牛乳は栄養満点な飲み物ですが、犬に人間用の牛乳を飲ませると消化不良で下痢をしてしまうため、近年では飲ませてはいけないと言われることが多くなりました。
しかし、中には人間用の牛乳を愛犬に飲ませているという話や、牛乳から作られているハズのチーズやヨーグルトは健康にいい…などという話も聞きます。
一体どういうことなのか、人間用の牛乳を犬に与えることの是非について調査してみました。
目次
犬に牛乳を飲ませてはダメな理由
人間が飲む牛乳を犬に飲ませることは推奨されませんが、絶対飲ませてはいけないという訳でもありません。
その理由を解説します。
下痢
犬に人間用の牛乳を飲ませてはいけないと言われる、1番の理由が下痢です。
下痢をすると、人間よりも体の小さな犬は、脱水症状になったり、体力を消耗したりするので、危険だから飲ませない方がよいという意見ですね。
体質によりますから、多少飲んだくらいで問題が出るとは考えにくいです。
そのため、犬がうっかり少量の牛乳を飲んでしまったからといってあわてる必要はなさそうです。
理由は次に記します。
乳糖不耐症と牛乳
牛乳には、乳糖(ラクトース)という成分が豊富に含まれています。
しかし犬は、この乳糖を分解する「ラクターゼ」という消化酵素が少なく、乳糖の分解がし辛い体質なのです。そのため、小腸で乳糖の消化吸収がスムーズに行われず、下痢をしてしまうことがあります。
人間でも牛乳を飲んでお腹がゴロゴロする人がいるのは、ラクターゼが少ないためだと言われています。
このように、体内で乳糖を分解できないことを「乳糖不耐症」と言います。
哺乳類は、乳児期に小腸のラクターゼが最も多く、離乳すると急激に減少します。この現象は哺乳類に共通してみられる現象です。
このことから人間の場合では、乳糖不耐症になる人の割合は世界の成人人口の9割くらいの割合で存在していると言われています。犬は、そんな人間以上に乳糖不耐症になる割合が高いのだそうです。
ですが、9割の人が全く牛乳を飲まないかというとそういうわけではないですよね。
むしろ、健康のために飲みたいと思う大人の方が多いのではないでしょうか。
多少おなかがゴロゴロしても意地でも飲んでいるという人もいますね。
犬も、乳糖不耐症だからといって、絶対に飲ませない方がいいという訳でもないのです。
むしろ、準完全食である牛乳は飲ませたほうがよいと考える獣医師さんもいます。
飲ませるか飲ませないかを判断するのはあくまでも飼い主ですが、愛犬が欲しがるようであれば少量から与えてみて、様子を見て判断してもよいでしょう。
【参考リンク】
J-STAGE 日本家政学会誌「乳糖不耐症と牛乳の飲み方」足立 達氏
アレルギー
まれですが、牛乳アレルギーを持った犬がいます。
少量飲むだけで下痢を起こす、湿疹などの症状が現れ、ひどい場合には脱毛にも繋がります。
少量飲ませてみて、異変を感じたらすぐに中止してください。
なお、牛乳アレルギーと乳糖不耐症は別のものです。
栄養過多
牛乳には、カルシウムが豊富に含まれています。
カルシウムは骨や体を丈夫にするなどのメリットもありますが、他の食材に含まれるシュウ酸と結びついて尿結石を起こす恐れもあります。
また本来、牛乳は子牛を育てるためのものです。
カロリーが非常に高くなっているため、肥満の原因にもなりやすいのです。
犬に牛乳を与えるなら
牛乳は良質なタンパク質やカリウム、カルシウムなど栄養が豊富に含まれた飲み物です。
上手に取り入れることで健康維持に役立つことは事実です。
ここでは牛乳を犬に与える方法を見てみましょう。
子犬のときから
犬も子犬のときの方が、乳糖を分解する酵素ラクターゼを多く持っていることが分かっています。
一説には子犬のときから牛乳を飲んでいると、乳糖を分解する酵素が減りにくくなるといわれていますが、科学的に証明されたものではありません。
子犬が下痢を起こすと重篤になりやすいことから、できれば避けた方が無難でしょう。
常温に戻して少量ずつ
もし犬が人間用の牛乳を飲んでも、下痢やアレルギーなどの症状が現れないようでしたら与えても問題ありません。
しかし、冷蔵庫でキンキンに冷えた牛乳よりは、常温に戻したものを与えるなどの工夫をした方が良いでしょう。
常温に戻したものを少量ずつ与えてみて、愛犬の様子を見ます。
少量ずつ与えることでペットの体の異変に気がつきやすくなったり、肥満防止にも繋がります。
水で薄める
水で薄めて飲ませるという意見については、賛否両論のようです。
反対派の意見として主なものは、「薄めたとしても体に入る乳糖は同じだから薄めること自体に意味がない」、
賛成派の意見として主なものは、「薄めれば摂取する乳糖の量が減るから薄めたほうがよい」というものです。
どちらも一理あるような印象を受けますね。
牛乳を飲むときに少量で満足する犬であれば薄めなくてもいいでしょうし、一度にがぶがぶ大量に飲みたい派の犬であれば、薄めたほうがいいのかもしれません。
また、暑い季節など、水は飲むけど食が細くなっているときなどは、水に薄めた牛乳を与えてみたほうがいいこともあるかもしれません。
水分と一緒に栄養も補給できるからです。
このあたりは、飼い主が愛犬の様子を見て判断するしかなさそうです。
低脂肪牛乳を選ぶ
飲ませ方のひとつとして、低脂肪牛乳を選ぶという選択肢もあります。
低脂肪のものを選ぶことで、脂肪分とカロリーを抑えることができ、肥満を防ぐことができます。
犬用ミルクを与える
犬用ミルクなら乳糖をカットしたものや、乳糖分解酵素が含まれたものがあり、消化不良の心配がありません。
加えて犬用ミルクは犬に必要な栄養素が配合されており、成犬の健康維持や老犬の免疫力強化や体力維持に役立つ健康食品ですので、普段の食事に積極的に取り入れたいもの。
無理に人間用の牛乳を飲ませるよりは、犬用のミルクを与えるようにしましょう。
ヤギミルクを与える
牛の乳ではなく、ヤギの乳になりますが、ヤギミルクは犬の母乳に近い成分のため、アレルギーや下痢を起こしにくい乳製品として知られています。
カルシウム、ビタミン類、タウリンなどの栄養が牛乳よりも豊富なうえに、消化もしやすいためシニアや体力が落ちている犬にもおすすめです。
しかしアレルギーや下痢が全く起こらないとも限らないので、まずは少量与えて様子を見ましょう。
スーパーやコンビニでは売っていないので、やや入手のし辛さはありますが、今はネットで簡単に買うことができます。
豆乳
ヤギの乳が出たので、豆の乳も紹介しましょう。
豆乳は良質なタンパク質が豊富なため、愛犬に与えている飼い主さんが多いのではないかと思います。
しかし消化吸収性が高く、過剰に与えてしまえば腎臓に負担をかけることがありますので、腎臓疾患のある犬には与えないように注意してください。
また、大豆アレルギーを持つ犬には当然与えてはいけません。
犬に与えても良い乳製品
牛乳を原料としていてもチーズやヨーグルトのような発酵食品は発酵の過程で乳糖が分解されて軽減しているため、犬に与えることができます。
チーズ
チーズは栄養が豊富でタンパク質やビタミン、カルシウム、鉄分が含まれています。
チーズは塩分が多く含まれているので、人間用よりもペット用のチーズを与えるようにしましょう。
また、人間用でもカッテージチーズやモッツァレラチーズのようなフレッシュタイプのチーズは塩分が少なく、低カロリーですので、おすすめです。
ヨーグルト
ヨーグルトには、乳酸菌が多く含まれています。
腸内環境を整える、免疫力を高める、口臭予防などの効果が期待できます。
脂肪の少ない無糖のものを適量与えると良いでしょう。
まとめ
こうしてみると、授乳期の子犬以外は別として、わざわざ生の牛乳を犬に与えるメリットはなさそうですね。
しかし、乳製品であれば、お腹を壊す乳糖が分解されているので安全に与えられ、良質なタンパク質や乳酸菌の供給源となりますので、むしろ積極的に取り入れたいところです。
ぽちたま薬局のメルマガ担当。
手術しても再発する愛犬の腫瘍に悩まされていましたが、ご飯を手作りに変えてから病気の改善を目の当たりに。
それから5年、手作りご飯のチカラを信じて毎日レシピとメルマガ企画を考える日々を過ごしています。