愛犬が突然けいれんを起こしたり、ぼーっとしたまま反応がなくなったりすると、パニックになってしまいますよね。
犬のてんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こる病気です。
発作の種類や重さはさまざまで、一見てんかんとわからないケースもあります。
この記事では、以下について詳しく解説します。
- てんかん発作の種類と症状の見分け方
- 発作が起きたときの正しい対処法と緊急受診のサイン
- 原因・診断・治療法
愛犬の発作を目の当たりにして不安を感じている方、すでにてんかんと診断されてこれからのケアを考えている方に向けて、必要な情報をまとめました。
目次
てんかんの症状
犬のてんかんの発作は、症状の現れ方によっていくつかの種類に分けられます。
「明らかに異常だ」とわかる大きな発作だけでなく、一見発作とはわからない軽微な症状もあるため、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。
発作の前兆(前駆徴候)
発作が起こる数分〜数時間前に、以下のような前兆が見られることがあります。
犬自身は違和感があっても、飼い主さんが気づきにくいケースが多いです。
- 落ち着きがなく、不安そうにうろうろする
- 飼い主さんにいつも以上に甘える・くっついて離れない
- ぼーっとして反応が鈍い
前兆に気づいた場合は、発作に備えて周囲の危険物を片付けて、広い空間を確保しておきましょう。
焦点発作(部分発作)
部分発作は、脳の一部が興奮状態になることで起こる発作です。
全身には及ばず、体の一部だけに症状が現れるのが特徴です。
- 顔の片側がピクピクする
- 口をくちゃくちゃする
- 何もないところを嚙むような動きをする
- 突然動きを止めて一点を見つめる
- 頭や手足の一部だけが震える
焦点発作は症状が体の一部に限られることもあり、発作だと気づきにくい場合があります。
「なんとなくいつもと様子が違う」と感じたら、日時と状況をメモしておきましょう。
全身発作(全般発作)
全身発作は、脳全体が興奮状態になることで起こる大きな発作です。
突然倒れてけいれんするなど、飼い主さんが最も驚く発作の形です。/p>
- 突然倒れる・意識を失う
- 全身がけいれんする・手足をバタバタさせる
- よだれ・嘔吐・失禁・脱糞が起こる
- 目が見開いたまま焦点が合っていない
発作は通常、数十秒〜数分でおさまります。
ただし、5分以上発作が続く場合や、短時間に何度も繰り返す場合は緊急受診が必要です。
詳しくは「緊急受診が必要なケース」をご覧ください。
発作後の状態(発作後症状)
発作が収まった後も、しばらくの間は以下のような状態が続くことがあります。
これは「発作後症状(ポストイクタル)」と呼ばれ、てんかん発作の後にみられることがあります。
- ぐったりしてぼーっとしている
- フラフラと歩く・方向感覚がない
- 一時的に視力が落ちたように壁や家具にぶつかる
- 異常に食欲が増す・水をがぶ飲みする
- 興奮状態が続く
この状態は、数分〜数時間で落ち着くことがほとんどです。
発作後も愛犬を静かな場所で休ませ、落ち着くまでそっと見守りましょう。
発作後症状が24時間以上続く場合や、意識が戻らない場合は動物病院へ連絡してください。
てんかんの原因

犬のてんかんは、原因によって大きく「特発性てんかん」と「構造的てんかん」に分けられます。
また、低血糖や中毒などによって、てんかんと似た発作が起こる「反応性発作」もあります。
発作の原因によって治療方法が異なるため、動物病院で検査を受け、原因を調べることが重要です。
特発性てんかん
特発性てんかんは、検査をしても脳に発作の原因となる明らかな異常が見つからないてんかんです。
遺伝的な要因が関係していると考えられており、特定の犬種では発症しやすいことが知られています。
発症しやすい犬種としては、以下が挙げられます。
- ダックスフンド
- ビーグル
- シベリアン・ハスキー
- ゴールデン・レトリバー
- ラブラドール・レトリバー
- ボーダー・コリー など
特発性てんかんでは、発作の頻度や重症度などに応じて、抗てんかん薬による治療を行います。
構造的てんかん
構造的てんかんは、、脳そのものに発作の原因となる異常があることで起こるてんかんです。
原因としては、以下のような脳の病気や異常が挙げられます。
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 脳血管障害
- 脳の外相
- 脳の先天性な異常 など
特に、6歳を超えて初めて発作を起こした場合や、発作以外にも歩き方や行動などに異常がみられる場合は、構造的てんかんの可能性も考慮して詳しい検査を行います。
必要に応じてMRIなどの画像検査を行い、脳に発作の原因となる異常がないか確認します。
低血糖や中毒などによる「反応性発作」
犬のけいれんや意識消失などは、てんかん以外の原因によって起こることもあります。
代表的なのが「反応性発作」です。
反応性発作は、脳そのものに発作の原因があるのではなく、代謝異常や中毒などの影響を受けて、一時的に発作が起こっている状態を指します。
原因としては、以下のようなものがあります。
- 低血糖
- 電解質異常
- 重度の肝機能障害
- 腎機能の異常
- 中毒 など
反応性発作は厳密には「てんかん」とは区別され、原因となっている病気や中毒などへの治療が重要になります。
そのため、犬が初めて発作を起こした場合は、「てんかんだろう」と自己判断せず、動物病院を受診して原因を調べることが大切です。
なお、てんかんと診断されている犬では、ストレスや生活環境の変化などが発作のきっかけになる可能性もあります。
犬のてんかんとストレスの関係や、日常生活でできる対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
発作が起きたときの対処法
愛犬が発作を起こすと、パニックになってしまいがちです。
しかし、飼い主さんが落ち着いて対応することが、愛犬を守るうえでとても重要です。
発作中にすべきこと・してはいけないことを事前に把握しておきましょう。
発作中にすること
① 時間を計る
発作が始まったら、すぐに時計で時間を計り始めてください。
発作の継続時間は、緊急受診が必要かどうかの判断基準になります。
② 動画を撮影する
スマートフォンで発作の様子を動画撮影しておきましょう。
動物病院での診断に非常に役立ちます。発作中は飼い主さんの記憶が不確かになりやすいため、動画があると獣医師に正確な情報を伝えられます。
③ 周囲の危険物を取り除く
発作中に動き回ってケガをしないよう、近くにある家具・段差・硬いものをどかし、広い空間を確保してください。
どかせないものがある場合は、犬の体とのあいだにタオルやクッションを入れて衝撃を和らげましょう。
④ 発作の記録をメモする
発作が起きた日時・継続時間・発作の様子・前後の状況をメモしておくと、その後の診断や治療方針の判断に役立ちます。
発作中にしてはいけないこと
発作中の愛犬に対して、以下の行動は避けてください。
無理に抱き上げる・体を押さえつける
発作中は無理に抱き上げたり、体を押さえつけたりしないでください。
意識が十分でない状態では、犬が思わぬ動きをして飼い主さんがケガをする可能性があります。
階段や家具など危険なものから守る必要がある場合を除き、発作がおさまるまで安全な距離から見守りましょう。
口の中に手を入れる
「舌を飲み込む」という心配から口に手を入れる方がいますが、犬が舌を飲み込むことはありません。
発作中に口に手を入れると、噛みつかれてケガをする危険があります。
強い光・大きな音を出す
発作中はできるだけ刺激を避け、照明を落とすなど静かで落ち着ける環境を整えましょう。
緊急受診が必要なケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、すぐに動物病院へ連絡・受診してください。
- 発作が5分以上続いている
- 24時間以内に3回以上の発作を繰り返している
- 発作を繰り返し、発作と発作の間に意識が十分に戻らない
- 発作後症状が24時間以上続いている
- 初めて発作を起こした
- 発作の頻度が急に増えた・発作時間が長くなった
- 発作中に呼吸が止まっている様子がある
特に「5分以上続く発作」は重積発作と呼ばれ、脳へのダメージや命に関わる危険性があります。
この場合は救急対応が可能な動物病院に連絡しながら、すぐに移動の準備をしてください。
てんかんの診断方法
愛犬にてんかんが疑われる場合、動物病院ではいくつかの検査を組み合わせて診断を行います。
「どんな検査をするのか」を事前に知っておくと、受診時の不安が軽減できます。
問診・身体検査
まず獣医師が行うのは、飼い主さんへの問診と愛犬の身体検査です。
問診では、以下のような情報を確認します。
- 発作がいつ・どのくらいの頻度で起きているか
- 発作の継続時間・発作の様子
- 発作前後の行動の変化
- 食欲・飲水量・排泄の状態
- 既往歴・現在服用中の薬
- 家族(同じ犬種)にてんかんの既往があるか
発作の動画があると診断に非常に役立ちます。
受診前にスマートフォンで撮影しておくことを強くおすすめします。
血液検査・尿検査
血液検査・尿検査では、てんかん発作の原因となりうる全身疾患がないかを確認します。
- 低血糖・電解質異常
- 肝臓・腎臓の機能異常
- 甲状腺機能異常
- 感染症・炎症の有無
これらの検査によって、低血糖や電解質異常、肝臓・腎臓の異常など、発作の原因となる全身性の異常がないかを調べます。
MRI・CT検査
脳の構造的な異常(脳腫瘍・脳炎・水頭症など)を確認するために行います。
特に以下のケースでは、MRI検査が強く推奨されます。
- 6歳を超えて初めて発作を起こした場合
- 発作の頻度・重さが急に変化した場
- 神経学的な異常(ふらつき・視力低下など)が見られる場合
MRI検査は全身麻酔が必要なため、事前に獣医師とリスクについて相談してください。
脳波検査
脳波検査(EEG)は、脳の電気的活動を記録してんかん発作の特徴的なパターンを確認する検査です。
ただし犬では実施できる施設が限られており、大学病院や二次診療施設で行われることがほとんどです。
てんかんの治療法

犬のてんかんは完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで発作の頻度を減らし、愛犬が快適に生活できる状態を目指すことができます。
治療の中心は、抗てんかん薬による薬物療法です。
薬物療法(抗てんかん薬)
抗てんかん薬は、脳の過剰な興奮を抑えることで発作の頻度・重さを軽減します。
一般的に、以下のような基準で投薬開始が検討されます。
- 6ヶ月以内に2回以上発作が起きている
- 重積発作・群発発作が起きたことがある
- 発作のたびに症状が重くなっている
| 薬 | 特徴 |
|---|---|
| ゾニサミド | 犬のてんかん治療に使用される抗てんかん薬。必要に応じて血中濃度を測定しながら投与量を調整する |
| フェノバルビタール | 犬のてんかん治療で使用される代表的な抗てんかん薬。長期投与では血中濃度や肝機能の確認が重要 |
| 臭化カリウム | 単独またはほかの抗てんかん薬と併用して使用される |
| レベチラセタム | 単独またはほかの抗てんかん薬と併用して使用される |
抗てんかん薬は自己判断で中断しないことが非常に重要です。
突然やめると発作が重篤化する危険があります。
「発作がなくなった」と感じても、必ず獣医師に相談してから対応を決めてください。
定期的な血液検査の重要性
抗てんかん薬を長期間服用する場合は、薬の種類や愛犬の状態に応じて定期的な血液検査を行います。
- 薬の血中濃度の確認:フェノバルビタールなどでは、必要に応じて血中濃度を測定し、投与量の調整に役立てます
- 肝臓・腎臓の状態確認:特にフェノバルビタールは肝臓への負担が出ることがあるため、定期的なモニタリングが必要です
投薬開始後は獣医師の指示に従い、定期検診を欠かさないようにしましょう。
緊急時の対応(重積発作・群発発作)
重積発作や群発発作が起きた場合は、点滴で抗てんかん薬を投与するなど、緊急的な処置が必要になります。
群発発作などを繰り返す犬では、獣医師の判断により、自宅で使用する緊急用の発作止めが処方されることもあります。
使用するタイミングや投与方法については、事前に獣医師から指示を受けておきましょう。
てんかんの犬に与える食事
犬の特発性てんかんでは、中鎖脂肪酸(MCT)を含む食事によって発作頻度が減少したとする研究があります。
ただし、食事療法だけでてんかんを治療できるわけではなく、抗てんかん薬による治療を補助する選択肢のひとつです。
てんかんを抱えた犬の食事については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
犬のてんかんは、一度発症すると生涯にわたって付き合っていく病気です。
しかし、適切な治療と日常ケアを続けることで、発作をコントロールしながら愛犬が快適に過ごせる状態を目指すことができます。
- てんかん発作には、焦点発作や全身発作などさまざまな症状がある
- 発作中は時間を計り・動画を撮影し・触れずに見守ることが基本
- 発作が5分以上続く場合や、24時間以内に3回以上繰り返す場合は緊急受診が必要
- 治療は抗てんかん薬が中心。自己判断での中断は厳禁
- 定期的な血液検査と獣医師との連携が重要
「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに動物病院へ相談しましょう。

ぽちたま薬局のライターです。
実家では猫を飼っています。
これまでに犬やインコ、ウーパールーパーなど、動物に囲まれて暮らした経験があります。













