引き起こす猫FIP(猫伝染性腹膜炎)という病気は、無治療であればほぼ100%の確率で死に至る大変恐ろしい病気です。
FIPにはドライタイプとウェットタイプという2種類の症状タイプがあり、さらに両方の症状があらわれる混合タイプもあります。
両者に共通する症状として、発熱、貧血、沈鬱(元気がない状態)、食欲不振、体重減少があります。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状 | |
---|---|
ウェットタイプ | ドライタイプ |
・腹水や胸水の貯留 ・黄疸 ・貧血 ・嘔吐 ・下痢 |
・肉芽腫性炎症による症状(腎障害、肝障害、運動失調、消化器官、ブドウ膜炎) ・貧血 ・発熱 ・沈鬱 |
ウェットタイプは症状が特徴的で診断しやすいですが、進行が早く、無治療であれば余命は約2~4週間です。
逆にドライタイプは詳しく検査を行わないと診断が難しいですが、進行が遅く、無治療でも余命は約2~6ヶ月とされています。
猫のFIPの症状について詳しくはこちらのコラムで解説しているので、併せてご覧ください。
猫コロナウイルスの突然変異は原因がわからず防ぎようがないので、猫FIPを発症したとき迅速に治療できるようにしておくことが大切です。
猫FIPの治療実績がある獣医師・動物病院を調べておくとともに、進行が早い猫FIPに対して迅速に治療を開始できるよう、治療薬を準備しておくと安心です。
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猫コロナウイルスの原因・感染経路
ここまで見てきたように、猫コロナウイルスは「猫腸コロナウイルス(FECV)」と「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」の2つに分けられます。
まず「猫腸コロナウイルス(FECV)」に感染し、その後に体内で「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」に突然変異するという形が、両者の感染経路になります。
感染経路 | |
---|---|
猫腸コロナウイルス(FECV) | 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV) |
猫の排泄物、トイレや食器の共有、ケンカなどの濃厚接触で感染 | 猫腸コロナウイルス(FECV)が猫の体内で突然変異を起こして感染 |
「猫腸コロナウイルス(FECV)」に感染すると2~3日後にはウンチの中にウイルスが排泄され、他の猫が感染した猫の排泄物を口にすることで感染すると考えられています。
感染経路ははっきり解明されておらず、感染猫とのトイレや食器の共有、ケンカなどの濃厚接触なども要因として挙げられています。
感染力がとても強く、繁殖施設や保護施設、ペットショップなど、多くの猫が一緒にいる環境で感染が発生した場合、感染率は80%以上になるとされています。
家庭猫でも約47%という、高い陽性率になる原因はこの感染力の強さにあります。
家庭猫でも室内飼いの単独飼育であれば、感染率は15%以下とされているので、とにかく他の猫と接触させないことが重要です。
「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」は、「猫腸コロナウイルス(FECV)」が体内で突然変異することで感染するため、猫から猫に感染することはありません。
突然変異する原因は明らかになっていませんが、年間10%ほどの確率で変異すると言われています。
参考
猫の伝染性腹膜炎(外部リンク)
猫コロナウイルスの検査・診断
猫コロナウイルスを判定するためには、以下の検査をおこないます。
- 血液検査
→猫コロナウイルスの抗体の有無を調べる検査
検査費用:約10,000円 - PCR検査
→遺伝子検査
検査費用:約15,000円
これらの検査結果で猫コロナウイルスの陽性反応が出た場合でも、それが「猫腸コロナウイルス(FECV)」なのか「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」なのかまでは判定できないため、症状などからの総合判断により突然変異した「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」なのかを判断します。
猫コロナウイルスの治療方法
猫コロナウイルスの治療方法には、以下のようなものがあります。
点滴 | 脱水症状の改善、心臓、血管などを流れる血液の状態の安定 |
---|---|
吐き気止め | 嘔吐による脱水、体力消耗の防止 |
整腸剤 | 下痢、腸内細菌バランスの改善 |
抗生剤 | 細菌感染を改善 |
猫コロナウイルスで陽性でもほとんどが無症状のため、治療が必要ないこともあります。
下痢や嘔吐などの症状がある場合は、お薬で症状を抑えるなど対処療法をおこないます。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療方法
猫伝染性腹膜炎は、一度発症すると完治させることが困難な致死率の高い疾患です。
治療で使われるお薬はMUTIAN(ムティアン)やCFNなどの「GS-441524」治療薬と呼ばれるもの、レムデシビル、モルヌピラビルなどがあります。
ムティアンやCFNなど「GS-441524」治療薬は、82.2%の高い生存率と安全性が報告されていますが、保険適用ができない未承認薬になるため費用が100~150万円ほどかかってしまいます。
そこで近年注目を浴びているのが、ヒト用の新型コロナウイルス治療薬であるモルヌピラビルです。
高い治療効果が見込めるだけでなく、用法・容量を守れば副作用のリスクも低減でき、費用も2~5万円程度で済むため、多くの方が利用できる治療薬です。
モルヌピラビルは各病院が個人輸入している治療薬ですが、ぽちたま薬局では通販により個人輸入でご購入いただけます。
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猫コロナウイルスに感染させない予防方法
愛猫を猫コロナウイルスから守るためには、感染させないことが大切です。
そもそも猫コロナウイルスに感染しなければ、体内で突然変異を起こして猫伝染性腹膜炎(FIP)になることもないため、感染させないための4つの対策を紹介します。
①多頭飼いを避ける
②外飼いはしない
③ストレスフリーの飼育環境下で飼う
④定期的に検査をする(PCR)
それぞれ詳しく説明していきます。
猫コロナ予防法① 多頭飼いを避ける
多頭飼いをすると猫同士のストレスで免疫力が低下しやすくなり、猫コロナウイルスにも感染しやすくなってしまいます。
なるべく多頭飼いしないことが望ましいですが、すでに多頭飼いしている場合は猫の体調に変化がないか、日ごろから注意しておきましょう。
猫コロナ予防法② 外飼いはしない
外飼いをすると、他の猫との接触により猫コロナウイスに感染しやすくなります。
猫が自由に外出できる環境で飼っている場合、感染予防の観点から見るとリスクが大きいため、室内飼いに切り替えた方が良いでしょう。
猫コロナ予防法③ ストレスフリーの飼育環境下で飼う
ストレスは免疫力低下の原因となるため、愛猫が快適さを感じて過ごすことができる環境を提供してあげましょう。
猫が快適に過ごせるポイント
・家の中の高い位置に猫だけが過ごせる場所を作る(キャットタワーなど)
・爪を研ぐ場所を数ヶ所用意する
・室内は猫が快適に感じる温度に保つ
・部屋やトイレを常に清潔に保つ
・猫が嫌がる可愛がり方はしない
・慣れない場所に頻繁に連れて行かない
・頻繁に来客が来ないようにする
何がストレスになるのかは猫の性格によっても変わるため、日ごろからよく観察して愛猫の好みを把握しておきましょう。
猫コロナ予防法④ 定期的に検査をする(PCR)
もし猫コロナウイルスに感染した場合でもすぐに発見して治療できるように、定期的にPCR検査を受けましょう。
猫の血液やウンチを調べることで、感染しているかどうかがわかります。
定期的に猫を動物病院に連れて行くことで、他の病気の早期発見にもつながります。
猫コロナウイルスは人にもうつる?
猫コロナウイルスのうち、無症状であることがほとんどの猫腸コロナウイルスは、猫同士で感染・うつるリスクがあります。
しかし、人に感染することはありません。
猫腸コロナウイルスは、人間が感染するコロナウイルスとは異なる種類のウイルスなので、猫から人に感染する心配はありません。
また猫腸コロナウイルスが突然変異し、FIPを発症させる猫伝染性腹膜炎ウイルスも、人に感染・うつることはありません。
猫コロナウイルスについて、まとめ
- 猫コロナウイルスは、感染しても無症状
- 突然変異で、致死率ほぼ100%の猫FIPを発症させるウイルスになる
- 感染経路は、感染猫の排泄物を口にすることによる経口感染
- 外飼いをせず、ストレス要因を取り除くことで感染予防をする
猫コロナウイルスは、多くの猫が保有している身近なウイルスです。
しかし、突然変異したウイルスにより発症する猫FIPは、致死率の高い極めて危険な病気のため、まずは猫コロナウイルスに感染しないよう予防することが大切です。
加えて、定期的な検査で愛猫の感染状況を把握することで、愛猫を守っていきましょう。
ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』スタッフのブログです。
このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。