量にかかわらず、すぐに動物病院に連絡してください。自己判断で吐かせようとしないでください。
その際、次の3点を伝えられるようにしてください。
- 何を食べたか(生の玉ねぎ/加熱した料理/コンソメなどの粉末)
- どのくらいの量か(料理名でも構いません)
- いつ食べたか、犬の体重は何kgか
食べた直後は元気なことがほとんどです。症状が出るのは数日後なので、「元気だから大丈夫」と判断しないでください。

犬の食べ物コラム一覧
体重別・中毒が報告されている量
Merck Veterinary Manual によると、犬では生の玉ねぎ15〜30g/kgの摂取で臨床症状が出ていると報告されています。
この下限(15g/kg)を体重別にすると、次のようになります。
| 中毒症状が報告されている量(下限) | ||
|---|---|---|
| 体重 | 生の玉ねぎ | 玉ねぎ換算 |
| 2kg | 約30g | 約1/6個 |
| 5kg | 約75g | 約1/3個 |
| 10kg | 約150g | 約3/4個 |
| 20kg | 約300g | 約1.5個 |
| 30kg | 約450g | 約2個 |
玉ねぎ中1個を約200gとして換算しています。
「少量なら大丈夫」とは言えません
この数字は「これ以下なら安全」という意味ではありません。報告されている量の下限であって、安全域を示すものではありません。体質による差があり、柴犬や秋田犬などの日本犬は遺伝的に赤血球が酸化に弱く、より少ない量で症状が出ることがあります。
また、少量でも繰り返し食べれば蓄積します。「ひとかけらだから」を毎日続ければ、同じことになります。
いちばん多い中毒の原因は「粉末」

ここは、意外に知られていない点です。
Merck Veterinary Manual は、犬猫の中毒について乾燥フレーク、粉末、オニオンスープの素といった濃縮された形のものを摂取したケースが最も多いとしています。
生の玉ねぎより、加工された調味料のほうが事故が多いということです。
| 見落としやすいもの | |
|---|---|
| コンソメ ブイヨン |
玉ねぎが濃縮されています。スープや煮込み料理のベースに使われます。 |
| オニオン パウダー |
粉末なので、少量でも玉ねぎ何個分にもなります。小さじ1杯で生の玉ねぎ30g分に相当する計算です。 |
| ガーリック パウダー |
ニンニクは玉ねぎの3〜5倍の毒性です。粉末なのでさらに濃縮されています。 |
| ベビーフード 離乳食 |
玉ねぎが使われていることがあります。子どもと犬が同じ空間にいる家庭では注意してください。 |
| ハンバーグ ミートソース |
玉ねぎが刻み込まれています。見た目では分かりません。 |
| スープの 煮汁 |
玉ねぎ本体を食べなくても、成分は煮汁に溶け出しています。 |
加熱しても変わりません
「火を通せば大丈夫」と思われがちですが、加熱しても毒性は失われません。
Merck によれば、原因となる硫黄化合物は刻む・加熱する・噛むという機械的な破壊と、腸内細菌の働きによって放出されます。
つまり調理は、むしろ成分を放出させる方向に働きます。炒める、煮る、スープにする、いずれも安全にはなりません。
水分が抜けるほど、同じ重さに入る玉ねぎが増えます
「粉末が危ない」というのは、濃縮されているからです。どれくらい濃くなるのかを数値で見ておきます。
玉ねぎ由来の成分がどれだけ残っているかの目印として、カリウムの値を使います(日本食品標準成分表 八訂・増補2023年)。
| たまねぎ・可食部100gあたり | |||
|---|---|---|---|
| 状態 | 水分 | カリウム | 生を100として |
| 生 | 90.1% | 150mg | 100% |
| 水さらし | 93.0% | 88mg | 59% |
| ゆで | 91.5% | 110mg | 73% |
| あめ色 (油いため) |
54.7% | 490mg | 327% |
あめ色に炒めた玉ねぎは、同じ重さで生の約3.3倍になります。水分が飛んで、中身が詰まるためです。

体重5kgの犬で換算すると
Merckの下限(15g/kg)だと、体重5kgの犬では生の玉ねぎ75gが中毒の報告がある量です。これを形を変えて計算すると、こうなります。
・生の玉ねぎ ── 75g(中1個の約4割)
・あめ色に炒めた玉ねぎ ── 約23g(大さじ1杯半ほど)
カレーやハヤシライスのルーには、あめ色の玉ねぎが使われています。同じ「大さじ1杯」でも、生と炒めたものでは中身が3倍違います。
粉末はさらに濃くなります
オニオンパウダーや乾燥フレークは、日本食品標準成分表に収載されていません。そのため直接の数値は示せません。
ここから先は計算になりますが、生の玉ねぎの固形分は約9.9%(水分90.1%)です。水分をほぼ飛ばした粉末なら、同じ重さで生の約10倍という計算になります。体重5kgの犬なら、粉末7〜8gが生75g分にあたる計算です。製品ごとに水分も配合も違うので、あくまで目安として見てください。
小さじ1杯(約3g)でも、生の玉ねぎ30g分に相当する計算になります。これが「粉末での事故が最も多い」理由です。
水にさらしても、安全にはなりません
表のとおり、水にさらすとカリウムは59%まで下がります。ただしこれは「成分が水に溶け出す」というだけの話です。
原因となる硫黄化合物が同じ割合で減るかどうかは、調べた範囲では確認できませんでした。4割減ったとしても、6割は残っている計算になります。
「水にさらしたから大丈夫」とは考えないでください。ゆでた場合も73%が残っています。
出典:文部科学省 食品成分データベース/日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 01.一般成分表。食品番号 06153(たまねぎ りん茎 生)・06154(水さらし)・06155(ゆで)・06389(油いため あめ色たまねぎ)。2026-10-15 取得、食品名を照合済み。カリウムは玉ねぎ由来の成分が残っている度合いの目安として使っており、毒性成分そのものの量ではありません。
症状はいつ出るのか

この記事でいちばん伝えたいのは、ここです。
| 体の中で起きていること | |
|---|---|
| 24時間 以内 |
赤血球の酸化損傷とハインツ小体の形成が始まります。この時点で外からは分かりません。 |
| 約72時間 | ハインツ小体とメトヘモグロビンがピークに達します。 |
| 3〜5日後 | 溶血(赤血球が壊れること)が起こります。 |
| 数日後 | ここでようやく、貧血の症状が現れます。 |
食べた当日は、ほとんどの犬が元気です。体の中では既に始まっているのに、外からは分かりません。
- 元気がない、疲れやすい
- 食欲がない
- 呼吸が速い、脈が速い
- 歯ぐきが白い、または黄色い(黄疸)
- 赤や茶色の尿が出る
- ふらつく、倒れる
赤や茶色の尿は、壊れた赤血球のヘモグロビンが腎臓から漏れ出したものです。血尿とは仕組みが違います。この段階では、かなり溶血が進んでいます。
初期に嘔吐や下痢が出ることもありますが、これは一度おさまります。そこで安心してしまうのが、この中毒のいちばん危ないところです。
吐かせようとしないでください
インターネットには、家庭で吐かせる方法が2つ広まっています。どちらも自己判断で行わないでください。
| 塩水を 飲ませる |
危険です。吐かなかった場合、今度は塩分による中毒を招きます。 |
|---|---|
| オキシドール (3%過酸化水素) |
動物病院では催吐薬として使うことがありますが、体重あたりの用量が決まっており、獣医師の判断で行うものです。家庭で量を誤ると、胃や食道を傷つけます。 |
口の中にまだ残っているのが見えている場合は、指を入れずに取り出せる範囲で取り除いてください。無理に指を入れると、かえって奥に押し込むことがあります。
やるべきことは、動物病院に電話をして指示を仰ぐことです。それだけです。
動物病院ではどんな処置をするのか
- 消化管の除染── 摂取から間もない場合、催吐処置が行われます
- 点滴── 壊れた赤血球の成分から腎臓を守ります
- 酸素の投与、輸血── 貧血が重い場合
- 血液検査── ハインツ小体や貧血の程度を確認します
玉ねぎ中毒に特効薬はありません。溶血が止まるまで、支える治療になります。だからこそ、早い段階で除染できるかどうかが分かれ目になります。
猫はもっと危ないので注意
犬猫を一緒に飼っている家庭では、こちらも知っておいてください。
Merck Veterinary Manual は、猫が最も感受性が高く、次いで犬としています。
| 中毒が報告されている量 | ||
|---|---|---|
| 犬 | 猫 | |
| 生の玉ねぎ | 15〜30g/kg | 5g/kg |
| 体重5kgなら | 約75g | 約25g |
猫は犬の3〜6倍の感受性があります。加えてMerckは、加熱した玉ねぎを小さじ1杯未満食べただけで中毒が報告されているとしています。
犬用に気をつけている食べ物でも、猫には足りません。同居している場合は、猫の基準で管理してください。
参考:Merck Veterinary Manual「Garlic and Onion (Allium spp) Toxicosis in Animals」(外部リンク)
ネギ類はすべて同じです
| Allium属(ネギ科)の仲間 | |
|---|---|
| ニンニク | 玉ねぎの3〜5倍の毒性です。Allium属の中で最も危険です。 |
| 玉ねぎ | 中毒の報告が最も多い食材です。 |
| 長ネギ 青ネギ |
薬味として少量でも使われます。うどんやそばの汁にも入ります。 |
| ニラ | 餃子やレバニラなどに使われます。 |
| らっきょう あさつき |
同じくネギ科です。わけぎ、エシャロットも含まれます。 |
日本の食卓では、ネギ類が使われていない料理のほうが少ないくらいです。「人の食べ物は分けない」が、いちばん確実な対策になります。
犬にネギは、玉ねぎと同じに考えてください
長ネギ・青ネギ・ニラ・らっきょうも、玉ねぎと同じ有機チオ硫酸化合物を含みます。赤血球を壊す仕組みは同じです。
ただし種類ごとの中毒量は、玉ねぎほど報告が揃っていません。ニンニクが玉ねぎの3〜5倍という報告はありますが、長ネギやニラについては「何gから」と言える資料を確認できませんでした。
そのため、玉ねぎの量(15g/kg)を目安に考えるのが現実的です。スーパーの長ネギは1本でおよそ100〜150gありますから、体重5kgの犬なら半分ほどで、玉ねぎの報告量に届く計算になります。
ネギは「汁」から入ることのほうが多い
刻んだネギそのものより、ラーメン・うどん・そばの汁、鍋の残り、餃子のタレから入ることのほうが多くなります。
ネギの成分は水に溶け出します。具を取り除いた汁でも、安全にはなりません。残り汁の入った器を、床やこたつの上に置かないでください。
ニラは餃子・レバニラ・チヂミに。らっきょうはカレーの付け合わせに。犬が届く位置に置かれやすいものばかりです。
まとめ
- 食べたら量にかかわらず、すぐ動物病院へ連絡する
- 犬では生の玉ねぎ15〜30g/kgで中毒の報告。体重5kgなら約75g(玉ねぎ1/3個)
- ただしこれは安全域ではない。柴犬・秋田犬などの日本犬はより少量で症状が出ることがある
- いちばん多い原因は、コンソメやオニオンパウダーなどの粉末
- あめ色に炒めた玉ねぎは、同じ重さで生の約3.3倍。体重5kgなら大さじ1杯半で下限に届く
- 水にさらしてもカリウムは59%残る。「水にさらしたから安全」ではない
- ニンニクは玉ねぎの3〜5倍の毒性
- 長ネギ・ニラ・らっきょうも同じに考える。種類ごとの中毒量は報告が揃っていないので、玉ねぎの量を目安にする。具を取り除いた汁でも安全にはならない
- 加熱しても毒性は変わらない。むしろ調理は成分を放出させる
- 赤血球の損傷は24時間以内に始まり、72時間でピーク。症状は数日後
- 塩水・オキシドールで自己判断で吐かせない
- 猫は犬の3〜6倍敏感。同居なら猫の基準で管理する
玉ねぎは日本の食卓でいちばんよく使う野菜のひとつです。だからこそ、床に落ちる機会も多くなります。
料理中に足元に来る子がいるなら、その時間だけでも別の部屋にいてもらうほうが安心です。

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