犬や猫の肥満細胞腫はどんな病気?症状、余命、治療方法を解説

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犬や猫の肥満細胞腫はどんな病気?症状、余命、治療方法を解説

犬や猫が発症する肥満細胞腫は、皮膚や体内に悪性の腫瘍ができる病気です。
その悪性度は手術すれば完治できる低いものから、急激に進行してほかの臓器に転移する高いものまで、さまざまです。

肥満細胞腫を放置すれば、愛犬や愛猫の命に関わる可能性も否定できません。
この記事では、犬や猫の肥満細胞腫とはどんな病気なのか、症状や余命、治療方法について解説していきます。

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犬猫の肥満細胞腫とは?

犬猫の肥満細胞腫とは?

犬や猫の肥満細胞腫とは、体内の免疫細胞のひとつである肥満細胞が腫瘍化し、異常に増殖する悪性腫瘍のこと。

この病気は皮膚にしこりを作るだけではなく、リンパ節や全身の臓器にまで転移する場合もあります。

肥満細胞腫は皮膚にできる腫瘍の中でも犬が1位、猫は2位と、発症率が高いことでも知られています。

なお「肥満細胞腫」と名前に「肥満」がありますが、これは肥満細胞が腫瘍化するという意味であり、太っている肥満とは関係ありません。

参考
北海道大学動物医療センター外科/腫瘍診療科
(外部リンク)

肥満細胞腫の種類

肥満細胞腫の種類は、大きく皮膚型肥満細胞腫と内蔵型肥満細胞腫に分けられます。

見た目でも判断しやすい皮膚型肥満細胞腫は、皮膚にしこりができるのに対し、内蔵型肥満細胞腫は脾臓、肝臓、腸などの内臓に発生します。

なお、猫が発症しやすい内蔵型肥満細胞腫は、さらに脾臓型や消化型に分かれます。
脾臓型・消化型はどちらも転移しやすい点が特徴です。

猫は発症平均年齢が8~9歳と、シニア期にリスクが高まるので注意しましょう。

一方、犬は皮膚型肥満細胞腫を発症する子が多く、内蔵型が見つかるケースはまれです。
犬は高齢での発症が多いものの、若い子に認められる場合もあります。

参考
犬と猫の肥満細胞腫(外部リンク)

肥満細胞腫の悪性度は3段階

犬や猫の肥満細胞腫は、悪性度によって以下のグレード1~3に分類されます。

グレード1

  • 1cm以下のしこり、皮膚炎のような赤みが皮膚表面にできる。
  • 悪性度が最も低い。
  • 外科手術のみで完治も見込め、転移や再発も起こりにくい。

グレード2

  • 多くは外科手術で完治が見込めるが、転移や再発もしやすい。
  • 術後の定期検診が必須。
  • ほかの臓器に転移している場合、抗がん剤や放射線による治療も必要。

グレード3

  • 悪性度が最も高く、転移と再発が非常に起こりやすい。
  • 発見した時には、他の臓器やリンパ節にも転移しているケースがほとんど。
  • 外科手術と抗がん剤などの投薬を行い、状況に応じて放射線治療も用いられる。
  • 多くは完治が難しい。

犬の肥満腫細胞の症状

犬の肥満腫細胞はしこりや赤み、かゆみ、腫れなどが主に見られる症状です。

皮膚型肥満細胞腫になった犬は手や足、お腹にしこりが発生しやすいですが、他には全く症状がないという場合も珍しくありません。

しかし悪化すると食欲不振、下痢、嘔吐などの症状が起こる可能性も。
さらに血圧低下を引き起こし、皮膚の乾燥、むくみ、めまい、失神といった症状を伴うリスクもあります。

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猫の肥満腫細胞の症状

猫が肥満細胞腫になった場合、しこりの多くは額や耳など顔周りに発生します。
一方、内蔵型肥満細胞腫を発症した猫は、脾臓に腫瘍が生じるケースがほとんどです。

その際は下痢や嘔吐などの消化器症状が伴い、血が止まりにくいといった異常が認められる場合もあります。

猫も悪性度が高い場合、血圧低下を引き起こす恐れがあり、ショック症状に陥ってしまうと命を落とす可能性も否定できません。

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犬と猫の肥満細胞腫の違い

犬と猫の肥満細胞腫の違い

犬と猫の肥満細胞腫では、以下のような違いが挙げられます。

犬が発症した場合

  • 悪性として扱うため治療が必要

猫が発症した場合

  • 良性であることがほとんど
  • 肥満細胞腫と診断された場合、外科手術などの治療が必要

肥満細胞腫の犬の余命

肥満細胞腫の犬の余命

肥満細胞腫になった犬の余命は、病状や悪性度によって大きく異なります。
悪性度が高い場合は転移も早いため、治療を行っても余命が数ヶ月、または6ヶ月という場合もあります。

ただし、外科手術と放射線治療を併用することで、犬の余命を延ばすことは可能です。
早期に発見できて悪性度も低い場合、手術で切除できれば完治も見込めます。

肥満細胞腫の猫の余命

肥満細胞腫の猫の余命

猫は皮膚型肥満細胞腫になっても、転移がなければ経過も良いケースがほとんど。
手術で腫瘍を切除できれば、健康な猫と同じように長生きできます。

しかし消化器型を含む内蔵型肥満細胞腫になり、悪性度が高い場合は3ヶ月以内に死亡する可能性も否定できません。

一方、内蔵型肥満細胞腫の中でも脾臓型を発症した猫は、脾臓の摘出によって症状が改善するケースもあります。
脾臓を摘出した猫の余命は、約2ヶ月~2年10ヶ月というデータも報告されています。

犬猫の肥満細胞腫の診断方法

犬猫の肥満細胞腫の診断方法

犬と猫の肥満細胞腫の診断には、細胞診と呼ばれる方法が用いられます。

皮膚型肥満細胞腫であれば、皮膚にあるしこりに針を刺して細胞の一部を採取します。
その細胞を特殊な液体で染めたあと、顕微鏡を使って腫瘍の性質を確認します。

なお、超音波検査で内臓に腫瘍が見つかった場合も、超音波を当てながら位置を確認して同様の診断方法を行います。

他にも病理組織検査、遺伝子検査などを実施して腫瘍の悪性度の高さを診断した後は、その結果をもとに治療方針を決めていきます。

犬猫の肥満細胞腫の治療方法

肥満細胞腫になった犬や猫に行う主な治療方法は、外科手術や放射線治療、内科療法が挙げられます。

これらのうち、どの方法で治療するかは腫瘍の悪性度の高さ、発生場所、転移があるかによって決められます。

外科手術

外科手術は肥満細胞腫を治療するうえで、第一選択となる治療方法です。
この方法は腫瘍の悪性度が低く、手術によって取り除ければ完治も可能であり、最も高い効果が見込めます。

腫瘍の周りにある正常な組織も1~3cmほど余分に切除しなければなりませんが、それにより再発リスクも最小限に抑えられます。

放射線治療

放射線治療が用いられる肥満細胞腫は、取り損ねた腫瘍がある、転移が見られるといったケースです。

腫瘍の発生場所が悪く、完全に切除することが難しい場合も、放射線治療が有効です。
放射線治療は外科手術を実施後、再発予防を目的として用いられる場合もあります。

化学療法

肥満細胞腫に化学療法が用いられるのは、広範囲への転移が認められる場合です。
外科手術や放射線治療などの実施が困難な犬や猫に、選択される治療方法でもあります。

化学療法で使用されるのは、ロムスチンなどの抗がん剤のほか、パラディアやイマチニブといった分子標的薬も有効です。

犬の肥満細胞腫の治療薬パラディア

犬の肥満細胞腫の治療薬パラディア

パラディアは、犬の肥満細胞腫に効果的な分子標的薬です。

有効成分にトセラニブリン酸塩が配合されており、肥満細胞腫のがん細胞だけをターゲットとして攻撃し、進行を抑制する効果があります。

国内外を含め、臨床試験で安全性や有効性が認められており、肥満細胞腫の治療薬として広く使用されています。

副作用のリスクが少なく、他のお薬との併用による相乗効果も期待されている分子標的薬です。

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犬猫の肥満細胞腫治療薬グリベック

犬猫の肥満細胞腫治療薬グリベック

グリベックは、犬と猫の肥満細胞腫の治療に用いられる分子標的薬です。
このお薬には、細胞の増殖や分化を繰り返させる「チロシンキナーゼ」の働きを阻害し、病的な細胞の産生を抑える効果があります。

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犬猫の肥満細胞腫の治療薬イマチニブ

犬猫の肥満細胞腫の治療薬イマチニブ

イマチブ(イマチニブ)は、手術が難しい犬や猫の肥満細胞腫に用いられる分子標的薬です。

先発薬であるグリベックと同じ有効成分イマチニブを配合していますが、ジェネリック医薬品なので安価な点がメリットです。

イマチニブは正常な細胞に作用せず、がん細胞だけを狙って攻撃することから、副作用の少なさが評価されています。

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犬猫の肥満細胞腫の治療薬ロムスチン

犬猫の肥満細胞腫の治療薬ロムスチン

ロムスチン(ロモーザー)は、有効成分にロムスチンを含む抗がん剤です。

肥満細胞腫やリンパ腫、組織球性肉腫、神経腫瘍などをはじめとする、さまざまな化学療法に用いられるアルキル化剤の一種です。

このお薬には、細胞のDNAに損傷を与えることで分裂や増殖を抑制し、がん細胞の成長を大幅に遅らせる効果があります。

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犬猫の肥満細胞腫の治療費用

犬と猫それぞれの肥満細胞腫にかかる治療費用の目安は、以下の通りです。

犬の肥満細胞腫の費用

  • 手術前の検査:約3~5万円。※検査項目が増えればさらに加算。
  • 外科手術:約2~10万円(悪性度の状態で変わる)※転移がある、脾臓を摘出する場合は約20~30万円。
  • 放射線治療:約60~90万円(入院費含む)

猫の肥満細胞腫の費用

  • 外科手術:約3~10万円(悪性度の状態で変わる)※転移がある、脾臓を摘出する場合は約20~30万円。
  • 放射線治療:1回約3~8万円。
  • 抗がん剤治療:1回約5万円。

※犬猫どちらも治療にかかる費用は、検査項目や腫瘍の悪性度、動物病院によって異なります。

犬猫の肥満細胞腫の予防方法

犬猫どちらも肥満細胞腫の発症原因は明確になっていないため、現在は有効とされる予防方法はありません。

この病気は早期発見・早期治療で進行を抑えることが重要となるため、愛猫や愛犬の体に日ごろから触れるようにしましょう。

中には皮膚炎のようなイボができたと思っていたら、肥満細胞腫だったというケースもあります。

もし、ペットにしこりがあるなどの異変があった場合はすぐに動物病院を受診し、早期発見に繋げましょう。

よくある質問

ここでは犬や猫の肥満細胞腫に関してよくある疑問と、その回答をまとめています。
愛犬や愛猫の命を守るため、ぜひ参考にしてみてください。

犬、猫の肥満細胞腫は放置してもいい?

犬も猫も、肥満細胞腫になると自然治癒することはないため、放置してはいけません。
肥満細胞腫は、早期に発見してすぐに治療すれば完治も目指せる病気です。

しかし放置すれば進行したり、他の臓器に転移したりする可能性もあるため大変危険です。

犬、猫の肥満細胞腫を手術しないとどうなる?

犬と猫の肥満細胞腫治療において、最も効果的とされるのは外科手術です。
ただし、腫瘍の発生場所やペットの年齢、持病の状況などによっては、外科手術ができない場合もあるでしょう。

そんな時は、他の方法を組み合わせながら治療を行う場合もあります。
外科手術しない、受けさせられないといった場合は、獣医師さんとよく相談して治療方針を検討することが大切です。

犬、猫が肥満細胞腫になった場合、完治できる?

犬や猫が肥満細胞腫になった場合、グレード1の悪性度が低い腫瘍であり、手術して切除できれば完治も見込めます。

ただし、悪性度が高い場合は転移のリスクも伴うため、完治できるとはいえません。
転移が見られる肥満細胞腫では、緩和を目的とした治療が中心となります。

まとめ

肥満細胞腫は、犬や猫に発生する腫瘍であり、早期発見と適切な治療を選択することが重要です。

治療の第一選択は外科手術ですが、適切な治療方法は皮膚型や内蔵型などの肥満細胞腫の種類のほか、悪性度、グレードによっても異なります。

手術が難しい場合は放射線治療を実施したり、抗がん剤や分子標的薬などを使ったりと、手術以外の治療方法を組み合わせる場合もあります。

愛犬や愛猫の健康を守るためにも、日頃から体をチェックし、気になるしこりを見つけたら早めに動物病院を受診しましょう。

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