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猫にイカを食べさせるのは危険?

猫がイカを食べると腰を抜かす!!伝承の真意を探ってみた

猫がイカを食べると腰を抜かす!!伝承の真意を探ってみた

「猫がイカを食べると腰を抜かす」という古くからの言い伝えを知っていますか?

まるで都市伝説のように語られているお話ですが、どうやらこの言い伝え、一理あるようですよ。

猫に限らず、動物が食べ物を食べてエネルギーを作り出す際、食べものは体内で分解されて、エネルギーの元となるブドウ糖が作られます。
このブドウ糖から体のエネルギーが生産されるわけですが、体を動かすエネルギーとなるには、ブドウ糖自体が分解される必要があります。

ブドウ糖の分解には、ビタミンB1が作用します。
ところが生のイカに含まれる酵素「チアミナーゼ」は、ビタミンB1を破壊してしまうのです。

チアミナーゼを過剰に摂取することはビタミンB1の破壊を促し、結果としてビタミンB1欠乏症を引き起こします。
ビタミンB1が不足することはすなわち、体がブドウ糖を分解する速度が低下することにつながります。

その結果として、体がエネルギー不足に陥るのです。

このように、ビタミンB1は動物にとって、エネルギーを産生する上で重要な栄養素です。
これが不足することで、体のエネルギーが作られなくなり、フラフラの状態になってしまう…つまり、「腰を抜かした状態」となるのですね。

諸悪の根源?生のイカに含まれる成分「チアミナーゼ」とは

あく抜きをしていないワラビやゼンマイなどのシダ類、コイやフナ、金魚などの淡水魚、ハマグリやタコなどにも含まれている酵素で、ビタミンB1(チアミン)を分解する効果のある成分です。

人間を含む哺乳動物はビタミンB1が不足すると脚気(※)症状になります。

チアミナーゼはⅠ類とⅡ類に分類されていますが、イカに含まれているのはⅠの方で、この酵素は加熱によってビタミンB1を分解する作用が失われます。

※脚気
ビタミンB1が不足することにより、心不全と末梢神経障害を引き起こす疾患。
心不全による足のむくみ、神経障害による足のしびれなどが起きることから「脚気」と呼ばれている。
最悪の場合は、死に至ることもある。
日本人が、玄米から精米した白米を食べるようになった時代(明治~大正時代)に大流行した。
当時の死亡原因の上位を占めるほどの深刻な問題となった。
これは、米ぬかに含まれるビタミンB1を摂取しなくなったことによる影響が大きいとされている。

猫にイカやタコを与えるのが危険な理由

猫にイカやタコを与えるのが危険な理由

チアミナーゼが加熱によって作用を失うのであれば、加熱したイカタコなら猫に与えて大丈夫なのでは!?
と思いがちですが、どうやらそう簡単な話でもなさそうです。

キャットフードを買う時に成分表示をご覧になる方は多いと思いますが、確かにキャットフードに入ってますよね…イカ。

(参考:いなばペットフード「CIAO ホワイティ」

猫がイカ入りのキャットフードを食べてもビタミンB1欠乏症にならないのはドライフードもウェットフードも加熱処理されていることに加え、有害な成分が取り除かれて、猫にとって安全に加工されている場合がほとんどだからです。

キャットフードには、イカが入っていたとしても脚気になりにくい工夫がされています。

また、加熱して与えたとしても、猫に危険が迫る可能性はまだ充分にあります。

猫は肉食動物なので、食べ物を丸のみにする習性があります。

猫ちゃんの口を開けて、歯の形状を見てみてください(ついでに、歯周病のチェックもできますね)。
尖った歯ばかりが並んでいますね。

人間のような、食べたものをすりつぶす働きをする、大きな臼歯が無いことが確認できると思います。

あごの形が、肉などを切り裂くことには向いていますが、咀嚼することに向いていないので、食べ物は基本的に丸飲みです。

そのため、弾力があって噛み切りにくいイカやタコを丸飲みしてしまって喉や消化器官に詰まらせてしまう危険性があるのです。

イカやタコはタウリンを豊富に含んでいるので、猫ちゃんに食べさせたくなる食材ですが、たとえ加熱したとしても、何の加工もされていないイカやタコを猫に与えるのは安全であるとは言いがたいのではないでしょうか。

人間が生のイカやタコを食べても大丈夫なのはなぜ?

まず人間は、イカやタコを噛み切り、奥歯ですりつぶすことができるので、喉や消化器官につまらせにくい顎の構造をしています。

また、イカやタコに含有するチアミナーゼの含有量は人間の体重に対してはごく微量なので、人間が摂取しても問題が無いのです。
ただし、内臓はチアミナーゼ含有量が高いので、食べすぎには注意した方がよさそうです。

猫はとくに、人間と比べてビタミンB1の必要量が多く、ビタミンB1が体に作用する影響を受けやすいので、
チアミナーゼは極力与えないように注意することが望まれます。

【参考リンク】
cinii「アノイリナーゼの研究 食品による栄養摂取障害の一例:(5)魚類に含まれるチアミナーゼと関連疾患

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