バナナは猫に与えて問題ありません。皮をむいて、細かくして、少量なら大丈夫です。
ただしカリウムが多いため、腎臓病の猫には自己判断で与えないでください。
「バナナのセロトニンで猫がしあわせになる」という話がありますが、これは誤りです。食品のセロトニンは脳には届きません。

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猫にバナナを与えていい量
世界小動物獣医師会(WSAVA)は、おやつや主食以外の食べ物を1日に必要なカロリーの10%未満に収めることを推奨しています。
日本食品標準成分表(八訂・増補2023年)によると、バナナ(生)は可食部100gあたり93kcalです。
| 体重別・1日の上限 | ||
|---|---|---|
| 体重 | バナナ | 輪切り |
| 3kg | 約21g | 2切れ |
| 4kg | 約26g | 2〜3切れ |
| 5kg | 約30g | 3切れ |
| 6kg | 約35g | 3〜4切れ |
算出方法:安静時エネルギー要求量(RER)=70×体重(kg)の0.75乗、1日に必要なカロリー=RER×1.2(避妊去勢済みの健康な成猫の係数)として計算し、その10%をバナナのカロリーで割ったものです。厚さ1cmの輪切りを約10gとしています。
この数字まで与えないでください
上の表はカロリーだけで計算した上限です。おやつ枠をバナナだけで使い切ることになります。
実際には、厚さ1cmの輪切りを1切れで十分です。
バナナは果物の中でも糖質が多く、いちごの3倍のカロリーがあります。猫は体が小さいぶん、少量でも影響を受けます。
与えるときの手順
- 皮は必ずむく── 消化がよくなく、詰まるおそれがあります
- 細かくする── バナナは粘度が高く、のどに絡みやすい食材です。すりつぶすか、小さく刻んでください
- 常温で── 冷たいものは、それだけで下痢の原因になります
- 初めては少量から── まれにバナナでアレルギーが出る猫がいます
猫には食べ物をすりつぶす奥歯がありません。基本的に丸呑みするので、バナナのような粘りのある食材は、とくに細かくしてください。
甘味を感じないのに、なぜ食べるのか

バナナを喜んで食べる猫がいます。でも不思議なことに、猫は甘味を感じません。
猫には甘味の受容体がありません
2005年に発表された研究で、猫は甘味を感じる受容体を作る遺伝子のひとつが機能を失っていることが示されました。
甘味の受容体は2つの部品(Tas1r2とTas1r3)でできていますが、猫ではこのうちTas1r2が「偽遺伝子」になっており、働くタンパク質を作れません。
つまり猫にとって、砂糖の甘さは「味がない」に近い状態です。
では、何に反応しているのか
甘さではないとすると、猫がバナナに寄ってくる理由は他にあります。考えられるのは次の点です。
- 匂い── 熟したバナナは独特の香りを放ちます。猫は嗅覚が鋭く、食べ物を主に匂いで判断します
- 食感── やわらかく、舐めとりやすい質感
- 飼い主が食べているもの── 猫は飼い主の行動に強い関心を持ちます
同じ研究で、猫はアミノ酸(うま味のもと)には強い嗜好性を示すことが知られています。バナナにアミノ酸が多いわけではないので、バナナの場合は匂いと食感、そして「飼い主が食べているもの」という要素が大きいと考えられます。
※ここから先は推測になりますが、猫がバナナを好む理由を直接調べた研究は見つかりませんでした。
「しあわせホルモン」の誤解
「バナナにはセロトニンが含まれているから、猫がしあわせになる」という説明を見かけることがあります。
これは誤りです。
食品のセロトニンは、脳には届きません
セロトニンは確かに「しあわせホルモン」と呼ばれ、気分や情動に関わる物質です。バナナにも含まれています。
ただし食品から摂ったセロトニンは、血液脳関門を通過できません。血液脳関門は、脳を守るための関所のような仕組みで、通れる物質が限られています。
脳の中のセロトニンは、脳自身がトリプトファンという材料から作っています。食べたセロトニンがそのまま脳で働くことはありません。
「バナナを食べさせればストレスが軽くなる」という期待は持たないでください。
猫のストレスを減らしたいなら、トイレの数と清潔さ、隠れられる場所、上下運動ができる環境、生活リズムの安定のほうがはるかに確実です。
では、与える意味はないのか
栄養面での意味は、ほとんどありません。総合栄養食のキャットフードで、必要な栄養は足りています。
それでも与える理由があるとすれば、「一緒に楽しむため」です。
飼い主が食べているものを少し分ける。その時間そのものが、猫との関わりになります。これは「栄養を摂らせる」のとは別の価値です。
ただし与えないという選択も、まったく正しいものです。
腎臓病の猫は注意してください

バナナはカリウムが多い果物です。
| カリウムの量(可食部100gあたり) | |
|---|---|
| バナナ | 360mg |
| メロン | 350mg |
| 桃 | 180mg |
| いちご | 170mg |
猫の慢性腎臓病は、とても多い病気です。シニアの猫では特に注意が必要になります。
「腎臓病だからカリウムを避ける」とは限りません
ここは正確に理解しておいてください。
Merck Veterinary Manual は、慢性腎臓病の動物について血中カリウム濃度は「低いことも、正常なことも、軽度に高いこともある」としています。
実際、猫では腎臓病にともなって血中カリウムが下がることのほうが多く、筋力の低下が起こることがあります。そのため猫用の腎臓療法食には、カリウムがむしろ添加されているものがあります。
だから、自己判断で足さないでください
療法食は、その猫の状態に合わせてミネラルの量を計算して設計されています。カリウムを抑えている場合も、逆に補っている場合もあります。
そこに食材を足すと、どちらの方向であっても設計が崩れます。
腎臓病と診断されている猫、療法食を食べている猫にバナナを与えたい場合は、主治医に確認してください。
糖尿病、肥満、尿石症の猫も、糖質とカロリーが負担になります。相談してから与えてください。
バナナの栄養は、猫にとって必要か
バナナには糖質、食物繊維、カリウム、マグネシウム、ビタミンB群が含まれています。
ただしこれらの栄養は総合栄養食のキャットフードで足りています。
そもそも猫は絶対肉食動物です。必要な栄養素のうち、タウリン、アラキドン酸、ビタミンAなどは動物性の食材からしか摂れません。果物から補えるものではありません。
「ビタミンCが摂れる」という説明も見かけますが、猫はビタミンCを体内で合成できます。Merck Veterinary Manual も、犬猫は肝臓でブドウ糖からビタミンCを合成できるため、AAFCOによる食事中の要求量が設定されていないとしています。
参考:Merck Veterinary Manual「Nutritional Requirements of Small Animals」(外部リンク)
まとめ
- バナナは猫に与えて問題ない。皮をむいて、細かくして、少量なら
- 体重4kgの猫で1日26gが上限。実際は輪切り1切れで十分
- 猫は甘味を感じません。甘味受容体の遺伝子が機能を失っています
- バナナに寄ってくるのは、匂いと食感、飼い主が食べているからと考えられます
- 「セロトニンでしあわせになる」は誤り。食品のセロトニンは脳に届きません
- ストレスを減らすなら、トイレ・隠れ場所・上下運動・生活リズムのほうが確実
- カリウムが360mgと多い(いちごの2倍以上)。療法食の猫は主治医に確認を
- 猫は絶対肉食動物。果物で栄養は補えません
バナナの皮をむいていると、においに気づいて寄ってくる子がいますよね。甘さを感じていないのに、というのが面白いところです。
輪切りを1切れなら、なんの問題もありません。栄養のためではなく、一緒に過ごす時間として。そのくらいの距離感がちょうどいいのだと思います。

犬も猫も好き!ぽちたま薬局ライターです。ぽちたま薬局公式Twitter担当者でもあります!ぜひTwitterのフォローもよろしくお願いします♡→@pochi10tama










