猫コロナウイルスは「猫腸コロナウイルス感染症」とも呼ばれ、日本国内の多くの猫が持っているウイルスで、通常は感染してもとくに症状が出ることはありません。
しかし、ウイルスの一部が突然変異を起こすことで、致死率の高いFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症することがあります。
FIPは発症すると致死率が高いため、猫コロナウイルスに感染させない対策が必要です。
ここでは猫コロナウイルスの感染経路や症状、治療、予防方法について詳しく説明します。
目次
猫コロナウイルス(FCoV)について
猫コロナウイルス(FCoV)は生物型的に、「猫腸コロナウイルス(FECV)」と「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」の2つに分かれますが、とても似ているため、検査で区別することが困難です。
ウイルスの特徴 | |
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猫腸コロナウイルス(FECV) | 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV) |
腸管に感染するが、無症状のことが多く、症状が出ても軽度の下痢程度。 | 猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症させる。 発症すると非常に高い確率で死亡する。 |
猫コロナウイルスの原因・感染経路
猫コロナウイルス(FCoV)のうち、猫腸コロナウイルス(FECV)は、猫から猫へ容易に感染します。
感染すると2~3日後にはウンチの中にウイルスが排泄されるため、他の猫が感染した猫の排泄物を口にすることで感染すると考えられています。
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)は、猫から猫へ感染する可能性は低く、猫コロナウイルスに感染した一部の猫の体の中でウイルスが突然変異を起こし、発症すると考えられています。
感染経路 | |
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猫腸コロナウイルス(FECV) | 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV) |
猫の排泄物から感染 | 猫の排泄物から猫コロナウイルス(FCoV)に感染した一部の猫の体内で突然変異を起こし発症。 |
【参考】
猫コロナウイルスと猫伝染性腹膜炎(FIP) | NPO法人東京キャットガーディアン
猫伝染性腹膜炎(FIP) / 猫の病気|JBVP-日本臨床獣医学フォーラム
猫コロナウイルスが引き起こす病気とその症状
猫コロナウイルスに感染した一部の猫の体内にいるウイルスが突然変異を起こし猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)となると、致死率の高い猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症します。
猫伝染性腹膜炎にはウエットタイプとドライタイプの2種類があり、それぞれ以下のような症状が現れます。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状 | |
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ウエットタイプ | ドライタイプ |
・黄疸 ・お腹や胸に水が溜まる ・食欲低下 ・発熱 ・沈鬱(ちんうつ) ・嘔吐 ・貧血 ・下痢 |
・貧血 ・発熱 ・沈鬱 ・肉芽腫性の炎症(腎障害、肝障害、運動失調、消化器官、ブドウ膜炎) |
FIPの有効な治療薬や治療費の相場についてはこちらの記事も参考にどうぞ。
【参考】
FIPに感染した猫に現れる症状│上池台動物病院
猫伝染性腹膜炎|鳥取大学農学部附属動物医療センター
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療方法
猫伝染性腹膜炎は、一度発症すると完治させることが困難な致死率の高い疾患です。
治療で使われるお薬はCFNやMUTIAN(ムティアン)、モルヌピラビルなどがあります。
中でも一番有効性が期待されているのがMUTIANで、82.2%と高い生存率が研究結果として報告されています。
しかしMUTIANは値段が高く、治療を終えるまでに100~150万円ほどかかってしまうため、簡単に使用できるお薬ではありません。
そこで注目を浴びているのが、ヒト用の新型コロナウイルス治療薬であるモルヌピラビルです。
MUTIANの1/10ほどの値段で治療できるため、値段が高すぎてあきらめていた方でも治療することができます。
【参考】
総ビリルビン値から予測される猫伝染性腹膜炎の顧客所有猫141匹に対するMutian ® Xraphconnの治療効果
猫コロナウイルスの検査・診断
猫コロナウイルスを判定するためには、以下の検査をおこないます。
- 血液検査
- レントゲン検査
- CT検査
- MRI検査
- 抗体検査
- 便検査
- 腹水や胸水の検査
検査結果で陽性反応が出た場合でも、必ず猫伝染性腹膜炎を発症するわけではありません。
しかし検査ではウイルスが強毒化したのかまではわからないため、急に猫伝染性腹膜炎へと変異する可能性があるため、注意が必要です。
猫コロナウイルスの治療方法
猫コロナウイルスの治療方法には、以下のようなものがあります。
点滴 | 脱水症状の改善、心臓、血管などを流れる血液の状態の安定 |
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吐き気止め | 嘔吐による脱水、体力消耗の防止 |
整腸剤 | 下痢、腸内細菌バランスの改善 |
抗生剤 | 細菌感染を改善 |
猫コロナウイルスで陽性でもほとんどが無症状のため、治療が必要ないこともあります。
下痢や嘔吐などの症状がある場合は、お薬で症状を抑えるなど対処療法をおこないます。
猫コロナウイルスに感染させないためにできること
愛猫を猫コロナウイルスから守るためには、感染させないことが大切です。
そもそも猫コロナウイルスに感染しなければ、体内で突然変異を起こして猫伝染性腹膜炎(FIP)になることもないため、感染させないための4つの対策を紹介します。
①多頭飼いを避ける
②外飼いはしない
③ストレスフリーの飼育環境下で飼う
④定期的に検査をする(PCR)
それぞれ詳しく説明していきます。
①多頭飼いを避ける
多頭飼いをすると猫同士のストレスで免疫力が低下しやすくなり、猫コロナウイルスにも感染しやすくなってしまいます。
なるべく多頭飼いしないことが望ましいですが、すでに多頭飼いしている場合は猫の体調に変化がないか、日ごろから注意しておきましょう。
②外飼いはしない
外飼いをすると、他の猫との接触により猫コロナウイスに感染しやすくなります。
猫が自由に外出できる環境で飼っている場合、感染予防の観点から見るとリスクが大きいため、室内飼いに切り替えた方が良いでしょう。
③ストレスフリーの飼育環境下で飼う
ストレスは免疫力低下の原因となるため、愛猫が快適さを感じて過ごすことができる環境を提供してあげましょう。
猫が快適に過ごせるポイント
・家の中の高い位置に猫だけが過ごせる場所を作る(キャットタワーなど)
・爪を研ぐ場所を数ヶ所用意する
・室内は猫が快適に感じる温度に保つ
・部屋やトイレを常に清潔に保つ
・猫が嫌がる可愛がり方はしない
・慣れない場所に頻繁に連れて行かない
・頻繁に来客が来ないようにする
何がストレスになるのかは猫の性格によっても変わるため、日ごろからよく観察して愛猫の好みを把握しておきましょう。
④定期的に検査をする(PCR)
もし猫コロナウイルスに感染した場合でもすぐに発見して治療できるように、定期的にPCR検査を受けましょう。
猫の血液やウンチを調べることで、感染しているかどうかがわかります。
定期的に猫を動物病院に連れて行くことで、他の病気の早期発見にもつながります。
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