犬の椎間板ヘルニアは、腰痛が起こる原因の中でも多いとされる病気です。
背中の骨を構成している椎骨の間にある「椎間板」が飛び出して、さらに奥にある脊髄を圧迫することで痛みが生じます。
また、ダックスフンドやトイプードル、コーギーなどの軟骨異栄養犬種は発症しやすいと言われています。
とはいえ椎間板ヘルニアは犬種関係なく発症する可能性がある病気。どんな犬でも油断はできません。
この記事では、椎間板ヘルニアの症状や原因、予防対策を解説しています。
ぜひ、愛犬の健康に役立ててください。
目次
抱っこで痛がったら注意!ヘルニアの脊椎版の初期症状
以下のような症状が見られる場合は、椎間板ヘルニアを発症している恐れがあります。
■犬の椎間板ヘルニアで見られる初期症状
・抱っこをすると痛がってキャンと鳴く
・歩けるが散歩を嫌がる
・階段の上り下りを避ける
・震える
・背中を丸めている
初期症状が出ていると、抱っこなどで痛がりますが、まだ四足歩行ができる状態。
病状が進行するにつれて足を引きずったり、歩行が困難になったりしてしまいます。
また、椎間板ヘルニアは重度になると痛みが麻痺するため、異変に早く気づくことが重要です。
犬の椎間板ヘルニアは、症状によってグレード1~5に分けられますが、治療は痛みのある初期の開始が望ましいと言われています。
早期発見できるためにも、グレードごとの症状を詳しく見ていきましょう。
グレード1の症状
グレード1の状態は、犬の椎間板ヘルニアの中で最も軽度です。
前の項目で説明した初期症状にように、抱っこをするとキャンと鳴く、背中を痛がるなどの様子が認められます。
グレード2の症状
グレード2も、犬の椎間板ヘルニアの中では、軽度と言われる状態です。
症状としては、すり足歩行やふらつきなどが見られますが、犬はまだ4本足で歩けます。
グレード3の症状
グレード3の症状は、犬の椎間板ヘルニアで重度に分類されます。
後ろ足を引きずる、歩けないなどの症状が認められる状態です。
このグレード3あたりから麻痺が起こり始め、痛みを感じなくなってきます。
グレード4の症状
グレード4になると自分で排尿することが困難になります。
前のグレードより症状は進行していますが、多少の感覚は残っているため、強い痛みや刺激などには反応が見られます。
グレード5の症状
グレード5になると完全に麻痺しているため、まったく痛みを感じません。
犬の椎間板ヘルニアの中で、最も重いとされる状態です。
回復率もかなり低く、時間の経過とともに神経へのダメージも深刻になっていきます。
犬の椎間板ヘルニアの原因は?
犬の椎間板ヘルニアには、さまざまな原因が挙げられます。
主な原因は、以下の通りです。
・激しい運動
・加齢
・外傷
・肥満
・遺伝
犬の椎間板ヘルニアが発症する原因は、加齢により椎間板が変性してしまったり、激しい運動や外傷で負担をかけてしまうこと。
また、体重の増加も椎間板に負担がかかるので、愛犬の体重管理にはじゅうぶん注意しましょう。
そして「遺伝」ですが、これは「軟骨異栄養犬種」と呼ばれる犬種は椎間板ヘルニアを発症しやすい、というものです。
次の項目で詳しく説明します。
椎間板ヘルニアになりやすい犬種
椎間板ヘルニアになりやすいとされるのは、遺伝的に軟骨異栄養症を抱えている犬種です。
軟骨異栄養犬種は、たとえばダックスフンド、コーギーやトイプードル、フレンチブルドッグやシーズーなどの胴が長い犬。
軟骨異栄養症を抱えている犬は、椎間板を形成する「髄核(ずいかく)」という物質が1~2歳のころから変性します。
これが原因で、4~6歳という比較的早いうちに椎間板ヘルニアを発症してしまうのです。
とはいえ軟骨異栄養症を抱えていない犬種も、椎間板ヘルニアの発症リスクはあります。
上記の犬種じゃないから安心ということはないので注意しましょう。
参考
・ミニチュアダックスフンドの胸椎椎間板ヘルニアに対する術後早期理学療法を実施した一例(第52回日本理学療法学術大会(千葉))(外部リンク)
犬の椎間板ヘルニアに気付かないでいるとどうなる?
犬の椎間板ヘルニアに気づかなかった場合、合併症として「進行性脊髄軟化症」を引き起こす恐れがあります。
進行性脊髄軟化症とは、脊髄が壊死する恐ろしい病気。
犬が発症すると1週間ほどで死に至り、早い場合は2~3日で死亡する可能性もあります。
手遅れの状態を避けるためにも、椎間板ヘルニアの初期症状には気付いてあげなければなりません。
犬の椎間板ヘルニアの治療方法は?
犬の椎間板ヘルニアの治療方法は、以下の通りです。
どちらの治療を用いるかは症状の程度や犬の健康状態によっても異なりますが、グレード1~2は内科治療、グレード3から外科治療の検討がされるようです。
また、椎間板ヘルニアへの治療の反応は発症からの時間が短いほど良いとされています。
異変に気付いたらすぐに動物病院で治療を受けましょう。
内科療法(ケージレストと薬の治療)
内科療法では犬を安静にさせながら、ステロイド剤や非ステロイド剤などを用いて炎症を抑えます。
症状によっては、安静にする際にケージレストが必要になる場合もあります。
ケージレストとは、運動を制限して安静を管理する手段のひとつ。
トイレなど最低限の動き以外は、犬の椎間板が安定するまで体長の1.5倍ほどのゲージの中で安静にさせます。
ケージレストの目的は、病状を悪化させないために犬の動きを制限すること。
もちろん状況によってですが、安静にさせる期間は2~6週間ほどが目安です。
しかし、シニア犬の場合は長期でおこなうと関節が固まったり筋肉が衰えたりして危険なので、短期間にすることも多いようです。
また、椎間板ヘルニアの痛みを抑える犬のお薬は、非ステロイド系の「メタカムチュアブル」や、「プレビコックス」などがあります。
ぽちたま薬局でも犬用の痛み止めのお薬を複数取り扱っているので、補充などの際はお役立てください。
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外科治療(外科手術)
椎間板ヘルニアの外科治療には、手術が用いられます。
手術は、圧迫している椎間板物質を取り除くための方法です。
ただ、手術をすれば絶対に治るというわけではありません。
治療が遅れた場合や、病状が重度のケースでは、回復できない可能性もあります。
犬の椎間板ヘルニアを予防するには
椎間板ヘルニアはどんな犬も発症する可能性があります。
そして発症後、発見が遅れれば遅れるほど治療が困難な病気です。
絶対的な予防というのは難しいですが、抱っこの仕方などに注意して腰に負担をかけさせないなど、日頃から気を付けておくことが大切です。
具体的な予防策は、以下の通りです。
- 体を縦にして犬を抱っこしない
- 犬に無理な姿勢をさせない
- 適切な体重を維持する
- 足元が滑りにくい飼育環境を整える
椎間板ヘルニアの予防は、とにかく腰への負担を避けることです。
たとえば犬の両脇や腕を支える縦抱きはNG。
このような抱き方は犬の腰に負担がかかってしまいます。
正しい抱っこの仕方は横向きに、床と水平になるようにすること。
犬の肩とおしりに手を入れて支えてあげましょう。
また、犬は太ってしまうと脊椎へ負担がかかるため、飼い主さんがしっかり体重管理をしてあげてください。
ほかに、室内飼いをしているなら部屋の環境も確認しましょう。
床がつるつるしているフローリングなどは、犬が滑りやすい素材です。
ラグやカーペットなどを敷いて滑らないように対策してあげましょう。
犬の椎間板ヘルニアについてのQ&A
犬の椎間板ヘルニアに関する、よくある質問をまとめました。
ぜひ、参考にしてください。
椎間板ヘルニアの間は犬を抱っこしたらいけないの?
犬が椎間板ヘルニアになっている間も抱っこはできますが、慎重におこないましょう。
椎間板ヘルニアを発症しているとき、首の下とお尻を両手で包むように下からすくいあげて、背骨に負担がかからないような抱っこが理想的です。
また、タオルなどに乗せて運ぶのもいいですね。
椎間板ヘルニアの間は犬のお散歩はしたらいけないの?
犬が椎間板ヘルニアの間にお散歩できるかは、症状のグレードによって異なります。
発症しているから絶対にダメ、というわけではありません。
しかし、基本的にお散歩は獣医師さんの指示に従ってください。
また、お散歩しても問題ないと判断された場合も、ジャンプや走るなどのアクティブな行動は控えさせましょう。
犬の椎間板ヘルニアは治る?
犬の椎間板ヘルニアが治るかは、1~5に分類されるグレードによっても異なります。
グレード1~2の段階で治療できれば8~9割は回復するため、安静と適切な治療で完治が見込める場合もあるでしょう。
しかし、グレード3からは内科治療で回復の見込みがあるものの、外科治療も検討される段階です。
また、グレード5は改善率がさらに低くなり、外科治療でも50%ほどと言われています。
椎間板ヘルニアが治るかどうかは気づいたタイミングや症状によって異なるので、確実なことは言えません。
改善率は発症から早ければ早いほど高まるので、異変があればすぐに動物病院を受診しましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは、犬の背中にある椎間板が脊髄を圧迫する病気です。
ダックスフンドなどは遺伝的に好発しやすいと言われていますが、発症リスクはどんな犬も同じ。
また、椎間板ヘルニアの症状はグレード1~5に分けられ、グレード1など初期症状の段階で発見できれば、改善率は高まります。
椎間板ヘルニアを放置すると、「進行性脊髄軟化症」という合併症を起こして死に至る恐れもあるため危険です。
愛犬に異変がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
そして、抱っこの仕方や体重管理、室内の環境を整えるなど、普段できることから愛犬のために椎間板ヘルニア対策をしてあげてください。
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