エビ・カニは、加熱して殻としっぽを取り除けば、犬に与えて問題ありません。
量の目安は体重5kgの犬で1日約49gです。
生は与えないでください。ただし理由は、よく言われる「チアミナーゼ」ではありません。獣医学の教科書が挙げているのは、生の淡水魚と貝です。
生を避けるべき本当の理由は、細菌と寄生虫です。
殻・しっぽ・甲羅を食べてしまった場合は、詰まりのリスクがあります。大きさと犬の体格によって対応が変わります。

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犬がエビやカニを食べてしまった時に確認する3つのこと
まず落ち着いて、次の3点を確認してください。動物病院に連絡するとき、そのまま必要な情報になります。
① 何を食べたか
最も重要な確認事項です。同じ「エビを食べた」でも、状況によって対応がまったく違います。
| 何を食べたかで、リスクが変わります | |
|---|---|
| 加熱した身 (味付けなし) |
量が多すぎなければ、まず問題になりません。便の様子を見てください。 |
| 生の身 | 少量であれば、慌てる必要はありません。詳しくは次の節で説明します。 |
| 殻・尻尾 甲羅・足 |
最も注意が必要です。口の中を傷つけていないか確認し、その後の嘔吐や便に注意してください。 |
| 天ぷら エビフライ |
衣の油と塩分が問題になります。量が多ければ膵炎のおそれがあります。 |
| えびせん かにかま |
塩分と添加物が問題です。少量なら様子見で構いません。 |
② どのくらいの量を食べたか
ひとかけらなのか、皿ごと食べたのかで判断が変わります。おおよその量を思い出しておいてください。
残っているものがあれば捨てずに置いておくと、獣医師に状況を伝えやすくなります。
③ 体の大きさと持病
体重3kgの犬と30kgの犬では、同じ量でも体への負担が10倍違います。
子犬、シニア犬、消化器や膵臓に持病のある犬、腎臓病でリンやナトリウムの制限を受けている犬は、リスクが高くなります。

- 繰り返し吐く/吐こうとして何も出ない
- 口を前足で気にする、よだれが多い、ごはんを食べたがらない
- 便が出ない、または血が混じる
- お腹を痛がる、背中を丸めている
- ふらつく、立てない、けいれんする
殻や尻尾を飲み込んだ場合、揚げ物を大量に食べた場合は、症状がなくても相談してください。
「生を食べた=チアミン欠乏症」ではありません
エビやカニについて必ず出てくるのが、チアミナーゼの話です。生の甲殻類にはビタミンB1(チアミン)を分解する酵素が含まれており、欠乏症を起こす、という説明です。
与えるなら加熱したものを、という結論は変わりません。ただし「生を少し食べてしまった」という場面で、必要以上に恐れなくていいことは知っておいてください。
獣医学の教科書が挙げているのは、生の淡水魚と貝
Merck Veterinary Manual は、チアミン欠乏はチアミナーゼの摂取と関連することがあるとしたうえで、チアミナーゼを含む食材として「生の淡水魚と貝」を挙げています。エビやカニは挙げられていません。
古い文献にはエビやロブスターからチアミナーゼが検出されたという報告もあります。ただし、犬が生のエビやカニを食べてチアミン欠乏症になった、という症例報告は確認できませんでした。
実際に報告されている犬の症例は、生の魚だけを数か月にわたって主食として与え続けた例です。単発で少量を口にした場合とは、前提がまったく違います。
ここから先は推測になりますが、日本語のサイトで「エビ・カニはチアミナーゼが豊富」と一律に書かれているのは、魚介類全般の説明が甲殻類にも当てはめられた結果ではないかと考えています。断定はできません。ただ、少なくとも「生を一口食べたら危険」という根拠は見当たりませんでした。
それでも加熱をすすめる理由
チアミナーゼのリスクが小さいとしても、生で与える理由はありません。
- 生の魚介類には食中毒を起こす細菌が付着していることがある
- 加熱すれば身がほぐれ、消化しやすくなる
- 加熱によってチアミナーゼは失活する
参考:Merck Veterinary Manual「Nutritional Requirements of Small Animals」(外部リンク)
なお、チアミン欠乏が起きた場合の症状として、Merck は犬では運動失調(ふらつき)と心肥大を挙げています。食後すぐに出るものではありません。
殻・尻尾・甲羅を食べてしまったら
この記事で最も実害に直結するのは、チアミナーゼではなく殻です。
エビの殻や尻尾、カニの足や甲羅は硬く、縁が鋭くなっています。噛み砕かれた破片が口の中や食道を傷つけることがあり、大きなまま飲み込めば詰まるおそれもあります。
米国の動物医療センターMSPCA-Angellの画像診断科は、犬猫の消化管内異物について、異物がレントゲンに写ったからといって必ず手術になるわけではなく、点滴などの支持療法で通過することも多いと説明しています。同時に、詰まりが続けば重篤になるため、経過の確認が必要だとしています。
つまり「手術になるのが怖いから様子を見る」という判断が、最も結果を悪くします。食べた事実を伝えて相談してください。
確認しておきたいのは次の3点です。
- 口の中や歯ぐきに切り傷や出血がないか
- よだれが増えていないか、口を気にしていないか
- 数日のあいだ、便に血が混じっていないか
参考:MSPCA-Angell「Radiographic Appearance of Common GI Foreign Bodies in Dogs and Cats」(外部リンク)
犬にエビ・カニを与えていい量の目安
世界小動物獣医師会(WSAVA)は、おやつや主食以外の食べ物を1日に必要なカロリーの10%未満に収めることを推奨しています。ここから逆算します。
エビとカニではカロリーが倍近く違うため、分けて示します(日本食品標準成分表 八訂・増補2023年)。
| 体重別・1日に与えていい量の上限 | ||
|---|---|---|
| 体重 | えび | かに |
| 2kg | 約16g | 約29g |
| 5kg | 約32g | 約58g |
| 10kg | 約54g | 約97g |
| 20kg | 約91g | 約163g |
| 30kg | 約124g | 約221g |
算出方法:安静時エネルギー要求量(RER)=70×体重(kg)の0.75乗、1日に必要なカロリー=RER×1.6(避妊去勢済みの健康な成犬の係数)として計算し、その10%を、くるまえび(養殖・ゆで)116kcal/100g、ずわいがに(ゆで)65kcal/100g で割ったものです。

カロリーより先に、塩分で止まります
上の表はカロリーだけで計算したものです。実際にはこの数字より前に、塩分が問題になります。
ゆでたずわいがには100gあたりナトリウム240mg。市販のゆでガニは海水程度の塩水で茹でられているため、さらに多く含まれることがあります。
カロリーの上限いっぱいまで与える必要はありません。ひとくち、ふたくちで十分です。
甲殻類アレルギーは、犬でどのくらい起きるのか
エビやカニのアレルギーは、人ではよく知られています。内閣府食品安全委員会の資料によれば、甲殻類(えび・かに)の主要なアレルゲンはトロポミオシンという筋肉のたんぱく質で、日本ではえびとかにが特定原材料として表示義務の対象になっています。
では犬ではどうか。食物アレルギーが確認された犬297頭について原因食材を集計した研究があります。
| 犬の食物アレルギーの原因食材(297頭) | |
|---|---|
| 牛肉 | 102頭(34%) |
| 乳製品 | 51頭(17%) |
| 鶏肉 | 45頭(15%) |
| 小麦 | 38頭(13%) |
| 大豆 | 18頭(6%) |
| ラム | 14頭(5%) |
| 魚 | 5頭(2%) |
この集計に、エビやカニは原因食材として挙がっていません。人で頻度の高いアレルゲンが、犬でも同じ頻度で問題になるとは限らないということです。
ただし「報告が少ない」は「起きない」ではありません。初めて与えるときは少量にして、その日のうちに皮膚のかゆみ、下痢、嘔吐が出ないか確認してください。症状が出たら中止して獣医師に相談してください。
なお、この研究の著者自身が、集計元では限られた食材でしか検査しておらず実際の頻度はこれより高い可能性があると述べています。参考値として読んでください。
参考:Mueller RS, Olivry T, Prélaud P.「Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2)」BMC Veterinary Research 12, 9 (2016)(外部リンク)
参考:内閣府 食品安全委員会「アレルゲンを含む食品(えび、かに)」ファクトシート(外部リンク・PDF)
加工品はどうか
| エビ・カニの加工品 | |
|---|---|
| 天ぷら エビフライ |
与えないでください。バナメイえびの天ぷらは100gあたり194kcalで、ゆでたえび(116kcal)の1.7倍、かに(65kcal)の3倍です。油の量が問題になります。 |
| えびせん かっぱえびせん |
与えないでください。塩分と油が多く、えびそのものはわずかしか入っていません。 |
| かにかま | 与えないでください。原料はカニではなく魚のすり身で、塩分と調味料が加えられています。犬用のかにかま風おやつであれば問題ありません。 |
| 干しえび 桜えび |
避けてください。水分が抜けているぶん塩分とリンが凝縮されています。 |
| エビ入り ドッグフード |
問題ありません。総合栄養食として設計されており、加熱処理もされています。 |
エビ・カニの栄養は、犬にとって必要か
エビやカニは高たんぱくで低脂肪の食材です。タウリン、ビタミンB12、亜鉛なども含まれています。
ただし、これらの栄養は総合栄養食のドッグフードで足りています。エビやカニから摂らなければならない栄養はありません。
「グルコサミンが摂れる」という説明を見かけますが、グルコサミンは殻や甲羅に含まれる成分です。その殻は犬に与えられない部分なので、食材から摂ることは現実的ではありません。関節のケアを目的とするなら、サプリメントのほうが確実です。
与える理由は「喜ぶから」で十分ですし、与えないという選択も等しく正しいものです。
腎臓病でリンの制限を受けている犬には注意してください。くるまえび(ゆで)は100gあたりリン390mgと、食材のなかでは多いほうです。療法食で管理している場合は、主治医に確認してから与えてください。
まとめ
- 殻・尻尾・甲羅は与えない。この記事で最も注意すべき点
- 身は加熱して、味付けなしで少量なら問題ない
- 生を一口食べた程度でチアミン欠乏症になる根拠は見当たらない。ただし加熱をすすめる理由は別にある
- 量は体重で決める。10kgの犬でえび約54g、かに約97gが1日の上限
- カロリーより先に塩分で止まる。ひとくち、ふたくちで十分
- 天ぷら・エビフライ・えびせん・かにかま・干しえびは与えない
- 犬297頭の集計に甲殻類アレルギーは挙がっていない。ただし初回は少量から
- 殻を飲み込んだ場合は、症状がなくても相談を
年末年始に鍋を囲んでいると、足元からじっと見上げてくる視線に気づきます。カニの身をほんの少し分けるくらいなら構いません。
気をつけるのは、テーブルの上に置いた殻と、シンクに溜めた殻の行き先だけです。

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