ハムスターが急に足を浮かせて歩いていたり、足を引きずっていたりすると、「骨が折れたのかも」と一気に不安になりますよね。
体がとても小さいぶん、どう扱えばいいのか迷ってしまう飼い主さんも多いと思います。
- 足を浮かせる・引きずるといった歩き方の異常は、骨折を含むケガのサイン。元気に動き回っていても骨折していることがあります
- まずは回し車やステップを外し、高さのない狭いケースで安静に。自分で足を固定したり、薬を与えたりはしないでください
- 「自然に治る」ことがあるのは、骨がずれていない軽い骨折です。ずれの有無はレントゲンでないと分からないため、自然治癒を待つ場合も一度は動物病院で診てもらうのが基本です
- 骨折の多くは金網の回し車・ケージや落下がきっかけ。回し車と床を「足が挟まらない面」にすることが一番の予防になります

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目次
骨折が疑われたら最初にすること
骨折が疑われるときに一番大切なのは、それ以上ケガを悪化させないことです。動物病院に連れて行くまでの間、次の3つを意識してください。
回し車・ステップを外して「低くて狭い」環境に
回し車やロフト、はしごがあると、ハムスターは痛めた足でも登ったり走ったりしてしまいます。高さのない小さめのケースやキャリーに移し、登れるものは入れないようにしましょう。
米国獣医外科専門医のR. Avery Bennett氏も、小型哺乳類の骨折治療に関する講演録の中で、回復期間中は回し車・登れる台・トンネル類を取り除くべきとしています。
出典:dvm360「小型哺乳類の整形外科手術(学会講演録)」
触りすぎず、静かで暗い場所で休ませる
様子を確かめようと何度も抱き上げると、痛みで暴れて落下させてしまうおそれがあります。移動は手ではなく、容器にそっと誘導するほうが安全です。
前述の講演録では、強いストレスを受けている小型哺乳類は、骨折の処置に入る前にまず暖かく暗く静かな場所で落ち着かせるとされています。
おうちでも、人の出入りが少ない静かな場所に置いてあげてください。
自分で固定したり、薬を与えたりしない
ネットには割り箸やテープで足を固定する方法も見かけますが、自己流の固定や投薬はしないでください。
げっ歯類は体に付けられたものをかじる習性が強く、動物病院でも固定具の管理に苦労することがあると前述の講演録で述べられています。
薬についても同様です。MSD獣医マニュアルは、ハムスターでは一部の抗生物質でさえ腸内細菌のバランスを崩して命に関わることがあるため、獣医師の処方なしに与えないよう注意しています。人用の痛み止めなども含め、自己判断での投薬は避けましょう。
出典:MSD獣医マニュアル「ハムスターがかかる病気と不調(飼い主向け)」

- 骨が皮膚から見えている、または出血している
- 足を床にまったく着かない、足先がぶらぶらしている
- 足先や指が腫れて、赤→紫→黒っぽく色が変わってきた(糸くずが巻き付いていないかも確認)
- 痛がっている、動きたがらない、ごはんを食べない
MSD獣医マニュアルは、ハムスターが痛がっている様子や動きたがらない様子があれば、すぐに獣医師の診察を受けるよう勧めています。当てはまる場合は、様子を見ずに動物病院への相談を検討してください。
ハムスターの骨折の見分け方
MSD獣医マニュアルによると、ハムスターが足を引きずる原因には、ねんざ(筋や関節を痛めた状態)と骨折の両方があります。家で見られる主なサインは次のとおりです。
- 片足を浮かせて、3本足で歩いている
- 足を引きずる、歩き方がぎこちない
- 左右の足を見比べると、向きや形、太さが違って見える
- 足を触ろうとすると嫌がる、鳴く、かもうとする
- 回し車に乗らない、巣箱から出てこない
ただし、ねんざと骨折を見た目だけで区別するのは困難です。どちらの場合も痛みがあるため、歩き方がおかしいと感じた時点で動物病院に相談するのが安心です。
元気に走り回っていても骨折していることがある
「骨折したのに普通に走り回っているから大丈夫そう」と感じる飼い主さんは少なくありません。しかし、元気に見えることは、軽傷である証拠にはなりません。
英国王立獣医大学の研究チームによる約1万6千頭のハムスターの診療記録を調べた研究では、ハムスターは被食動物(ほかの動物に食べられる側の動物)であり、体の不調を隠すように進化してきたため、問題に早く気づくのが難しいと指摘されています。
出典:Journal of Small Animal Practice「英国の動物病院を受診したペットハムスターの年齢構成・病気・死亡状況」(O’Neillほか, 2022)
骨折と間違えやすい「糸の巻き付き」
足先が腫れている場合、骨折ではなく、綿のような繊維状の巣材や糸くずが指や足に巻き付いていることもあります。
米国VCA動物病院の解説によると、細い繊維が足に巻き付くと血の流れが止まり、数時間のうちに腫れて赤→紫→黒へと色が変わり、放置すると指や足が壊死する(組織が死んでしまう)ことがあります。
すぐに気づけば被害は小さく済むとされているので、足先の腫れに気づいたら、糸が巻き付いていないかも確認し、早めに動物病院へ相談してください。自分で無理に糸を切ろうとすると、皮膚を傷つけるおそれがあります。
出典:VCA Animal Hospitals「げっ歯類に多い健康トラブル」
足だけでなく背中をケガすることも
MSD獣医マニュアルは、落下によって骨折だけでなく背中(背骨)のケガが起こることもあるとしています。
高い所から落ちたあとに、足の動きがおかしい・体を引きずるといった様子があれば、足だけの問題と決めつけずに受診を検討しましょう。
骨折かどうかはレントゲンで確かめる
骨折の有無や、骨がずれているかどうかは、レントゲン検査で確認します。VCA動物病院の解説でも、治療法はレントゲンで分かる骨のずれの程度によって変わると説明されています。
なお、前述の英国の研究では、ハムスターは扱いが難しく、獣医師側の診療経験が限られがちなことも課題として挙げられています。
受診前に電話で「ハムスターを診てもらえるか」を確認しておくとスムーズです。
ハムスターの骨折は自然治癒する?
結論からいうと、自然に治ることがあるのは「骨がずれていない軽い骨折」です。
VCA動物病院の解説では、骨が正しい位置に並んだままの軽い骨折は、ケージの中で安静に過ごすことで自然に治る場合があるとされています。
一方、骨がずれている重い骨折では、ピンを使った手術、副木(そえぎ)での固定、断脚(足の切断)が必要になることがあります。
| 骨折の状態 | 主な治療の選択肢 |
|---|---|
| 骨がずれていない軽い骨折 | ケージ内での安静(自然に骨がつくのを待つ) |
| 骨がずれている骨折 | ピンによる手術、副木での固定、断脚 |
出典:VCA Animal Hospitals「げっ歯類に多い健康トラブル」
ここで注意したいのは、「骨がずれているかどうか」は外から見ても分からないという点です。
つまり「自然治癒を待つ」とは「病院に行かずに様子を見る」ことではなく、「レントゲンで安静療法が合う骨折だと確かめたうえで、安静にして治るのを待つ」ことだと考えてください。
治るまでの期間
VCA動物病院の解説では、骨がずれていない軽い骨折の場合、安静にする期間の目安は2〜4週間とされています。
また前述のBennett氏の講演録では、手術をした場合は4週間後にレントゲンを撮り、その後は骨がついたことを画像で確認できるまで毎週撮影するとしています。骨折の種類によって期間は変わるため、日数だけで区切らず、再診で骨のつき具合を確認してもらいましょう。
受診せずに放置するとどうなる?
Bennett氏の講演録によると、足先に近い部分の骨折は、骨を覆う皮膚や筋肉が薄いため、骨が皮膚を突き破る「開放骨折」になりやすいとされています。
開放骨折は傷口から細菌が入り、感染を起こすおそれがあります。
VCA動物病院の解説では、骨折が感染したり修復できなかったりする場合、ごくまれに安楽死が提案されることもあるとしています。
つらい話ですが、だからこそ早めの受診で選べる治療の幅を残しておくことが大切です。
動物病院での治療法
ハムスターの骨折治療は、骨折の場所や骨のずれ方、体の大きさなどをふまえて選ばれます。主な治療法は次の4つです。
安静療法(ケージレスト)
骨のずれがない軽い骨折では、動きを制限した狭いケージの中で安静に過ごし、骨が自然につくのを待ちます。痛み止めなどが処方されることもあります。
副木・包帯による固定
Bennett氏の講演録では、副木や包帯による外からの固定は、体が小さく手術での固定が難しい場合や、骨のずれが小さい場合に適しているとされています。
ただし、げっ歯類は固定具をかじってしまうことが多く、慣れるまで数日間鎮静剤を使うこともあるそうです。また、首に付けるエリザベスカラーを嫌がる個体も多いとされています。
手術(ピンなどによる固定)
骨のずれが大きい場合は、手術でピンなどを入れて骨を固定する方法があります。
ただしBennett氏は、げっ歯類の骨は小さく、骨の外側の層(皮質)が薄くてもろいため、固定そのものが難しい点を課題として挙げています。対応できる病院が限られることもあるため、事前の確認が大切です。
断脚(足の切断)
骨が細かく砕けている、周りの組織の傷みがひどい、骨の感染が重いといった場合には、断脚が選ばれることがあります。
「足を切るなんて」とショックを受ける飼い主さんも多いと思いますが、Bennett氏の講演録では、断脚は小型哺乳類によく受け入れられる(術後の生活に順応しやすい)とされています。
治療費は検査・処置の内容で変わる
治療費は、レントゲン検査の有無、固定や手術を行うかどうか、再診の回数などによって大きく変わります。
病院ごとに料金体系も異なるため、受診前の電話で「ハムスターの診療が可能か」とあわせて、おおよその費用を確認しておくと安心です。
おうちでの安静のさせ方
動物病院で安静療法や固定の指示が出たら、おうちでは次の点に気をつけましょう。期間や方法は、必ずかかりつけの獣医師の指示を優先してください。
- 回し車・ロフト・はしご・トンネルなど、登ったり走ったりできるものは外す
- 高さのない、ひとまわり小さいケースで過ごさせる
- 床材はやわらかいものにし、綿のような繊維状の巣材は使わない
- ごはんと水は、あまり動かなくても届く位置に置く
- 抱っこや部屋んぽは、獣医師の許可が出るまで控える
- 固定具をかじっていないか、足先の色や腫れに変化がないかを毎日確認する
- 食欲や便の量が落ちていないかも見ておく
「元気そうだから」と途中で回し車を戻すと、治りかけの骨に負担がかかるおそれがあります。再診で許可が出るまでは、安静の環境を続けてあげてください。

骨折を防ぐケージと回し車
前述の英国の研究では、動物病院を受診したハムスターの記録のうち、ケガ(外傷)が最も多い病気のグループで、全体の約15%を占めていました。
研究チームは、落下や踏まれるといった事故の多くは防げるものだと述べています。なお、この「外傷」にはハムスター同士のけんかによるかみ傷なども含まれ、骨折だけの数字ではありません。
MSD獣医マニュアルによると、ハムスターのケガは金網の回し車や金網のケージに足が挟まって起こることが多く、すき間のない面のほうが安全とされています。また、落下も骨折の原因になります。
| 見直したいもの | 安全な選び方・使い方 |
|---|---|
| 回し車 | 走る面にすき間のないタイプを選ぶ。はしご状・網状の面は足が挟まりやすい |
| ケージの床・壁 | 金網ではなく平らな面のケースを選ぶ。金網をよじ登れる構造は落下にもつながる |
| ロフト・ステップ | 高さを控えめにし、下に床材をしっかり敷く |
| 巣材 | 綿のような繊維状の素材は避け、細かく裂いた紙などを使う |
| 抱っこ | 床に近い低い位置で行う。子どもが抱っこするときは大人が見守る |
出典:MSD獣医マニュアル「ハムスターがかかる病気と不調(飼い主向け)」、VCA Animal Hospitals「げっ歯類に多い健康トラブル」
ドワーフは要注意
前述の英国の研究では、ゴールデンハムスターはそれ以外の種類(ジャンガリアンやロボロフスキーなどのドワーフ系が中心)に比べて、ケガの記録がされるオッズ(起こりやすさの指標)が約3分の1でした。
「体が大きいゴールデンのほうが危ない」と思われがちですが、小さくすばしっこいドワーフ系こそ、回し車やケージの見直しを意識してあげたいところです。
まとめ
- 足を浮かせる・引きずるのは、骨折やねんざのサイン。元気に動いていても骨折していることがある
- 骨折が疑われたら、回し車やステップを外して低く狭い環境で安静に。自己流の固定や投薬はしない
- 足先の腫れと色の変化は、糸の巻き付きの可能性も。数時間で悪化することがあるため早めに相談を
- 自然治癒が期待できるのは骨がずれていない軽い骨折。ずれの有無はレントゲンで確認する
- 治療は安静・固定・手術・断脚から選ばれ、断脚後も小型哺乳類は順応しやすいとされる
- 予防の基本は、すき間のない回し車と平らな床、低い位置での抱っこ
ぽちたま薬局ではハムスターに使用されるお薬も取り扱っています
この記事は獣医学の資料や研究をもとに作成していますが、個々のハムスターの状態に合わせた診断や治療の代わりにはなりません。骨折が疑われる場合や、治療・安静の方法に迷う場合は、動物病院で獣医師にご相談ください。

幼少期にやんちゃなビーグル・うさぎ・ハムスターと過ごしました。現在は動物と暮らしてはいませんが、オウムと猫の動画を見て栄養補給を欠かしません。






