愛犬がアトピー性皮膚炎と診断された場合、ステロイド治療を提案されることがあります。
ただ「ステロイドを使用して本当に大丈夫?」と心配する飼い主さんは少なくありません。
この記事では以下の点について解説していますので、気になる方はご参考にしてください。
目次
ステロイドについて
ステロイドは犬の体内にある臓器、副腎(ふくじん)で作られるホルモンのことです。
このホルモンが持つ作用を薬として使用することで、様々な症状に対しての治療効果が期待できます。
ステロイドが持つ作用には、以下のものがあります。
ステロイドの持つ作用 | |
---|---|
抗炎症作用 | 炎症を促す物質の産生を抑える |
細胞増殖抑制作用 | 炎症反応を引きおこす細胞の増殖を抑える |
免疫抑制作用 | 抗体の産生を抑制、免疫の働きを弱める |
血管収縮作用 | 患部の血管を収縮させる |
ステロイドの副作用
犬にステロイドを使用した場合、以下の副作用が表れることがあります。
・多飲多尿
・腹部膨満
・肝臓が大きくなる
・毛が抜ける
・皮膚が薄くなる
・細菌に感染しやすくなる
・石灰沈着
・パンティング(息遣いが荒くなる)
・筋肉の虚弱
・糖尿病など
なお、副作用は治療する病気の症状や使用する量、期間によっても変わってきます。
参考
山口大学共同獣医学部臨床病理学分野(外部リンク)
長期使用は副作用のリスクが高い
ステロイドを使用した場合、短い期間や低用量使用する分には、副作用が表れる可能性は低いとされています。
一方で長期間の使用や高容量を使用する場合は、副作用があられるリスクは高くなります。
ステロイドを1か月使用した場合、約70%の症例で副腎予備能の低下がみれたという報告もあります。
ステロイドには免疫抑制作用があるため、感染症などにもかかりやすくなります。
参考
当院皮膚科を紹介受診した長期ステロイド治療犬における副作用と臨床検索成績の関係(外部リンク)
犬のステロイドの長期使用とはどのくらい?
犬のステロイドの長期使用とは、どのくらいの期間なのか気になりますよね。
それぞれの犬の症状と治療経過で期間は異なりますが、1か月~数か月以上の使用は長期使用に該当すると考えられています。
たとえばアトピー性皮膚炎の場合は生涯治療が必要となるため、ステロイドの使用も長期になることが多いです。
その場合はステロイドの使用量を減量するなど、調節することによって副作用が出ないようコントロールします。
犬にステロイドを使用すると副作用はいつまで続く?
ステロイドを使用している間は愛犬に副作用が表れたり、すでに表れている副作用が続くことがあります。
なお、短期間のステロイド使用中に副作用が表れた場合は、ステロイドの使用を止めることで、副作用が解消されることも多いです。
犬のステロイドの使用を途中でやめたらどうなる?
愛犬にステロイドを使用したことによって副作用が現れた場合、飼い主さんとしてはステロイドの使用を止めたくなると思います。
しかし、自己判断でステロイドの使用を止めたり、急に使用を中止してしまうと、治療していた症状の悪化や体の不調を引き起こし、最悪の場合は命に関わることもあります。
基本的にステロイドの使用は徐々に減薬・休薬するものであるため、使用途中で急に止めるのは避けましょう。
ステロイドは使用して大丈夫?
「愛犬にステロイドを使用して本当に大丈夫?」と不安になる飼い主さんは多くいます。
確かにステロイドは副作用がある治療薬です。
ただ、アトピー性皮膚炎などに対して有効な治療薬であるのも事実です。
獣医師の判断のもと、適切な使用量と期間を考慮しながらステロイド使用する分には、決して危険な薬ではありません。
ちなみにステロイドを治療に使用する場合は、どういう目的でどれくらいの期間使用するのかを、獣医師がちゃんと説明したうえで愛犬に投与してくれるかがとても重要です。
ちゃんとした説明がないまま闇雲にステロイドを使用することは危険であり、注意が必要です。
獣医師の考えに疑問を持ったり、治療方法について色々な意見を参考にしたいという場合は、セカンドオピニオンも選択肢の一つです
セカンドオピニオンはかかりつけの動物病院の診断や治療法について、別の動物病院の獣医師の意見を求めることです。
ステロイドの使用が不安な場合は、セカンドオピニオンによって他の獣医師の意見も参考に、かかりつけの獣医師と最良の治療方法について検討されてください。
ステロイドの副作用の対処法
ステロイドを使用している間は、基本的に副作用を避けるのは難しいです。
予防できない副作用も多いですが、中には対処できる副作用もあるため、対処法について紹介します。
肝臓の負担を減らすサプリを使用する
犬のステロイドによる肝臓への負担は、多量のステロイド使用によって引き起こされます。対処法としては、肝臓の負担をできるだけ減らすために、肝臓保護系のサプリなどを併用します。
粘膜保護剤を使用する
犬のステロイド使用による副作用、胃粘膜障害は対処法として粘膜保護剤やプロナミド(犬消化管運動機能改善剤)を併用します。
定期的に血糖値をモニターする
ステロイドを長期使用する場合、血糖値が上がりやすくなります。
対処法としては、定期的に血糖値をモニターすることにより、副作用の悪化などを早く察知できます。
ステロイド以外の治療薬について
「どうしてもステロイドの使用には抵抗がある」という飼い主さんもいらっしゃると思います。
その場合はステロイド以外の治療薬を選択できないか、獣医師に相談してみましょう。
ステロイド以外の治療薬には、以下のものがあります。
インターフェロン療法
免疫・炎症の調節などに作用するお薬で、アトピーの症状を緩和する効果が期待できます。
抗ヒスタミン薬
体の中でアレルギー症状を起こす、化学伝達物質ヒスタミンの作用を抑えて症状を改善するお薬です。
減感作療法
アレルギーの原因物質を特定し、意図的に体内に投与することでアレルギー反応に慣れさせ、症状を緩和する治療法です。
免疫抑制剤(シクロスポリン)
免疫抑制剤のシクロスポリンは、免疫に関わる血液中のT細胞の働きを阻害する免疫抑制作用により、自己免疫疾患の症状を抑えるお薬です。
分子標的薬(オクラシチニブ)
分子標的薬のオクラシチニブは、犬のアトピー性皮膚炎に伴う症状やアレルギー性皮膚炎のかゆみを緩和するお薬です。
まとめ
「ステロイドは副作用が出るから使いたくない」と考える飼い主さんは少なくありません。
ステロイドは使用すると、副作用が表れることがあるのは事実です。
ただ、長期・高用量の使用以外では、副作用が出る可能性は低いとされています。
ステロイドは犬のアトピー性皮膚炎をはじめ、さまざまな症状の治療に有効なお薬のため、治療に用いることを提案された場合は、獣医師に疑問点をしっかり聞き、納得したうえで使用の判断をしましょう。
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