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犬のフィラリア症(犬糸状虫症)について

フィラリアとは線虫の一種です。
線虫は線形動物と呼ばれる、糸のように細長い動物です。
線虫は数多くの種類があり、人や動物に寄生する線虫もいます。

その中でも犬に寄生する犬糸状虫とも呼ばれる線虫によって引き起こされる感染症が、犬のフィラリア症です。
この記事では、犬のフィラリア症について詳しく解説します。

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犬のフィラリア症(犬糸状虫症)について

犬のフィラリア症(犬糸状虫症)

フィラリア症は蚊を媒体にして、犬の肺動脈や心臓にフィラリア(犬糸状虫)が寄生することで起こる病気です。

フィラリアが多数寄生することで血流が滞ったり、臓器に障害が起こるなどの悪影響を及ぼし、治療しなければ死に至ることもある怖い病気です。

参考
犬糸状虫症│公益社団法人 日本獣医師会(外部リンク)

フィラリアの感染サイクル

フィラリアは、蚊を通じて犬の体内に入り込みます。

蚊がフィラリアに感染した動物の血を吸うと、血液とともに「ミクロフィラリア(L1)」というフィラリアの幼虫が蚊に宿ります。

そしてフィラリアの幼虫は蚊の体内でL1→L2→L3という成長ステージ(2~3週間)を経て感染能力を獲得します。
その蚊が再び犬を吸血すると、蚊の唾液とともに犬の体内に感染幼虫(L2~L3)が侵入します。

感染幼虫はすぐに血管を目指さず、一旦犬の皮下組織や筋肉で脱皮し、移行幼虫(L4)を経て、血管内に侵入できる能力を持った未成熟虫(L5)へと成長します。

血管内に侵入した未成熟虫(L5)は血流に乗って心臓や肺動脈まで移動します。そこで6ヶ月かけて成虫に成長し、成虫の雌雄がいれば交尾してミクロフィラリア(L1)を産みます。

犬がフィラリアに感染する確率

犬のフィラリア症は薬で予防できますが、フィラリア予防を行っていない期間が長ければ長いほど感染確率は高くなります。

フィラリア予防をしていない期間が1年間の場合は38%、2年間で89%、3年間で92%という高い感染率です。

1回でも予防薬の投与を忘れたり、十分な量の薬を投与していなかったりすると、フィラリアに感染してしまう可能性があります。

フィラリアは人間にもうつる?

犬のフィラリア症を引き起こすフィラリアは、人に感染することもあります。
しかし人に感染してもほとんどの場合、無症状で自然治癒します。

ただし、犬に寄生するフィラリア(犬糸状虫)とは別のリンパ系フィラリア症に感染した場合は、深刻な症状が現れます。

参考
リンパ系フィラリア症 – 16. 感染症 – MSDマニュアル家庭版(外部リンク)

犬のフィラリア症で起こる症状

犬がフィラリア症になると、以下の症状があらわれます。

・乾いた咳が出る
・食欲が乏しくなる
・元気がなくなってくる
・お腹が膨らんでくる
・散歩、運動を嫌うようになる

フィラリアに感染してもすぐに症状は現れず、しばらくは無症状の状態が続きます。
そして数年の潜伏期間の後、深刻な症状が現れることが多いです。

なお、犬のフィラリア症の症状には初期症状と末期症状があります。
それぞれの症状の詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

参考
犬感染症とその診断薬の概説 5犬糸状虫症(外部リンク)

フィラリアの検査

フィラリア予防薬を投与開始前に、必ずフィラリアに感染していないことを確認する必要があります。

検査が必要な理由は、もしフィラリアに感染している状態で予防薬を投与すると、心臓や肺にいるフィラリアの幼虫が大量に死滅し、犬がショック症状を起こす可能性があるためです。

検査は、動物病院で血液検査をして判別が可能です。
検査では幼虫、成虫からミクロフィラリアの判別までさまざまですが、費用は数千円となります。

AHS(米国フィラリア協会)では、7ヶ月齢以上のすべての犬に対して、年に1回の抗原検査とミクロフィラリア検査の両方を行うことを推奨しています。

フィラリア検査の方法や各検査にかかる費用は、以下の記事で詳しく紹介しています。

参考
犬における犬糸状虫感染症の予防・診断・治療 最新ガイドライン│AHS(外部リンク)

犬フィラリア症の治療方法

もし犬がフィラリア症に感染した場合、以下のような治療を行います。
いずれの治療においても、フィラリア症の進行具合によって変化します。

・外科手術
血管から細い管を入れてフィラリアの成虫を摘出。
ただし、手術自体は困難なケースが多い。

・長期間の予防薬投与
通常の予防薬を数年かけて投与していく方法。
体内の成虫が少ない場合に用いられる。

・対症療法
薬や手術に耐えきれないと判断した際に選択される方法。
咳を抑える、腹水を抜くなど、その時の犬の状態に合わせて行われる。

犬フィラリア症の治療方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>犬のフィラリア予防の詳細はこちら

フィラリアの予防方法

フィラリアを確実に予防する方法は、フィラリア予防薬を投与することです。
フィラリア予防薬を月に1 回、正しく投与できていれば、完全に予防できます。

ただし、注意点として以下が挙げられます。

・犬の体重により投与量が変化するので、犬の体重に合ったフィラリア予防薬を使う必要がある。
・適切な時期にフィラリア予防薬を投与していない、投与し忘れがある場合、感染する可能性がある。

フィラリア予防薬を飲ませていない場合のリスクや飲み忘れた時のリスク、飲み忘れを防ぐ方法については以下の記事で紹介しています。

フィラリア予防薬は投与することで、犬の体内に入ったフィラリアの幼虫を死滅・駆除ができます。

フィラリア予防薬の種類と特徴は、主に以下のものが挙げられます。

種類 特徴
チュアブル(おやつタイプ) おやつタイプで与えやすいが、価格が高い。
スポットオン(滴下) 体に垂らすだけなので楽に使える。
乾燥までに時間が必要。
錠剤 フィラリアの予防に特化している。
錠剤のため、薬を嫌がる犬もいる。
注射 年に1回の注射で予防できる。
子犬や成長期の犬には使えないなど、注射できる犬に制限がある。

薬によって駆除・予防できる効果も異なり、動物病院によっても扱っている薬や値段が異なります。
どの薬がいいか迷う場合は、獣医師に相談するといいでしょう。

フィラリア予防薬の選び方や各商品の特徴、値段については、以下の記事で詳しく解説しています。

また、フィラリアの予防注射については以下の記事で紹介していますので、気になった方は参考になさってください。

フィラリア予防薬の副作用

フィラリア予防薬には、主に以下の副作用があります。

・飲み薬(チュアブル、錠剤)の副作用:吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢など

・スポットオン(滴下)の副作用:投与部位の炎症、脱毛など

・フィラリア予防注射の副作用:アナフィラキシーショック など

医薬品には副作用はつきものですが、犬によって差は生じますので、獣医師と相談のうえお使いください。

また、コリー系の犬種はフィラリア予防薬に含まれる成分が原因で、副作用を起こすケースがあります。

コリー犬種に使用できるフィラリア予防薬については、以下の記事で紹介しています。

フィラリア予防薬の投与期間

フィラリアは蚊を介して感染しますので、投与期間は「蚊の発生から1ヶ月後」から
「蚊がいなくなって1ヶ月後まで」となります。

蚊の発生はお住まいの地域によって異なりますので、目安として「蚊は気温15℃から血を吸い始める」と覚えておくとよいでしょう。
ちなみにAHS(米国フィラリア協会)では、フィラリア予防薬は通年投与が推奨されています。

各地域の投与期間については以下の記事で確認できますので、参考になさってください。

フィラリア予防薬の値段

フィラリア予防薬には、およそ以下の費用がかかります。

(2.5kg以下の子犬の場合)
・チュアブル(おやつ):1回約1,000円
・スポットオン(滴下):1回約1,300円

投与回数は月に1回投与で、年8回ほどです。
この他にも動物病院では、検査や診察料などもかかります。

まとめ

・フィラリアは線虫の一種であり、犬に寄生するのは犬糸状虫。
・犬がフィラリアに寄生されることで起こる感染症が犬のフィラリア症
・感染してもしばらくは無症状、後に深刻な症状が現れる
・フィラリアは予防しなければ感染確率が上がり、命にも関わる
・フィラリアの予防方法はフィラリア予防薬を投与すること
・フィラリア予防薬を正しく投与すればフィラリアは100%防げる

犬のフィラリア症は予防が何より大事です。
獣医師と相談しながら、愛犬に負担のないやり方でフィラリア予防を行いましょう。

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