犬の椎間板ヘルニアは、腰痛が起こる原因の中でも多いとされる病気。
激しい運動や加齢、外傷など原因はさまざまですが、背中の骨を構成している椎骨の間にある「椎間板」が飛び出して、さらに奥にある脊髄を圧迫することで痛みが生じます。
また、ダックスフンドやトイプードル、コーギーなどの軟骨異栄養犬種は発症しやすいと言われています。
参考
・ミニチュアダックスフンドの胸椎椎間板ヘルニアに対する術後早期理学療法を実施した一例(第52回日本理学療法学術大会(千葉))(外部リンク)
とはいえ椎間板ヘルニアは犬種関係なく発症する可能性がある病気。どんな犬でも油断はできません。
この記事では、椎間板ヘルニアの症状や原因、予防対策を解説しています。
ぜひ、愛犬の健康に役立ててください。
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目次
抱っこで痛がったら注意!
ヘルニアの脊椎版の初期症状
以下のような症状が見られる場合は、椎間板ヘルニアを発症している恐れがあります。
犬の椎間板ヘルニアで見られる初期症状
- 抱っこをすると痛がってキャンと鳴く
- 歩けるが散歩を嫌がる
- 階段の上り下りを避ける
- 震える
- 背中を丸めている
初期症状が出ていると、抱っこなどで痛がりますが、まだ四足歩行ができる状態。
病状が進行するにつれて足を引きずったり、歩行が困難になったりしてしまいます。
また、椎間板ヘルニアは重度になると痛みが麻痺するため、異変に早く気づくことが重要です。
犬の椎間板ヘルニアは、症状によってグレード1~5に分けられますが、治療は痛みのある初期の開始が望ましいと言われています。
早期発見できるためにも、グレードごとの症状を詳しく見ていきましょう。
グレード1の症状
グレード1の状態は、犬の椎間板ヘルニアの中で最も軽度です。
前の項目で説明した初期症状にように、抱っこをするとキャンと鳴く、背中を痛がるなどの様子が認められます。
グレード2の症状
グレード2も、犬の椎間板ヘルニアの中では、軽度と言われる状態です。
症状としては、すり足歩行やふらつきなどが見られますが、犬はまだ4本足で歩けます。
グレード3の症状
グレード3の症状は、犬の椎間板ヘルニアで重度に分類されます。
後ろ足を引きずる、歩けないなどの症状が認められる状態です。
このグレード3あたりから麻痺が起こり始め、痛みを感じなくなってきます。
グレード4の症状
グレード4になると自分で排尿することが困難になります。
前のグレードより症状は進行していますが、多少の感覚は残っているため、強い痛みや刺激などには反応が見られます。
グレード5の症状
最も重度であるグレード5は、完全に麻痺して痛みを感じないため、足先の強い刺激にも反応はありません。
犬の椎間板ヘルニアは、時間の経過とともに神経のダメージが深刻になります。
グレード5まで進行が進んでしまった場合、そのうちの5~10%は、「進行性脊髄軟化症」を併発するリスクがあります。
進行性脊髄軟化症とは、脊髄が壊死する恐ろしい病気。
発症すると、1週間ほどで死に至り、早い場合はなんと2~3日で命を落としてしまうこともあります。
犬が椎間板ヘルニアに
なったときの抱っこの仕方
愛犬が椎間板ヘルニアになった場合は、抱っこの仕方にも細心の注意が必要です。
方法としては、まず犬を立たせた状態で片手を胸周辺あるいは首の下に当て、もう片方の手でお尻の後ろから支えます。
そして体全体を包み込むように抱っこしてあげてください。
また、愛犬を抱っこする際に注意したいのは体の向きです。抱っこするときは、下からすくいあげて体が縦にならないように注意しましょう。
犬の両脇に手を入れてバンザイさせるような体勢は腰に負担がかかるので、絶対にしないでください。
犬の椎間板ヘルニアの原因は?
犬の椎間板ヘルニアには、さまざまな原因が挙げられます。
主な原因は、以下の通りです。
犬の椎間板ヘルニアの原因
- 激しい運動
- 加齢
- 外傷
- 肥満
- 遺伝
犬の椎間板ヘルニアが発症する原因は、加齢により椎間板が変性してしまったり、激しい運動や外傷で負担をかけてしまうこと。
また、体重の増加も椎間板に負担がかかるので、愛犬の体重管理にはじゅうぶん注意しましょう。
また、先述した通り、「軟骨異栄養犬種」と呼ばれるダックスフンドやトイプードル、コーギーなどの犬種は遺伝的に椎間板ヘルニアを発症しやすいです。
犬の椎間板ヘルニアの
治療方法は?
犬の椎間板ヘルニアは、主な治療方法に内科療法と外科治療のふたつが用いられます。
症状の程度や健康状態によって違いはありますが、グレード1~2は内科療法、グレード3以降は外科治療をおこなうケースが一般的。
内科治療では、犬を安静にさせながらステロイド剤や非ステロイド剤などを用いて炎症を抑えますが、症状によってはケージレストによる絶対安静が必要な場合もあります。
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参考
・実験脊髄損傷における脊髄軟膜の切開およびステロイド投与の効果(外部リンク)
そしてグレードが進行しているケースでは、手術も選択肢の一つになってくるでしょう。
手術では、圧迫している椎間板物質を取り除きますが、だからといって必ず治るというわけではありません。
治療が遅れた場合や、病状が重度のケースでは、回復できない可能性もあります。
犬の椎間板ヘルニア、
治る確率はどのくらい?
犬の椎間板ヘルニアが治る確率は、1~5までに分類されるグレードによっても異なります。
比較的軽度なグレード1~2の段階であれば8~9割は回復すると言われており、安静と適切な治療によって完治も見込めるでしょう。
グレード3以降は内科治療で回復する可能性がある一方で、外科治療も検討される段階。
しっかり獣医師さんと相談しながら治療の内容を決めていくのがいいでしょう。
さらに、グレード5まで進行した場合は改善率がさらに低下するため、早期に外科治療を用いても完治する可能性は50%ほどと言われています。
参考
・犬の椎間板ヘルニアに対するPLDD(外部リンク)
以下は、あるデータに基づいた外科的手術を行わずに治療をおこなった際の回復率と平均回復時間です。
(グレードの横の数字は頭数。参考をもとに編集部が作成)
グレード3までは8割以上の犬が回復したとされていますが、グレード4は50%、グレード5になると7%という結果が出ています。
また、回復までの平均時間はグレードが上がるにつれ長くなっていました。
治る確率というのは症状の進行具合などによって変わるので、一概に「こうだ」ということは言えません。
ただ、椎間板ヘルニアへの治療の反応は発症からの時間が短いほど良いとされています。
異変に気付いたらすぐに動物病院で治療を受けましょう。
参考
Dr Marianne Dorn, The Rehab Vet, North Herts, UK
(外部リンク)
犬が椎間板ヘルニアになってから
歩けるようになるまで
犬が椎間板ヘルニアの手術をしたあと、歩けるようになるまでどれくらいの日数がかかるのでしょうか。
それは症状やグレード、経過日数によって異なります。
ただ、グレード5まで進行すると、早期に手術を行っても再び歩けるようになるのは約半数ほどだとも言われています。
以下のデータは外科手術を行ったグレード1~グレード5の犬が歩けるようになるまでの回復率。
水色で示した値が14日以内に回復した犬の割合、紫色は全体の回復率です。
(参考をもとに編集部が作成)
グレード1~2は全体で見れば歩行不能な期間があったものの、96.8%の犬が良好な回復を示したとされています。
グレード3では歩行までの平均時間は7.7日ですが、2.3%の犬は歩くまで61日以上かかったという数字が出ています。
グレード4では約70%が14日以内に歩行、約8%が61日以上かかっています。歩行までの平均時間は約11日でした。
グレード5では回復率自体が52%と下がっています。
成功例の36%は14日以内、26%が15~30日以内、11%が2~6か月、3%が6~12か月で歩いたという報告でした。
参考
Dr Marianne Dorn, The Rehab Vet, North Herts, UK
(外部リンク)
上記のようにグレード5になると回復率も回復時間も低くなってしまいますが、グレードが重い柴犬がリハビリを行ったところ、術後26日目に歩行が正常になったという報告もあります。
治療をしてどれくらいで歩けるようになるかは犬によって違いがあるでしょう。
飼い主さんはぜひ愛犬のためのサポートを欠かさないようにしてあげてください。
参考
・四肢不全麻痺を呈し頸部椎間板ヘルニアと診断された犬の術後リハビリテーションの一例(外部リンク)
また、椎間板ヘルニアにかかっているあいだのお散歩は、獣医師さんの指示に従ってください。
お散歩しても問題ないと判断された場合も、ジャンプや走るなどのアクティブな行動は控えさせましょう。
犬の椎間板ヘルニアを
予防するには
椎間板ヘルニアはどんな犬も発症する可能性があります。
そして発症後、発見が遅れれば遅れるほど治療が困難な病気です。
絶対的な予防というのは難しいですが、抱っこの仕方などに注意して腰に負担をかけさせないなど、日頃から気を付けておくことが大切です。
具体的な予防策は、以下の通りです。
犬の椎間板ヘルニアの予防策
- 体を縦にして犬を抱っこしない
- 犬に無理な姿勢をさせない
- 適切な体重を維持する
- 足が滑りにくい飼育環境を整える
椎間板ヘルニアの予防は、とにかく腰への負担を避けることです。
たとえば犬の両脇や腕を支える縦抱きはNG。
このような抱き方は犬の腰に負担がかかってしまいます。
正しい抱っこの仕方は横向きに、床と水平になるようにすること。
犬の肩とおしりに手を入れて支えてあげましょう。
また、犬は太ってしまうと脊椎へ負担がかかるため、飼い主さんがしっかり体重管理をしてあげてください。
ほかに、室内飼いをしているなら部屋の環境も確認しましょう。
床がつるつるしているフローリングなどは、犬が滑りやすい素材です。
ラグやカーペットなどを敷いて滑らないように対策してあげましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは、犬の背中にある椎間板が脊髄を圧迫する病気です。
ダックスフンドなどは遺伝的に好発しやすいと言われていますが、発症リスクはどんな犬も同じ。
また、椎間板ヘルニアの症状はグレード1~5に分けられ、グレード1など初期症状の段階で発見できれば、改善率は高まります。
回復までの時間や歩けるようになるまで、犬によって期間はさまざま。ですが実際に回復したデータもあるので、ヘルニアになったからといってあきらめず、適切な治療も大切です。
また、椎間板ヘルニアを放置すると、「進行性脊髄軟化症」という合併症を起こして死に至る恐れもあるため危険です。
愛犬に異変がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
そして、抱っこの仕方や体重管理、室内の環境を整えるなど、普段できることから愛犬のために椎間板ヘルニア対策をしてあげてください。
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このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。