愛犬にてんかん薬を飲ませているのに発作が起こると、「薬が効いていないのでは?」と不安になる飼い主さんも多いでしょう。
しかし、てんかん薬を飲んでいても発作が起こることはあり、発作が起きたからといって、必ずしも薬が効いていないとは限りません。
一方で、発作の回数が増えた、以前より発作が長くなったなどの変化がある場合は、薬の量や血中濃度などを確認し、治療を見直す必要があります。
この記事では、犬のてんかん薬が効かないと感じる原因をはじめ、発作が続く場合の対処法や主なてんかん薬、治療効果の判断方法について解説します。
目次
犬のてんかん薬が効かないと感じる原因

てんかん薬を飲んでいても発作が起こることはあり、「発作が起きた=薬が効いていない」とは限りません。
犬のてんかん治療では、発作を完全になくすことだけではなく、発作の回数を減らしたり、症状を軽くしたりしてコントロールすることも重要です。
そのため、薬を飲み始める前と比べて発作の頻度や持続時間、症状の程度などが改善していれば、薬の効果が得られている可能性があります。
一方で、発作の回数が増えている、症状が強くなっているなどの場合には、以下のような原因が考えられます。
- 薬の血中濃度が十分に上がっていない
- 薬の量が愛犬に合っていない
- 薬を飲み始めてから十分な時間が経っていない
- 薬の飲み忘れや投薬時間のズレ
- てんかん以外の病気が関係している
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
薬の血中濃度が十分に上がっていない
てんかん薬を正しく飲ませていても、血液中の薬の濃度(血中濃度)が十分でなければ、期待する効果が得られないことがあります。
薬の吸収や代謝には個体差があるため、同じ体重・同じ量を服用していても、血中濃度は犬によって異なります。
そのため、ゾニサミドやフェノバルビタールなどでは、必要に応じて血液検査で血中濃度を測定し、薬が適切な濃度に保たれているか確認します。
発作が十分にコントロールできていない場合は、血中濃度や発作の状態などを確認したうえで、獣医師が投与量を調整することがあります。
参考
International Veterinary Epilepsy Task Force consensus proposal: medical treatment of canine epilepsy in Europe(外部リンク)
ACVIM Consensus Statement on the management of status epilepticus and cluster seizures in dogs and cats(外部リンク)
薬の量が愛犬に合っていない
てんかん薬は、一般的に体重をもとに投与量を決めますが、実際の効き方には個体差があります。
そのため、治療開始後は発作の状態や副作用、必要に応じて血中濃度などを確認しながら、その犬に適した投与量へ調整します。
薬を飲ませていても発作が増えている場合などは、現在の投与量では十分な効果が得られていない可能性があります。
ただし、てんかん薬を自己判断で増量すると副作用や中毒につながる恐れがあるため、必ず獣医師に相談してください。
薬を飲み始めてから十分な時間が経っていない
てんかん薬は、飲ませてすぐにすべての発作を抑えられるとは限りません。
薬によっては、服用を続けて血中濃度が安定してから効果を評価する必要があります。
また、発作の状態を確認しながら、少しずつ投与量を調整することもあります。
そのため、飲み始めて間もない時期に発作が起きても、それだけで「薬が効いていない」と判断することはできません。
いつ頃から治療効果を判断できるかは使用する薬によって異なるため、獣医師の指示どおりに投薬を続けましょう。
薬の飲み忘れや投薬時間のズレ
てんかん薬は、決められた量と間隔を守って継続的に飲ませることが大切です。
飲み忘れたり、投薬時間が大きくズレたりすると、薬の血中濃度が低下して発作が起こりやすくなる可能性があります。
また、飲み忘れに気づいても、自己判断で次の投薬時に2回分をまとめて与えてはいけません。
飲み忘れた場合の対応は薬によって異なるため、事前に獣医師へ確認しておくと安心です。
てんかん以外の病気が関係している
犬のけいれん発作は、必ずしも「てんかん」だけが原因で起こるわけではありません。
脳炎や脳腫瘍など脳そのものの病気のほか、低血糖や中毒、肝臓・腎臓の異常などが原因となって発作が起こることもあります。
てんかん薬を適切に使用しているにもかかわらず発作が続く場合には、血液検査や神経学的検査、MRIなどを行い、ほかの病気が隠れていないか調べることがあります。
なお、てんかんと診断されている犬では、ストレスや生活環境の変化などが発作のきっかけになる可能性もあります。
犬のてんかん発作が起こる原因やストレスとの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のてんかん薬が効かない場合はどうする?

てんかん薬を飲ませていても発作が十分にコントロールできない場合は、現在の治療内容を見直すことがあります。
主な対応としては、以下のような方法があります。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 薬の量を調整する | 発作の状態や副作用、血中濃度などを確認しながら投与量を調整する |
| 別の薬に変更する | 十分な効果が得られない場合や副作用が強い場合などに、ほかのてんかん薬への変更を検討する |
| 複数の薬を併用する | 1種類の薬だけでは発作を十分に抑えられない場合に、作用の異なる薬を追加することがある |
| 原因を再検査する | 薬を調整しても発作が続く場合は、脳炎や脳腫瘍など別の原因がないか再評価することがある |
1種類の薬だけでは十分に発作を抑えられない犬もいるため、治療効果を確認しながら薬の追加や変更を検討します。
ただし、自己判断で増量・変更するのは危険です。
必ず獣医師に相談してください。
犬のてんかんに使われる主な薬

犬のてんかん治療では、発作の状態や副作用、持病などを考慮しながら、その犬に適した抗てんかん薬を選択します。
1種類の薬で発作を十分にコントロールできない場合には、投与量を調整したり、別の薬への変更や複数の薬の併用を検討したりすることもあります。
犬のてんかんに使われる主な薬は、以下のとおりです。
- ゾニサミド(コンセーブ)
- フェノバルビタール
- レベチラセタム(イーケプラ)
- 臭化カリウム
犬のてんかんに使われる薬について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
ゾニサミド(コンセーブ)
ゾニサミドは、犬のてんかん発作を抑えるために使用される抗てんかん薬で、犬用医薬品「コンセーブ」の有効成分です。
治療中は発作の状態や副作用などを確認し、必要に応じて血中濃度を測定しながら投与量を調整します。
ゾニサミドの効果や使い方について詳しく知りたい方は、以下の商品ページをご覧ください。
フェノバルビタール
フェノバルビタールは、犬のてんかん治療に古くから使用されている抗てんかん薬です。
長期的に使用する場合は、血中濃度の測定に加えて、肝臓への影響を確認するため定期的な血液検査が必要になることがあります。
レベチラセタム(イーケプラ)
レベチラセタムは、人の抗てんかん薬「イーケプラ」の有効成分で、犬のてんかん治療にも使用されることがあります。
単独で使用するほか、ゾニサミドやフェノバルビタールなど、ほかの抗てんかん薬だけでは発作を十分にコントロールできない場合に併用されることもあります。
レベチラセタムの効果や使い方について詳しく知りたい方は、以下の商品ページをご覧ください。
臭化カリウム
臭化カリウムは、犬のてんかん治療に使用される薬のひとつです。
単独で使用するほか、ほかの抗てんかん薬で発作を十分にコントロールできない場合に併用されることもあります。
臭化カリウムは体内から排出されるまでに時間がかかるため、効果が安定するまで時間を要することがあります。
そのため、治療中は発作の状態や血中濃度などを確認しながら使用します。
てんかん薬が効いているかは発作の回数や状態から判断

「薬を飲んでいるのに発作が1回起きた」という事実だけでは、薬が効いているかどうかは判断できません。
薬を飲んでいても発作が起こることはあるため、投薬を始める前と比べて、発作の回数や持続時間、症状の程度などがどのように変化したかを確認することが大切です。
たとえば、以下のような変化がみられれば、薬によって発作をコントロールできている可能性があります。
- 発作が起こる回数が減った
- 発作が続く時間が短くなった
- けいれんなどの症状が軽くなった
- 発作後、普段の状態に戻るまでの時間が短くなった
一方、「何回発作が起きたら薬が効いていない」と一概に判断することはできません。
治療効果を確認するためにも、発作が起きた日時や回数、持続時間、症状、発作後の様子などを記録しておきましょう。
可能であれば発作中の様子を動画で撮影しておくと、獣医師が発作の状態を把握し、今後の治療方針を検討する際にも役立ちます。
発作の回数が増えた、以前より長く続くようになったなどの変化がみられた場合は、記録した内容を持参して動物病院へ相談してください。
犬のてんかん薬は自己判断でやめない

てんかん薬を飲み始めて発作が落ち着いてくると、「もう薬をやめても大丈夫なのでは?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、発作が起きていないからといって、てんかんそのものが治ったとは限りません。
薬によって発作が抑えられている可能性もあります。
自己判断で薬を急にやめたり、投与量を減らしたりすると、発作が再発・悪化する恐れがあります。
犬のてんかんでは長期間にわたって薬を飲み続けるケースも多いため、発作が起きていない状態が続いていても、獣医師の指示どおりに投薬を続けることが大切です。
薬の減量や中止を検討する場合も、必ず獣医師に相談し、愛犬の状態を確認しながら慎重に進めましょう。
よくある質問

犬のてんかん薬の効果や服用期間、副作用などについて、よくある質問に回答します。
犬のてんかん薬はどのくらいで効果が出る?
てんかん薬の効果が安定するまでの期間は、使用する薬によって異なります。
飲み始めてすぐに発作が起きても、それだけで「薬が効いていない」とは判断できません。
獣医師の指示どおりに投薬を続け、発作の経過を確認しましょう。
犬がてんかん薬を飲まないとどうなる?
てんかん薬の飲み忘れや自己判断による中断は、発作の再発や悪化につながる可能性があります。
薬を飲まない場合のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のてんかん薬はいつまで飲む?
犬のてんかんでは、長期間にわたって薬を飲み続けるケースが多く、生涯にわたり投薬が必要になることもあります。
減量や中止が可能かどうかは治療経過によって異なるため、発作が起きていない場合でも自己判断で投薬を中止せず、獣医師に相談してください。
犬のてんかん薬にはどんな副作用がある?
てんかん薬では、眠気やふらつき、食欲の変化、嘔吐・下痢などの副作用がみられることがあります。
薬の種類ごとの副作用や長期服用による影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
高齢犬のてんかんは薬が効きにくい?
高齢犬だからという理由だけで、てんかん薬が効きにくくなるとは限りません。
ただし、高齢になって初めて発作を起こした場合は、脳腫瘍や脳炎などが原因となっている可能性もあります。
薬を飲んでも発作が続く場合は、発作の原因についても獣医師に相談しましょう。
てんかん薬を飲んでいても発作が起きることはある?
てんかん薬を飲んでいても、発作が起きることはあります。
薬を飲み始める前より発作の回数が減った、持続時間が短くなったなどの変化があれば、薬によって発作をコントロールできている可能性があります。
反対に、発作が増えたり長くなったりしている場合は、治療の見直しが必要になることがあるため、動物病院へ相談してください。
まとめ

犬にてんかん薬を飲ませていても発作が起こることはあり、発作が起きたからといって、必ずしも薬が効いていないとは限りません。
てんかん治療では、発作を完全になくすことだけでなく、発作の回数や持続時間、症状の程度を減らし、できるだけ穏やかな生活を送れるようにコントロールすることも大切です。
薬を飲ませているのに発作が増えた場合は、血中濃度や投与量、飲み忘れ、ほかの病気などが関係している可能性があります。
発作の日時や回数、持続時間などを記録し、獣医師と相談しながら愛犬に合った治療方法を探していきましょう。
また、自己判断で薬を増減・中止するのは避けてください。
発作が長く続く、短時間に何度も繰り返すなど、いつもと違う様子がみられる場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。

ぽちたま薬局のライターです。
実家では猫を飼っています。
これまでに犬やインコ、ウーパールーパーなど、動物に囲まれて暮らした経験があります。









