愛犬が年を重ねると、これまでと同じ生活を送ることが少しずつ難しくなってきます。
「そろそろ介護が必要かも」と不安を感じている飼い主さんも多いかと思います。
老犬介護で大切なことは、愛犬の状態に合わせて無理なくサポートすることです。
この記事では、老犬介護の基本から具体的なケア方法をイラスト付きでご紹介します。
愛犬と穏やかに暮らすために、できることから試していきましょう。

動物介護士の資格をもつ、ペットのお薬通販『ぽちたま薬局』のスタッフです。犬の飼育経験は10年以上。持病をもつハイシニア期の愛犬のお世話をしています。
目次
老犬介護の心得「ひとりで抱え込まない」
老犬を介護するうえで意識したいのは、飼い主さんがひとりで抱え込まないことです。
愛犬を想うあまりがんばりすぎてしまうと、心身ともに疲れ果ててしまいます。
介護は長期戦になるケースが珍しくありません。
追い込まれてしまう前に、周りのサポートに頼る意識をもちましょう。
限界に近づいていると感じたら、かかりつけの獣医師やトリマーなどの専門家へ積極的に相談してみてください。
介護疲労を解決するヒントは、記事後半の「老犬介護でノイローゼにならないために」でも詳しくご紹介しています。
老犬介護【食事編】
高齢になると、飲み込む力や筋力の衰えによって食事がしづらくなることがあります。
そんなときは、フードを柔らかくふやかしたり、流動食を用いたりする工夫をしてみましょう。
そのうえで、愛犬が食べやすい環境を整えることも重要です。

■ まずは食器を高くする
下向きだと足腰の負担になります。
食器台を使い、首と背骨がまっすぐになる高さにお皿がくるよう調整します。
■ 自力での食事が難しいなら手で与える
誤飲しないよう体を起こして、手から直接少しずつ与えます。
トロトロの柔らかいものは、指で上あごにつけるようにして与えましょう。
■ 流動食はシリンジを使う
体を起こし、シリンジ(針のない注射器)を口の横から差し入れて少しずつ注入します。
飲み込んだことを確認しながら進めます。
口からの食事が難しいときは、胃ろうや経鼻チューブを使用することがあります。
チューブは動物病院で設置してもらい、週に1回ほど、交換または状態のチェックが行われます。
便利な食事介護グッズ
食事介護で使用するグッズがこちらです。
自宅にあるもので代用も可能なので、愛犬に合うものを探してみてください。
| 食器台 (食器スタンド) |
シリンジ |
|---|---|
![]() |
![]() |
| ペットショップやホームセンターで購入できます。100均の棚や自宅にある空き箱で代用してもOKです。 | シリンジの先端が犬の口の大きさに合うものを選びます。清潔なドレッシングボトルでも代用できます。 |
老犬介護【排泄編】
愛犬の体の状態に応じて、適切な方法で手助けしてあげましょう。
■ 自力で排泄できる場合
排泄中に倒れないよう、太ももと腰の部分をしっかり持って姿勢を保てるように介助しましょう。
前側から胸とお腹を軽く抱えるようにして支える方法もあります。
■ 自力で排泄できない場合
自力で排泄できない子には、圧迫排尿・排便が必要になります。

圧迫排尿のやり方
(1) ペットシーツの上に寝かせる(座った状態でも可能)
(2) 膀胱を上から下に向けて押す
おしっこがたまると膀胱が膨らみます。
膨らんだ膀胱をお腹から陰部の方向へ押し出すように揉んで排出させましょう。

圧迫排便のやり方
(1 ) ペットシーツの上に寝かせる(立った状態でも可能)
(2) 肛門が膨らんでいることを確認する
(3) 親指と人差し指で押し出すように肛門を押す
うんちが肛門付近にあると肛門の辺りがぷっくり膨らみます。
膨らんでいないときは、下腹部を上から下に向けてマッサージすると出やすくなります。
詳しいお腹のマッサージ方法はこちらのコラムをご覧ください。
排泄後は、陰部や尻尾の周りをウェットティッシュなどできれいに拭き取ります。
難しい場合は無理をせず、必ず獣医師からの指導を受けてください。
便利な排泄介護グッズ
犬のおむつは高額になりがちです。
節約したいときは、人間の赤ちゃん用のおむつを使って、犬のおむつを手作りすることができます。

手作りおむつの作り方
(1) 尻尾の位置に印をつけて、1~2cmの穴を開けるように切り取る
(2) 中のポリマーが出ないよう、穴のふちをテープでとめる
人間と骨格が違うため脱げてしまうことがありますが、その場合はマナーウェアなどを重ね履きするとズレを防ぎやすくなります。
老犬介護【歩行編】
足腰が弱っても、自分の力で歩くことは筋力維持や気分転換に役立ちます。
安全に配慮しながら、できるだけ歩行をサポートしてあげましょう。
【介護ポイント1】首輪はハーネスへ変更

いつも首輪を使っている場合は、『ハーネス』に変更することをおすすめします。
首の負担を減らし、立ち上がりや歩行の補助がしやすくなります。
ワンポイント
ハーネスは胸全体を覆うような、広範囲を支えてくれるタイプがおすすめです。
【介護ポイント2】自力歩行が難しい場合

出典:介護用ハーネス|GIIPET
自力で立てない、あるいはふらついてしまうときは、『歩行補助用のハーネス』が便利です。
通常のハーネスよりもカバーできる範囲が広く、しっかり体を支えることができます。
ワンポイント
歩行補助ハーネスで歩くときは、持ち上げすぎないよう注意しましょう。
歩行補助ハーネスは、バスタオルで手作りすることもできます。

薄手で柔らかく丈夫なバスタオルを使用すると扱いやすくておすすめです。
必ずしも4本脚で作る必要はなく、下半身が弱っているときは後ろ脚の2本分の穴を開けた歩行補助ハーネスを作ることも可能です。
愛犬の状態に合わせて、自由にカスタマイズしてみてください。
【介護ポイント3】下半身に麻痺がある場合

下半身の麻痺がある子には、犬用の車いすを利用する選択肢もあります。
完全に足を浮かせるのではなく、少し地面に触れる高さに調整するとリハビリ効果が期待できます。
※完全に麻痺している場合は、足が傷つかないよう地面につかない高さにしてください。
ワンポイント
犬の車いすは長さ・高さを調節できるタイプがおすすめです。試乗やお試しができるケースもあります。
こうした歩行介助グッズの使用方法は、獣医師や専門スタッフに相談しながら決めると安心です。
装着を嫌がることがあるので、最初は短時間だけ着けてみるなど、少しずつ慣らしていきましょう。
老犬介護【床ずれ編】
寝たきりの状態が続くと、圧迫される部分の血流が悪くなって床ずれ(褥瘡)ができることがあります。
皮がめくれて炎症が生じるだけでなく、悪化すると壊死を起こすため、早めの対処がとても大切です。
■ 床ずれができやすい部位
床ずれは、骨が出っ張っている部位(頬・肩・腰(骨盤)・足首・かかと)にできやすい特徴があります。

こうした部位は「赤みがないか」「皮がめくれていないか」など、こまめにチェックしましょう。
■ 寝返りケアのやり方
床ずれ予防のために、2〜3時間ごとに寝返りケアをしてあげましょう。

■ 寝返りケアのやり方
(1) 声をかけながら、肩と腰(後ろ脚の付け根)に手を添えて抱き上げる
(2) ゆっくり立たせるか、抱っこしたまま向きを変える
(3) 反対向きにゆっくり寝かせる
寝返りさせてあげても、しばらくすると自分の好きな方向に自力で寝返ってしまう子もいます。
定期的に確認してあげると安心です。
■ 床ずれができそうなとき
皮膚が赤いなど床ずれの兆候がみられたら、小さめのクッションや折りたたんだタオルを挟んで、体圧を分散させます。
ドーナツ型のクッションなども便利です。
同じ部分に圧力がかかり続けないよう、寝返りケアとともにクッションの位置もこまめに変えてあげるとよいでしょう。
■ 床ずれができたときのケア方法
皮膚がめくれるなど床ずれができてしまった場合は、まずはぬるま湯で優しく洗浄します。
そして、傷口がジュクジュクしているときは液吸収性ガーゼなどで余分な体液を排出させたり、傷口を乾燥させないよう湿度を維持させたりする処置を行います。
傷が浅いうちは外用薬でおさまりますが、症状が重いと壊死した組織を手術で取り除くなどの処置が必要になる場合もあります。
傷口の状態によって対処法が異なるため、動物病院で指示を受けるようにしてください。
老犬介護におけるケア方法
老犬になると体力が低下するため、日々のケアが負担になることがあります。
目や耳、デンタルケアなどは基本的にこれまでと同じで問題ありませんが、全身シャンプーは負担が大きくなりがちです。
汚れた部分だけを洗うなどの工夫をしましょう。

■ 部分シャンプーのやり方
(1) 洗面器に37~38度のお湯を入れる
(2) 後ろ脚を洗面器に入れてやさしく洗う
(3) お尻の下に洗面器を置いて、汚れている部分を洗う
洗うときは、後ろ脚から始めると恐怖心を抱きにくくなります。
体勢が崩れないよう、常に支えてあげましょう。
なお、寝たきりの場合や汚れがそれほどひどくない場合は、お湯やシャンプーを使わずホットタオルで全身を拭く方法もあります。
■ 全身を拭く方法
(1) お湯に濡らしたタオルをよく絞る
(2) 背中全体にタオルを広げて数秒置いて汚れを浮かせる
(3) 首からお尻にかけて毛に沿って拭く
(4) 脚を1本ずつタオルで包むように拭く
(5) 肉球や爪の汚れを丁寧に拭き取る
月に2~3回を目安に、汚れの程度に応じて行います。
洗い流さないで済むドライシャンプーを活用するのもよいでしょう。
こうしたケアは、愛犬の体調がよいときに行うようにしてください。
老犬介護でノイローゼにならないために
連日の夜泣きやトイレの失敗が続くと、飼い主さん自身が精神的に追い詰められてしまうことが少なくありません。
介護ノイローゼを防ぐためにも、専門家や外部のサービスを積極的に頼るようにしてください。
かかりつけの獣医師はもちろん、介護サービス事業者などが設置する相談窓口も活用しましょう。
事業者によっては、無料で相談を受けつけているところもあります。
困ったときに頼れる相談先
主な相談先と費用の目安は次のとおりです。
| 相談先 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 老犬ホーム | 長期・短期預かり | 1日数千円〜 1ヶ月数万円~ |
| ペットシッター | 自宅訪問による介護補助 | 1回3,000〜10,000円ほど |
| 訪問型介護サービス | 専門スタッフによる介護支援 | 1回5,000~10,000円ほど |
| 動物病院 | 医療面・ペットホテル利用の相談 | 診察料が必要 |
がんばりすぎて倒れてしまう前に、ショートステイなどを利用してリフレッシュする時間を作ることも大切です。
夜泣きに苦労されている飼い主さんは、「老犬の夜泣きが耐えられない…原因と対策」のコラムも参考にしてください。
老犬介護に関するよくある疑問
老犬介護を始めると、さまざまな悩みや疑問が出てきます。
ここではよくある質問と対処法についてまとめました。
おむつを嫌がるときは?
A. エリザベスカラーを利用しましょう。
おむつを気にして脱ごうとする場合は、エリザベスカラーの装着を検討してください。
おむつに口が届かなくなるため、噛みちぎりを防げます。
サイズが合っていない可能性もあるので、締め付け具合を再確認することも大切です。
圧迫排尿・排便ができるか不安
A. 動物病院で指導を受けましょう。
圧迫排尿や排便はコツが必要で、初めは不安を感じる人が少なくありません。
しかし自力で排泄できない状態を放置すると、命に関わる事態につながります。
やり方が分からないときは自己流で試さず、すぐに動物病院でやり方の指導を受けてください。
触ろうとすると嚙んでくるときは?
A. 口輪の使用や、2人態勢での対応を検討しましょう。
加齢によって頑固になったり、体に痛みや不快感があったりすると、触られるのを嫌がって噛むことがあります。
飼い主さんがケガをしないためにも、口輪やエリザベスカラーを一時的に使用しましょう。
ひとりで無理をせず、誰かに愛犬を保定してもらいながら2人体制でケアを行うと安全です。
床ずれのかさぶたは剥がしていい?
A. 絶対に無理やり剥がしてはいけません。
床ずれにできたかさぶたは剥がさず温存させましょう。
無理に剥がすと傷口が広がって、感染症のリスクが高まります。
清潔なガーゼを当てて包帯で保護し、傷口がジュクジュクしているなど状態が悪いときは早めに動物病院を受診しましょう。
老犬介護は“できる範囲”を意識して
老犬介護で大切なのは、完璧を目指さず“できる範囲”で愛犬に向き合うことです。
お互いに無理のないペースをつくることが、最後の日々を穏やかに過ごす鍵になります。
困ったときはかかりつけの獣医師や専門サービスの力を借りながら、温かい時間を過ごしていきましょう。
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認知症の初期症状や対処法は、「柴犬の認知症」のコラムも参考にしてください。

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