獣医師から「心臓が少し大きくなっています」と診断された時。
「うちの子はあと何年一緒にいられるの?」と心配になる飼い主さんは少なくありません。
心臓肥大はすぐに命に関わる状態ではありませんが、進行すると余命に影響することがあります。
一方で、適切なタイミングで治療を始めることで、愛犬と一緒にいられる時間を延ばせる可能性があります。
この記事では、心臓肥大のステージごとの余命の目安、余命を延ばす鍵となる投薬のタイミング、治療を長く続けるために、費用の負担を減らす方法について解説します。
目次
心臓肥大の進行ステージと余命の目安

犬の心臓肥大は症状の有無や、心不全の状態によって進行のステージが分けられます。
ステージが進むほど余命の目安は短くなる傾向にあります。
なお、どの段階で治療を始めるかによって、経過は大きく変わってきます。
ステージB2の余命
心臓の左側が大きくなっていることが確認できるものの、咳や呼吸の乱れといった心不全の症状はまだ出ていない段階がステージB2です。
このB2の段階で治療を開始することが、重要なタイミングとなります。
海外で行われた臨床試験では、ステージB2の心拡大が確認された犬に強心薬「ピモベンダン」の投与を始めたところ、投与しなかった犬に比べて、心不全の症状が出るまでの期間を約15か月遅らせたと報告されています。
この試験結果からわかるように、症状がないうちから備えることが大切です。
参考(外部リンク)
前臨床期の粘液腫性僧帽弁疾患および心肥大を有する犬におけるピモベンダンの効果:EPIC試験-無作為化臨床試験
ステージCの余命
咳・疲れやすさ・呼吸が荒いなど心不全の症状が実際に現れてくるのがステージCです。
この段階になると、強心薬に利尿薬や血管拡張薬を組み合わせた治療が必要になります。
海外の臨床試験では、心不全を発症した犬にピモベンダンを含む治療を行ったグループの生存期間の中央値は、約267日(約9か月)でした。
比較対象となった薬のみのグループ(約140日)よりも生存期間が長いという結果が出ています。
また、複数の薬を組み合わせて治療を続けた犬では、生存期間の中央値が430日(約1年2か月)に達したとするデータもあります。
ステージCでも治療の内容や継続状況によっては、1〜2年以上一緒に過ごせるケースも少なくありません。
参考(外部リンク)
自然発生性の粘液腫性僧帽弁疾患によるうっ血性心不全の犬におけるピモベンダンまたは塩酸ベナゼプリルの効果:QUEST試験
ステージDの余命
ステージDは、治療を続けても十分な効果が得られにくくなってくる段階です。
余命については個体差がありますので一概にはいえませんが、数か月から1年未満となるケースが多いとされています。
治療の目標も病気を治すことより、つらい症状を和らげて、穏やかに過ごせる時間を増やすQOL(生活の質)維持に重点が置かれるようになります。
この時期は獣医師とこまめに相談しながら、愛犬に合ったケアを行うことが大切です。
無治療と治療した場合の差
心不全の症状が出ているのに十分な治療を受けられなかった犬は、症状が急速に悪化しやすいことが知られています。
投薬のみで経過をみていた時期の報告によると、心不全の症状が出てから9か月後の生存率は50%程度だったとするデータもあります。
一方、治療をしていたグループでは生存期間の中央値が約9か月、複数の薬を組み合わせた治療では1年を超える生存期間が報告されています。
治療しなかった場合と治療した場合、そして治療内容によって経過は大きく変わります。
今は「心臓が大きい」と言われた段階であっても、早めに治療を始めて継続することで、愛犬と一緒にいられる時間を守ることができます。
犬の心臓肥大(心拡大)

犬の心臓肥大(心拡大)は、レントゲンやエコー検査で、心臓が大きくなっていると指摘される状態です。
多くの場合、僧帽弁閉鎖不全症が原因として挙げられます。
僧帽弁閉鎖不全症になると、心臓の中で血液の逆流を防ぐ僧帽弁が加齢とともに変性して、うまく閉じなくなることで血液が逆流し、心臓に負担がかかって膨らんでしまいます。
心雑音がきっかけで発見されることが多く、心臓が大きいと言われて、初めて僧帽弁閉鎖不全症を知るケースも少なくありません。
心臓肥大になりやすい犬種・年齢
心臓肥大の原因となる僧帽弁閉鎖不全症は、チワワ、マルチーズ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど、小型犬の中高齢犬に多くみられる病気です。
犬が心臓病を発症するのは6歳を過ぎたころから急激に上昇し、10歳を超えると10%以上、12歳では20%近くにまで達するとされています。
中でもチワワは12歳時点で約40%、マルチーズやキャバリアはそれ以上とも言われています。
小型犬の飼い主さんは、意識しておきたい病気だといえるでしょう。
心臓肥大の症状のサイン
心臓肥大の初期は、ほとんど症状が現れないことが多いです。
そのため、健康診断や他の病気の検査中に偶然見つかることも珍しくありません。
けれど進行するにつれて、次のようなサインが見られるようになります。
- 散歩の途中で座り込む、疲れやすくなる
- 「カッカッ」という乾いた咳が増える
- 呼吸が速い、または苦しそうにしている
- 以前より運動を嫌がるようになる
年齢によるものと見過ごされがちなサインも多いため、少しでも気になる変化があれば、なるべく早く動物病院で相談することをおすすめします。
余命を延ばす鍵は心拡大の段階からの投薬

心臓肥大の余命を考えるうえで鍵となるのは、いつから治療を始めるかです。
症状が出てから慌てて治療を始めるのではなく、ステージB2のうちから投薬を開始することが、余命を延ばすことにつながります。
「症状がないのに薬を飲ませるの?」と心配される飼い主さんも多いのですが、心臓が大きくなり始めた段階での投薬こそが、心不全の発症を遅らせるためにも重要です。
心臓肥大の主な治療薬
ステージB2からの治療でよく使われるのが、強心薬「ピモベンダン」です。
ピモベンダンには、心臓の収縮力を高めて血液の循環を助ける強心作用と、血管を広げて心臓への負担を軽くする血管拡張作用の2つの働きがあります。
症状がまだ現れていない心拡大の段階からピモベンダンの投与を始めることで、心不全の症状が出るまでの期間を遅らせ、生存期間を延ばせる可能性があることが報告されています。
なお、ピモベンダンはあくまで治療薬の一つです。
ステージCに進行して心不全の症状が現れると、ピモベンダンのような強心薬に加えて、以下のお薬を組み合わせた治療が行われます。
- 体内の余分な水分を排出し、肺に水が溜まるのを防ぐお薬
- 血管を広げて心臓への負担を軽減するお薬
どの薬を治療に用いるかは、愛犬の状態や進行ステージに応じて獣医師が判断します。
獣医師の指示に従って、処方されたお薬で治療していきましょう。
参考(外部リンク)
動物用医薬品 犬用慢性心不全用ピモベンダン製剤
お薬が高くて継続が辛いときは

治療の基本は、かかりつけの動物病院での診察と処方されたお薬を継続することです。
定期的な検査で状態を確認しながら、獣医師の指示のもとで投薬を続けることが愛犬の余命を守ることにつながります。
そのうえで、長期にわたる投薬費用の負担が重く、治療の継続が難しいと感じたときには、個人輸入を活用するのも選択肢の一つです。
動物病院で処方されるお薬と同じ有効成分を含むお薬は、個人輸入で購入できるものもあります。
個人輸入は病院で購入するよりも価格が抑えられている商品が多く、自宅に届けてもらえるため、通院の手間や診察費がかからないというメリットもあります。
お薬の切り替えについて心配な場合は、かかりつけの獣医師に相談してご検討ください。
なお、個人輸入をお考えの場合は届くまでに2週間以上かかる場合があるので、手元のお薬に余裕があるうちにご利用ください。
まとめ
心臓肥大はステージが進むにつれて、余命の目安も短くなっていきます。
その一方で、症状が出る前(心拡大)の段階から治療を始めて投薬を続けることで、余命を延ばせる可能性が複数の研究で報告されています。
症状はないからまだ大丈夫と先延ばしにはせず、愛犬の大切な命と時間を守るために、治療を開始する時期や治療方法について、獣医師にご相談ください。

実家で猫を保護したことをきっかけに猫の魅力に陥落。
猫に負けず劣らず犬にもメロメロ。
愛猫とゴロゴロしながらお茶を飲むのが一番の幸せ。








