スーパーで買った生肉を、そのまま犬や猫に与えるのはおすすめしません。
アメリカ食品医薬品局(FDA)が市販のペットフード1,256検体を調べた結果、生フード196検体のうち47検体からサルモネラまたはリステリアが検出されました。生フード以外の1,060検体では、陽性は1検体だけです。
危ないのはペットだけではありません。生肉を扱った手や調理器具を介して、飼い主自身が感染します。小さな子どもや高齢者がいる家庭では、とくに注意が必要です。
「生肉のほうが酵素が摂れる」という説明をよく見かけますが、これは成り立ちません。食べ物に含まれる酵素は、胃酸とたんぱく質分解酵素で分解されます。
それでも与えるなら、守ることがあります。人が刺身で食べられる鮮度のものを選び、豚肉は絶対に避け、調理器具を分けてください。

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FDAが調べた、生フードの汚染率
「生肉には細菌がいる」という話は、よく聞きます。では実際どのくらいなのか。アメリカ食品医薬品局(FDA)の動物医薬品センターが、2010年10月から2012年7月にかけて1,000検体を超えるペットフードを検査しています。
| FDAの検査結果 | ||
|---|---|---|
| フードの種類 | 検体数 | 陽性 |
| 生フード | 196 | 47 |
| ジャーキー系 | 190 | 0 |
| 半生(犬) | 120 | 0 |
| 半生(猫) | 120 | 0 |
| ドライ(犬) | 120 | 0 |
| ドライ(猫) | 120 | 1 |
※ 生フードの内訳はサルモネラ15検体、リステリア・モノサイトゲネス32検体(9検体は両方陽性のため、実数は38検体)。
生フード以外の1,060検体のうち、陽性はドライキャットフードの1検体だけでした。生フードだけが突出しています。
検査されたのは市販の生ペットフードで、多くは冷凍のミンチやソーセージ状の製品です。品質管理をしている製品でもこの結果だということに注意してください。スーパーの精肉売り場の肉は、そもそもペット用に管理されたものではありません。
リスクを負うのは、ペットだけではありません
ここが見落とされがちです。生肉を扱う飼い主自身が感染する可能性があります。
FDAは、生の食材を準備している最中に口元を触ったり、汚染された調理器具に触れた手で口に触れたりすることで、サルモネラやリステリアに感染しうると説明しています。手や衣服に菌が付けば、他の人や物、家の中の表面にも広がります。
さらに重要なのは、ペット自身が症状を出していなくても、菌を排出することがあるという点です。犬や猫の便や唾液から菌が出て、家の中を汚染することがあります。
小さなお子さんや高齢の方、妊娠中の方、免疫が落ちている方が同居している家庭では、この点をとくに重く見てください。リステリアは、こうした方々で重い症状を起こすことがあります。

「生肉のほうが消化にいい」は本当か
生食をすすめる説明で、よく次の2つが挙げられます。どちらも確認しておきます。
「生肉には酵素が含まれている」
生の食材に含まれる酵素を摂ることで消化を助ける、という説明があります。
ただし、酵素はタンパク質です。胃に入れば胃酸で変性し、消化酵素によって分解されます。食べた酵素がそのまま体内で働くという前提には、根拠が示されていません。
犬も猫も、消化に必要な酵素は自分の体で作っています。食べ物から補う必要があるという考え方は、獣医栄養学の主流ではありません。
「加熱より生のほうが消化吸収がよい」
これも逆です。タンパク質は加熱によって立体構造がほどけ、消化酵素が働きやすくなります。加熱調理は、消化性を下げるのではなく上げる方向に働きます。
「犬や猫はもともと生肉を食べていた」というのは事実です。ただし、野生動物が生肉を食べて食中毒を起こさないわけではありません。自然界では下痢や体調不良も日常的に起きています。それを「問題がない」とは言えません。
栄養の偏りという別の問題
生肉だけ、あるいは鶏のささみだけを与え続けると、カルシウムやビタミン、ミネラルが大きく不足します。
総合栄養食のフードは、必要な栄養素がバランスよく配合されるよう設計されています。生肉を主食にする場合、この設計を自分で組み直すことになります。これは片手間でできる作業ではありません。
それでも与えるなら、守ること
ここまで読んだうえで、それでも生肉を与えたいという場合。FDAは「もし生の食事を与えるなら」として、具体的な手順を示しています。

| FDAが推奨している取り扱い | |
|---|---|
| 手洗い | 生の食材や、それに触れた物に触った後は、石けんと水で20秒以上手を洗う。 |
| 洗浄と消毒 | 触れた面と器具を、まず熱い石けん水で洗い、そのあと消毒する。洗うことと消毒することは別です。食器洗い機にかける方法もあります。 |
| 解凍 | 冷凍しておき、冷蔵庫か電子レンジで解凍する。調理台やシンクに出しっぱなしにしない。 |
| 洗わない | 生の肉や魚を水で洗わない。汁が飛び散って、他の食材や場所に菌を広げます。 |
| 分ける | 生の食材は、他の食べ物と分けて保管する。 |
| 食べ残し | すぐに覆って冷蔵するか、処分する。置きっぱなしにしない。 |
| 顔を 近づけない |
口の周りにキスをしない。顔を舐めさせない。食べた直後はとくに注意する。 |
| 舐められたら | 手を洗う。顔を舐められた場合は顔も洗う。 |
FDAは消毒液について、漂白剤大さじ1杯を水約1リットルで薄めたものが有効だと述べています。
「顔を舐めさせない」は、守るのが難しい項目かもしれません。ですが、生食を続けるならここは外せない部分です。難しいと感じるなら、そのこと自体が生食を選ばない理由になります。
与えるとしても、避けたほうがよい肉
| 肉の種類別 | |
|---|---|
| 豚肉 | 生では与えないでください。トキソプラズマやE型肝炎ウイルスのリスクがあります。日本では人向けにも生食用としての販売が認められていません。 |
| 鶏肉 | 生では与えないでください。カンピロバクターの汚染率が高い食肉です。日本で流通する鶏肉は加熱を前提に売られています。 |
| 内臓 (レバー等) |
生では与えないでください。人向けにも生食での提供が禁止されている部位です。 |
| ジビエ (鹿・猪) |
生では与えないでください。寄生虫やE型肝炎のリスクが高く、流通経路もさまざまです。 |
| 牛肉・馬肉 | 他の肉よりはリスクが低いとされますが、ゼロではありません。与えるなら鮮度の高い赤身を、少量にしてください。 |
| ペット用の 生肉製品 |
人間用の食肉より管理されていますが、FDAの検査では市販の生ペットフードから菌が検出されています。「ペット用だから安全」とは言えません。 |
肉ではありませんが、生の魚介類も同じ扱いです。とくに生のイカはアニサキスとビタミンB1の両方の問題があるため、犬にイカを与えるときは加熱してからにしてください。
いちばん確実なのは、加熱すること
FDAは「十分な加熱は、サルモネラ、リステリア、その他の有害な食中毒菌を殺す」と述べています。
肉を与えたいのであれば、茹でるか焼くかして、味付けをせずに与えるのが最も安全です。ゆでた鶏むね肉を少しほぐしてトッピングする、という形であれば、リスクはほとんどありません。
なお、表面だけを炙った「たたき」では、内部の菌は残ります。生食のリスクを避けたいなら、中心部まで火を通してください。
まとめ
- スーパーの生肉をそのまま与えるのはすすめられません
- FDAの検査では、生フード196検体中47検体からサルモネラかリステリアが検出された
- 他のフード1,060検体で陽性は1検体のみ。生フードだけが突出している
- 飼い主や同居家族が感染するリスクがある。ペットが無症状でも菌を排出することがある
- 「生肉の酵素で消化を助ける」に根拠は示されていない
- 「生のほうが消化がよい」は逆。加熱でタンパク質は消化しやすくなる
- 豚・鶏・内臓・ジビエは生で与えない
- 与えるならFDAの手順を守る。とくに顔を舐めさせないこと
- 加熱すれば、この記事のリスクはほとんど消えます
肉を切っていると足元に来る、というのは犬猫あるあるですよね。あの視線に応えたくなる気持ちはよく分かります。
ただ、応えるなら火を通してからのほうが安心です。ゆでた鶏むね肉をひとかけら。それで十分喜んでくれます。

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