少量なめた程度なら、慌てる必要はありません。牛乳に中毒を起こす成分は含まれていません。
ただし積極的にすすめられるものでもありません。犬は乳糖を分解する酵素が少なく、下痢の原因になります。
初めて与えるなら、小型犬で大さじ1杯(15ml)程度から。カロリーだけで計算すると体重5kgで61mlまで許容できますが、実際にはその手前で下痢が起こります。
「水で薄める」には、条件つきで意味があります。薄めて量を増やすのではなく、いつもの器の中身を減らす形なら有効です。
子犬には与えないでください。下痢による脱水が重篤になりやすく、犬の母乳と牛乳では成分がまったく違います。

お急ぎの方は、こちらからどうぞ。
犬の食べ物コラム一覧
「水で薄める」に意味はあるのか
牛乳を水で薄めて与える方法については、意見が分かれています。
- 「薄めても体に入る乳糖の量は同じだから、意味がない」
- 「薄めれば摂取する乳糖が減るから、薄めたほうがよい」
この2つは、想定している場面が違うだけで、どちらも正しいことを言っています。
| 薄め方によって、結果が変わります | ||
|---|---|---|
| やり方 | 乳糖 | 意味 |
| 牛乳50mlに 水50mlを足して 100ml全部与える |
変わらない | ない |
| いつもの器1杯を 牛乳50ml+ 水50mlにする |
半分 | ある |
乳糖不耐による下痢は、一度に腸へ入る乳糖の量で決まります。水を足しても、牛乳そのものの量が変わらなければ、入る乳糖は同じです。
一方、「いつも与えている量」を基準にして、その中身の牛乳を減らせば、乳糖の摂取量は確実に減ります。
そして犬は、出された器の分を飲みます。「薄めて量を増やす」のではなく「器の中の牛乳を減らす」という使い方をすれば、薄めることには意味があります。
夏場など、水は飲むけれど食が細いときに、薄めた牛乳で水分と栄養をいっしょに摂らせる、という使い方もあります。この場合も、牛乳そのものの量は控えめにしてください。
なぜ下痢をするのか
牛乳には乳糖(ラクトース)という糖が含まれています。これを分解するのが、小腸にあるラクターゼという酵素です。
犬はこのラクターゼが少なく、乳糖をうまく分解できません。分解されなかった乳糖は小腸で吸収されずに大腸まで届き、水分を引き込んで下痢を起こします。
哺乳類は乳児期にラクターゼが最も多く、離乳とともに減っていきます。これは人を含めた哺乳類に共通する変化です。子犬のころは飲めたのに成犬になって下痢をするようになった、というのはこのためです。
症状が出るまでの時間
牛乳による下痢は、飲んでから半日以内に現れることが多いとされています。中毒のようにじわじわ進行するものではありません。
下痢そのものは命に関わるものではありませんが、体の小さな犬や子犬では、脱水や体力の消耗が問題になります。
- 下痢が1日以上続く
- 水を飲まない、飲んでも吐く
- 便に血が混じる
- ぐったりしている、震えている
- 子犬・シニア犬・持病のある犬で下痢が出た
牛乳を飲んだ後に皮膚のかゆみや湿疹が出た場合は、乳糖不耐ではなく牛乳アレルギーの可能性があります。この2つは別のものです。
乳糖不耐とアレルギーは別のもの
混同されやすいのですが、この2つは仕組みが違います。
| 乳糖不耐とアレルギーの違い | ||
|---|---|---|
| 乳糖不耐 | アレルギー | |
| 原因 | 酵素が足りない | 免疫の反応 |
| 症状 | 下痢・お腹の張り | かゆみ・湿疹 下痢・嘔吐 |
| 量との 関係 |
量に依存する | 少量でも起こる |
牛乳アレルギーがある犬には、量を減らしても薄めても意味がありません。皮膚症状が出た場合は、牛乳も乳製品もやめて獣医師に相談してください。
体重別・与えるとしたら何mlまでか
世界小動物獣医師会(WSAVA)は、おやつや主食以外の食べ物を1日に必要なカロリーの10%未満に収めることを推奨しています。
日本食品標準成分表(八訂・増補2023年)によると、普通牛乳は100gあたり61kcal、低脂肪牛乳は42kcalです。
| 体重別・カロリー上の上限 | ||
|---|---|---|
| 体重 | 普通 牛乳 |
低脂肪 牛乳 |
| 2kg | 約31ml | 約45ml |
| 5kg | 約61ml | 約89ml |
| 10kg | 約103ml | 約150ml |
| 20kg | 約174ml | 約252ml |
| 30kg | 約235ml | 約342ml |
算出方法:安静時エネルギー要求量(RER)=70×体重(kg)の0.75乗、1日に必要なカロリー=RER×1.6(避妊去勢済みの健康な成犬の係数)として計算し、その10%を牛乳のカロリーで割ったものです。比重は1として計算しています。
この数字まで与えないでください
上の表はカロリーだけで計算した上限です。実際には、カロリーの上限に達するはるか手前で、乳糖による下痢が起こります。
犬が乳糖にどこまで耐えられるかは個体差が大きく、「何mlまでなら安全」という基準は確立されていません。
初めて与えるなら、小型犬で大さじ1杯(15ml)程度から。それで問題がなくても、日常的に与えるものではありません。

与えるなら、この形で
- 常温に戻す── 冷たいものはそれだけで下痢の原因になります
- ごく少量から始める── 小型犬なら大さじ1杯程度
- 低脂肪牛乳を選ぶ── カロリーと脂質を抑えられます
- 半日は便の様子を見る── 症状は半日以内に出ることが多いためです
- 皮膚のかゆみや湿疹が出たら中止する── アレルギーの可能性があります
子犬に人間用の牛乳を与えるのは避けてください。子犬は下痢による脱水が重篤になりやすく、そもそも犬の母乳と牛乳では成分がまったく違います。授乳期であれば、子犬用のミルクを使ってください。
牛乳より確実な選択肢

「犬にミルクを飲ませたい」という目的であれば、人間用の牛乳より確実な選択肢があります。
| 牛乳の代わりになるもの | |
|---|---|
| 犬用 ミルク |
乳糖を分解済みのもの、乳糖分解酵素を加えたものがあります。下痢の心配がほとんどありません。犬に必要な栄養も配合されています。 |
| ヤギ ミルク |
牛乳より乳糖が少なく、脂肪球も小さいため消化しやすいとされます。ただし乳糖がゼロではないので、初回は少量から。 |
| 豆乳 | 乳糖は含まれません。ただしたんぱく質が多く、腎臓に持病のある犬には与えないでください。大豆アレルギーにも注意。無調整のものを選んでください。 |
| ぬるま湯 | 水分補給が目的なら、これで足ります。フードをふやかす目的でも同じです。 |
カルシウムを摂らせたい、という目的であれば総合栄養食のフードで足りています。牛乳から補う必要はありません。
チーズやヨーグルトはどうか
牛乳から作られるチーズやヨーグルトは、製造や発酵の過程で乳糖が減ります。そのため牛乳ほどの問題にはなりません。
ただし「乳糖がゼロになる」わけではありません。また、チーズは脂質と塩分が多く、乳糖とは別の理由で下痢や肥満の原因になります。
チーズについては種類による差が非常に大きく、プロセスチーズの塩分はモッツァレラの約16倍です。詳しくは別記事にまとめています。
まとめ
- 人間用の牛乳は、犬に積極的にすすめるものではない
- ただし少量なめた程度で慌てる必要はない
- 「薄める」は条件つきで有効。量を増やすのではなく、器の中の牛乳を減らす形なら意味がある
- 下痢の原因は乳糖。犬はラクターゼが少ない
- 症状は半日以内に出ることが多い
- 乳糖不耐とアレルギーは別。アレルギーは量を減らしても起こる
- 「何mlまで安全」という基準は確立されていない。個体差が大きい
- 目的がミルクなら、犬用ミルクやヤギミルクのほうが確実
- カルシウム目的なら、総合栄養食で足りている
牛乳のパックを開ける音で寄ってくる犬、いますよね。人が飲んでいるものは、やっぱり気になるようです。
ひとなめ分けるくらいなら構いません。ただ、習慣にするなら犬用のミルクのほうが安心です。

ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』スタッフのブログです。
このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。











