ハリネズミのふらつき症候群とは?初期症状・寿命と低体温との違い

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ハリネズミのふらつき症候群とは?初期症状・寿命と低体温との違い

さっきまで元気に歩いていたのに、なんだか足元がおぼつかない…。ハリネズミのふらつきに気づいて「ふらつき症候群かも」と不安になり、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

この記事の結論
  • ふらつき症候群(WHS)は、後ろ足のふらつきから始まって少しずつ全身に広がる神経の病気です。現時点で、進行を止められると確かめられた治療法はありません。
  • ただし「ふらつく=ふらつき症候群」とは限りません。寒さによる休眠状態(擬似冬眠)、椎間板の病気、腫瘍、耳の奥の炎症などでも、よく似た歩き方になります。
  • 気温が下がる季節は、まず室温と体の冷たさをチェック。体が冷たく反応が鈍いときは、保温しながらすぐ動物病院へ。
  • ふらつき症候群は生きているうちに確定診断ができません。「ほかの原因が隠れていないか」を動物病院で調べてもらうことが、飼い主さんにできる最初の一歩です。

ハリネズミがふらついたときに確認する流れの図

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ハリネズミがふらつく時にまず見ること

ふらつきに気づいたら、病名を調べる前に「今すぐ手当てが必要な状態ではないか」を確認しましょう。特に見落とされやすいのが、寒さによる休眠状態(擬似冬眠)です。

ハリネズミは室温が20℃を下回ると休眠状態に入ることがあり、まれに暑すぎても同じことが起こります。休眠中のハリネズミは刺激への反応が大きく鈍り、心拍や呼吸もゆっくりになります。この状態が数週間続くこともあり、その間に動ける時間があるとふらついて歩くことがあるとされています。一方で、暖かく静かな環境で治療(点滴などの輸液)を受ければ、回復の見込みは良好とされています。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの病気」)

次のポイントを、ケージの前で順番にチェックしてみてください。

  • ケージまわりの室温が20℃を下回っていないか(夜間・明け方の冷え込みも含めて)
  • 体を触ったときに冷たくないか
  • 触っても反応が鈍く、ぼんやりしていないか
  • ごはんを食べているか、体重が急に落ちていないか
  • 首が傾いている、同じ方向にぐるぐる回るといった動きがないか
  • 足先に糸や布の繊維が巻き付いていないか

首の傾きや旋回は、耳の奥(中耳・内耳)の炎症でも起こります。また、足先に繊維が巻き付くと足をかばって歩き方が変わるため、ふらつきと見間違えることがあります。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの病気」)

ハリネズミがふらつくときに確認したい6つのポイント

こんなときはすぐ動物病院へ相談を
  • 体が冷たく、触っても反応が鈍い(低体温・擬似冬眠の可能性)
  • 自力で食べられない、急に体重が減っている
  • 横に倒れたまま起き上がれない
  • 首の傾きや、同じ方向にぐるぐる回る動きがある
  • ふらつきが数日のうちに目に見えて悪化している

低体温が疑われるときは、ケージごと暖かい部屋へ移すなど保温をしながら動物病院に連絡しましょう。

ふらつき症候群(WHS)とはどんな病気?

ふらつき症候群は、英語で「Wobbly Hedgehog Syndrome(WHS)」と呼ばれる、ペットとして飼われているヨツユビハリネズミ(アフリカピグミーハリネズミ)の神経の病気です。飼育下では1990年代半ばから観察されてきました。

脳や脊髄の「白質」と呼ばれる部分に、小さな空洞がたくさんできてスポンジ状になるのが特徴です。その結果、神経の信号がうまく伝わらなくなり、筋肉も衰えていきます。北米で2000〜2005年に行われた飼い主への調査では、飼育されているハリネズミのおよそ10%に、進行性の麻痺が見られたと報告されています。
(出典:Journal of Exotic Pet Medicine「アフリカピグミーハリネズミのふらつき症候群」(2006年))

なお、日本国内での発生割合を示すデータは、調べた範囲では見つかりませんでした。北米の数字がそのまま日本に当てはまるとは限らない点には注意が必要です。

2023年には、米国ウィスコンシン大学などのグループが、ふらつき症候群は神経を包む膜(髄鞘)の病気というだけでなく、神経細胞そのものが失われていく「進行性の神経変性疾患」であることを示しました。人の進行型の多発性硬化症に似た特徴があると報告されています。
(出典:Experimental Neurology「ふらつき症候群は進行性の神経変性疾患である」(2023年))

確定診断は死後

ふらつき症候群は、亡くなった後に脳や脊髄を顕微鏡で調べる病理検査でしか確定できません。生きているあいだは、症状の経過と「ほかの病気ではないか」の検査を積み重ねて判断することになります。

ふらつき症候群の初期症状と進み方

最初に現れやすいのは、後ろ足のふらつきです。後ろ足の片方、または両方に力が入りにくくなる様子も、早い段階から見られます。症状は数週間かけて少しずつ強まり、横に倒れる、体を起こせない、歩けないといった状態へ進みます。

麻痺は後ろ足から前足へと広がり、最終的に全身が動かなくなることもあります。食欲そのものは終わりが近づくまで保たれることが多い一方、ごはんのところまで移動できずに体重が大きく落ちていく点には注意が必要です。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの病気」)

ふらつき症候群の進み方(初期・進行期・後期)の図

段階 見られやすい様子 飼い主さんにできること
初期 後ろ足がふらつく、後ろ足に力が入りにくい 歩く様子を動画に残し、ほかの原因がないか受診して調べてもらう
進行期 横に倒れる、体を起こせない、うまく歩けない 床材やレイアウトを見直し、体重を毎週はかる
後期 前足にも麻痺が広がる、痩せていく、飲み込みにくくなる 獣医師と相談しながら食事を手伝い、生活の質について話し合う

進み方には個体差があります。表はあくまで目安として、気になる変化があれば早めに動物病院へ相談してください。

ふらつき症候群と間違えやすい病気

ハリネズミがふらつく原因は、ふらつき症候群だけではありません。北米の研究では、神経症状が出て死後検査を受けた45頭のうち5頭は、ふらつき症候群ではなく別の病気(主に脳の腫瘍)が原因だったと報告されています。
(出典:Journal of Exotic Pet Medicine「アフリカピグミーハリネズミのふらつき症候群」(2006年))

さらに、神経とは関係のない重い病気で体が弱っているだけでも、ハリネズミはふらついて見えることがよくあります。獣医学の専門書では、ふらつきの主な原因として次のような病気が挙げられています。

原因 特徴 知っておきたいこと
低体温(擬似冬眠) 20℃未満の寒さ(まれに暑すぎ)で起こる。反応が鈍く、体が冷たい 保温と治療で回復が見込める
椎間板の病気 後ろ足のふらつき、おしっこが出にくい、足の位置の感覚が鈍る ステロイドで一時的に改善した報告がある
腫瘍 ハリネズミは腫瘍がとても多く、神経症状が出ることもある 3歳を超えると特に多い
耳の奥の炎症 首が傾く、同じ方向にぐるぐる回る 脳の病気でも同じ症状が出ることがある
低カルシウム 筋肉の震え、ぴくつき、こむら返りのような動き カルシウムの補給で良くなることが多い
重い全身の病気 体が弱って歩き方がおかしく見える もとの病気の治療が優先

このほか、肝臓の病気による脳への影響(肝性脳症)、出産後のけいれん、栄養不良、けが、寄生虫などの感染症も原因として挙げられています。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの病気」)

「ふらつき症候群だから仕方ない」と決めつける前に、治療で良くなる病気が隠れていないかを確かめることが大切です。

ふらつき症候群の寿命と進行スピード

ふらつき症候群と診断されたあと、どのくらい一緒に過ごせるのかは、飼い主さんがいちばん気になるところだと思います。ただ、この点は研究によって示されている数字にかなり幅があります。

2つの数字は、測っているものが違います。前者は「全身が動かなくなるまで」、後者は「安楽死が選ばれるまで」の期間です。多くのハリネズミは、完全に動けなくなる前に生活の質が大きく下がり、安楽死が選ばれるとされています。そのため後者の数字は、飼い主さんと獣医師の判断のタイミングにも左右されます。

数字の読み方

どちらが正しいというより、「数週間で急に進む子もいれば、1年以上かけてゆっくり進む子もいる」と受け止めておくのが現実的です。なお、健康なヨツユビハリネズミの寿命は4〜6年とされています。

(寿命の出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

ふらつき症候群の原因と遺伝の関係

ふらつき症候群のはっきりした原因は、まだわかっていません。ただ、血統を調べた研究では家系に偏って起こる傾向が見られており、遺伝的な背景が疑われています。
(出典:Journal of Exotic Pet Medicine「アフリカピグミーハリネズミのふらつき症候群」(2006年)、MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの病気」)

遺伝以外にも、栄養不良やストレス、ウイルスの関与が候補として挙げられています。日本では、山口大学などのグループが国内の動物病院に来院したハリネズミ150頭を調べ、新しく見つかったヘルペスウイルスの陽性率が、神経症状のある27頭では22%、ない122頭では6.6%と、神経症状のある子で有意に高かったと報告しました。ただし研究チーム自身も、病気との関係を確かめるにはさらなる研究が必要だとしています。
(出典:Viruses「日本の飼育下ヨツユビハリネズミにおけるウイルス感染の網羅的調査」(2022年))

家系との関係が指摘されていることから、これからハリネズミを迎える場合は、親や兄弟の健康状態をブリーダーさんに聞いておくのもひとつの方法です。

ふらつき症候群の治療法と治る可能性

残念ながら、ふらつき症候群の進行を止められると確かめられた治療法は、今のところありません。これまでにビタミンEやセレン、ビタミンB、ステロイドなどさまざまな治療が試されてきましたが、効果はほとんど、あるいはまったく見られなかったと報告されています。
(出典:Journal of Exotic Pet Medicine「アフリカピグミーハリネズミのふらつき症候群」(2006年))

人の多発性硬化症に使われる、免疫にはたらきかける薬(ステロイドやインターフェロンβ)も試されましたが、病気の経過は変わらなかったとされています。
(出典:Experimental Neurology「ふらつき症候群は進行性の神経変性疾患である」(2023年))

それでも受診する意味は大きいです。低体温や低カルシウム、椎間板の病気のように、原因しだいでは治療で良くなるものがあるからです。ハリネズミは触られると丸まってしまうため、しっかり診察するには鎮静や麻酔が必要になることが多い点も、あらかじめ知っておくと安心です。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

ふらつき症候群と考えられる場合は、支えるケアや手からの食事介助を続けながら様子を見ていくことになります。生活の質が大きく損なわれたときには、安楽死が選択肢として示されることもあります。どの道を選ぶにしても、獣医師とよく話し合い、その子と家族にとって納得できる形を探していきましょう。

ふらつき症候群の介護と住まいの工夫

ふらつきが出ている子は、転びやすく、自分で体温や体をきれいに保つことも難しくなっていきます。住まいを少し整えるだけでも、毎日の過ごしやすさは変わってきます。

室温は24〜29℃を目安にキープ

ヨツユビハリネズミの飼育に適した室温は22〜32℃、特に24〜29℃が最適とされています。寒すぎても暑すぎても休眠状態に入ることがあり、免疫が下がったり、臓器のはたらきが落ちたりするおそれがあります。ケージの下に敷くヒーターや、爬虫類用のセラミックヒーターの活用が勧められています。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

床材はやわらかく、引っかかりのないものに

床材は、やわらかくて水分をよく吸うものが勧められています。再生紙の床材は良い選択肢で、ほこりっぽいものや香り付きのものは避けたほうがよいとされています。ひもやほつれた布の繊維は指や足に絡まることがあるため、ケージ内に置かないようにしましょう。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

ふらつきが出てきたら、段差のある隠れ家を低いものに替える、食器や水入れを寝床の近くに置くなど、移動の負担を減らす工夫も取り入れてみてください。

回し車は使い方を見直す

健康なハリネズミには回し車が強く勧められていて、足が挟まりやすい網目ではなく、走る面が平らな金属やプラスチックのものが推奨されています。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

ただし、ふらつきが出ている子は回し車の中で転倒するおそれもあります。そのまま置いておくか外すかは、症状の程度を見ながら獣医師に相談してみましょう。

体重を毎週はかり、食事は早めに相談

体重を毎週はかることは、健康なハリネズミにも勧められている習慣です。ふらつき症候群では、食欲があってもごはんまでたどり着けずに痩せていくことがあるため、体重の変化は大切なサインになります。自力で食べられなくなってきたら、流動食の与え方などを動物病院で相談しましょう。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

元気なうちから定期健診を

ヨツユビハリネズミは寿命が短く、体調の悪さを隠しやすい動物です。そのため、6〜12ヶ月ごとの健康診断と血液検査が勧められています。ふだんの様子を知ってもらっておくと、ふらつきが出たときにも変化に気づいてもらいやすくなります。
(出典:MSD獣医マニュアル「ヨツユビハリネズミの飼育管理」)

ふらつき症候群のよくある質問

何歳から発症しますか?

2歳未満での発症が多いものの、どの年齢でも起こりうるとされています。2023年の研究では、2歳前後で後ろ足のふらつきや力の入りにくさが出始めることが多いと紹介されています。
(出典:Journal of Exotic Pet Medicine「アフリカピグミーハリネズミのふらつき症候群」(2006年)、Experimental Neurology「ふらつき症候群は進行性の神経変性疾患である」(2023年))

予防する方法はありますか?

原因がわかっていないため、確立された予防法はありません。できることとしては、適温を保って低体温による休眠を防ぐこと、定期健診で早めに変化に気づけるようにしておくこと、お迎えの際に家系の健康状態を確認しておくことなどが挙げられます。

「ふらつき症候群が治った」という話を聞きました

現時点で、ふらつき症候群そのものが治療で良くなったと確かめられた報告は見当たりません。生きているうちは確定診断ができないため、良くなったケースの中には、低体温や椎間板の病気など別の原因だった例が含まれている可能性もあります。

ハリネズミに多い皮膚のトラブル「ダニ」については、こちらの記事で症状や治療、予防法を解説しています。

まとめ

  • ふらつき症候群(WHS)は、後ろ足のふらつきから始まり全身に広がっていく神経の病気で、現時点で進行を止める治療法は確立されていません。
  • ふらつきの原因はほかにも、低体温(擬似冬眠)、椎間板の病気、腫瘍、耳の奥の炎症、低カルシウムなどがあり、治療で良くなるものも含まれます。
  • 気温が下がる季節は、室温20℃未満や体の冷たさに要注意。低体温が疑われたら保温しながら受診を。
  • 進行スピードは研究によって「数週間」から「1年以上」まで幅があり、個体差が大きいと考えられます。
  • 室温24〜29℃の維持、やわらかい床材、移動しやすいレイアウト、毎週の体重測定が、日々の介護の支えになります。

この記事は、獣医学の専門書や論文などの公開情報をもとにまとめたもので、獣医師の診察に代わるものではありません。ハリネズミの様子に不安を感じたら、エキゾチックアニマルを診られる動物病院へ相談してください。

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