犬にとって膀胱炎は、決して珍しい病気ではありません。
さらに膀胱炎は、「なかなか治らない」「頻繁に症状がぶり返す」など、再発を繰り返しやすいともいわれています。
この記事では、膀胱炎を繰り返すときに考えられる原因や治療方法について紹介します。
目次
犬の膀胱炎の症状
犬の膀胱炎とは、細菌感染や結晶によって膀胱に炎症が起こり、排尿に支障が出る病気です。
膀胱炎を発症した場合は、以下のような症状がみられます。
- 繰り返しトイレに行く
- トイレに行くがほとんど排尿がない
- 排尿体勢になってから排尿までに時間がかかる
- 排尿時に鳴き声をあげる
- 尿に血液が混じっている
これらの症状は、残尿感や痛みを感じているために起こります。
血尿が出るなど明らかな異変だけでなく、おしっこがぽたぽた垂れる、普段しない場所でお漏らしするなど、今までと様子が違う場合は要注意です。
犬の膀胱炎は3つに分かれる
犬の膀胱炎は「無菌性」と「細菌性」に分かれますが、犬は「細菌性」の膀胱炎が多くみられます。
この「細菌性」の膀胱炎は、以下のとおり大きく3つのタイプがあります。
膀胱炎のタイプ | 特徴 |
---|---|
散発性膀胱炎 | 一般的によくみられる膀胱炎 |
無症候性細菌尿 | 尿に細菌はみられるが症状があらわれない膀胱炎 |
再発性膀胱炎 | 何度も繰り返す膀胱炎 |
このうち、膀胱炎を繰り返す場合には「再発性膀胱炎」が疑われます。
頻度の目安としては、「年に3回以上」もしくは「6ヶ月に2回以上」の症状が出るケースに診断されます。
参考
犬・猫の細菌性尿路感染症の診断管理に関する国際コンパニオンアニマル感染症学会(ISCAID)ガイドライン(外部リンク)
繰り返す膀胱炎は「再発性膀胱炎」かも
再発性膀胱炎は、別の病気や要因が隠れていることで、なかなか膀胱炎が治らない状態です。
そのため、膀胱炎の治療だけにとどまらず、原因となっている病気を根本的に治療する必要があります。
膀胱炎が治らない原因
症状が長引く、あるいは再発を繰り返す「再発性膀胱炎」は、大きく3つに分かれます。
再発性膀胱炎のタイプ | 特徴 | 考えられる原因 |
---|---|---|
再燃性タイプ | 数週間~数ヶ月以内に再発する | 感染場所が深くて薬が届きにくく、細菌の排除に失敗した |
難治性(持続性)タイプ | 細菌がなかなか消えない | 免疫の低下、投薬の失敗など |
再感染タイプ | 別の病原菌に再感染してしまう | 免疫の低下、薬の効果が尿中で喪失したなど |
膀胱炎がなかなか治らないのは、犬の免疫力が低下して感染しやすい体質になっていたり、投薬の効果が十分に得られていなかったりする可能性があります。
このほかにも、以下のような病気を併発していると、膀胱炎が続いてしまうケースもあります。
- 糖尿病
- 副腎皮質機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
- 慢性腎臓病
- 尿路・生殖器の異常
- 神経因性膀胱(尿失禁する状態)
こうした病気が疑われるときは、その病気に対する治療もあわせておこなう必要があります。
参考
細菌性尿路感染症の治療戦略(外部リンク)
繰り返す膀胱炎に対する治療方法
2回目以降の膀胱炎であっても、基本的には初めて発症したときの治療方法と同じで、「診断・検査→投薬治療→経過観察」という流れで進められます。
このなかで、使用するお薬を変更したり、さらに精密な検査により原因となっている別の病気を探したりといった追加の処置がおこなわれます。
診断・検査
膀胱炎を診断するために、まずは尿検査をおこなって細菌をチェックします。
同時に、尿石症の原因となるストルバイト結晶がないかどうかも観察されることがあります。
犬の尿検査は、次のような方法でおこなわれます。
尿検査の方法 | 具体的なやり方 |
---|---|
自然採尿 | 自然に排尿した尿を採取する |
圧迫採尿 | 膀胱を圧迫して採尿する |
カテーテル採尿 | カテーテルを挿入して採尿する |
膀胱穿刺 | 膀胱に注射器を刺して採尿する |
膀胱炎における尿検査では、最も無菌的に採尿できる「膀胱穿刺」が推奨されます。
また、こうした尿検査のほかにも、膀胱の状態や結石の有無を確認するため、レントゲン検査や超音波検査がおこなわれることもあります。
投薬治療
膀胱炎に対する投薬治療では、一般的に抗菌薬を使用します。
この抗菌薬には多くの種類があり、原因菌に合ったものでなければ効果は得られません。
そのため、検査によって菌に合う抗菌薬を特定したうえで、投薬するのが理想です。
ただし、急いで治療する必要があるときは、まずは膀胱炎に広く用いられる抗菌薬を投与して、検査結果に応じて感受性の高いお薬に変更する場合もあります。
経過観察
治療開始から5~7日後に再び尿検査をおこない、細菌がいるか観察します。
細菌がまだ存在する場合は、お薬が合っていないのか、投薬方法が適切ではなかったのかなど、改善しない原因を探ります。
その際に、ほかの病気が隠れている可能性についても、改めて検討されます。
繰り返す膀胱炎では、尿管や外陰部の異常などを含めて思いがけない病気が引き金になっていることもあるため、慎重に判断する必要があります。
膀胱炎の治療にかかる期間
一般的な膀胱炎では7~14日ほど治療がおこなわれ、このうち抗生物質を投与するのは7日間が目安です。
一方で、再発を繰り返す再発性膀胱炎の治療期間は4週間ほどが推奨されます。
治療開始後1週間で再検査をおこない、細菌がいなくなったか確認しながら治療を進めることになります。
膀胱炎は自然に治る?
膀胱炎を放っておくと、尿に膿が混じる膿尿(のうにょう)が出ることがあります。
さらに進行すると、細菌が腎臓や腎盂にまで広がって腎盂腎炎を引き起こし、腹痛や発熱、嘔吐などの全身症状があらわれ、やがては命に関わる危険な状態に陥りかねません。
自然治癒を待つうちに進行させてしまわないよう、早期治療を心がけましょう。
ちなみに、細菌がいても症状がない「無症候性細菌尿」というタイプの膀胱炎では、治療の必要はなく数日で自然に治ります。
ただし、このタイプの膀胱炎は症状があらわれないため、飼い主さんは気づかないケースがほとんどです。
膀胱炎の予防方法
愛犬を膀胱炎から守るためには、次のような点に注意してください。
- 水分をしっかり摂らせる
- 排尿しやすい環境を整える
膀胱炎を予防するには、水分をしっかり摂って、尿といっしょに菌をしっかり出せる状態をつくることが大切です。
いつでも新鮮な水を飲めるようにして、気兼ねなく排尿できる環境を整えてあげましょう。
とくに冬場は水を飲む量が減り、おしっこも少なくなるので注意が必要です。
ドライフードをふやかしたり、ウェットタイプに切り替えたりして、食事でも水分を摂れるように工夫してあげましょう。
膀胱炎で食べてはいけない食材はある?
膀胱炎の犬が避けるべき食べものは「お肉」です。
犬の尿は通常「弱酸性~中性」ですが、お肉を食べることで「アルカリ性」に傾きます。
アルカリ性になると結石ができやすくなり、膀胱炎が治りにくくなることがあるため注意が必要です。
膀胱炎が治らないのは別の病気の可能性も
膀胱炎がなかなか治らないのは、愛犬の体質などの問題のほか、膀胱炎以外の病気が隠れている可能性もあります。
慎重な検査でしっかりと原因を突きとめ、適切な治療をおこなうことが重要です。
もし治療が長引けば、思いがけず医療費が高額になってしまうことも少なくありません。
あまりに負担が大きくなるときは、費用を抑えるために通販でお薬を購入する方法もあります。
愛犬の繰り返す膀胱炎とうまく付き合っていくためにも、獣医師さんと相談しながら適切な治療をおこないましょう。
ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』スタッフのブログです。
このブログではペットのご飯を中心にペットの健康について考えたいと思います。