ケージの中に、いつもより水っぽいフンが……。
「レオパが下痢してる?病院に連れて行くべき?」と心配になりますよね。
- トカゲのフンは、茶〜黒の「便」と白い「尿酸」、少しの「尿」でできている。まわりが少し濡れているだけなら、尿のこともある
- 便そのものが形を保てず、やわらかい・水っぽい状態が下痢。レオパもカナヘビ・ヤモリ・フトアゴも、まずは温度などの飼育環境と、寄生虫・原虫を疑う
- 血や粘液が混じる、においがきつい、食べない・痩せてきた、元気がないときは、早めに動物病院への相談を検討
- 受診のときは便を持っていくと検査がスムーズ。駆虫薬は寄生虫の種類に合わせて選ぶものなので、自己判断で使わない

ぽちたま薬局では、トカゲ・ヘビ・カメなど爬虫類に使用されるお薬も取り扱っています
急いで受診したいサイン
爬虫類は、体調が悪くてもそれを隠すのが上手な動物です。
オーストラリアの動物福祉団体RSPCAは、かなり弱ってから一気に悪化することが多いと説明しています。
下痢に加えて、次のような様子がないか確認してください。
- フンに血や粘液が混じる、においがいつもよりきつい
- 餌を食べない、吐き戻す、体重が減ってきた
- ぐったりして動かない、体に力が入らない
- 皮膚にしわが寄る、目がくぼんでいる(脱水のサイン)
- お尻(総排泄孔)が腫れている、血の混じった分泌物が出ている、何かが飛び出している
- 下痢のあと、フンがまったく出なくなった
1つでも当てはまるときは、様子見を続けず、爬虫類を診られる動物病院への相談を検討しましょう。
出典:MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」/AZEAH「爬虫類の異常なフンの見分け方」/RSPCA「爬虫類の体調不良に気づくには」
下痢かどうかフンで見分ける
トカゲは、便と尿を同じ出口(総排泄孔)から出します。そのため1回のフンに、いくつかの部分が混ざっています。
| 部分 | 見た目 |
|---|---|
| 便(腸から) | 茶色〜黒っぽい。ふだんは形がある |
| 尿酸(腎臓から) | 白〜クリーム色のかたまり |
| 尿 | フンのまわりに残る、少し濡れたシミ |
米国のエキゾチック動物病院AZEAHによると、フンのまわりに少し尿のシミが残るのはよくあることです。
便そのものに形があれば、濡れて見えても下痢とは限りません。
下痢と考えるのは、便が形を保てず、やわらかい・水っぽい状態になっているときです。
少しの粘液は正常なこともありますが、量が多いときは注意が必要です。
白い部分は尿酸
フンについている白いかたまりは「尿酸」です。MSD獣医マニュアルでも、爬虫類のフンに見られる白いチョークのような物質として紹介されています。
正常なフンにもついているので、白いだけなら心配いりません。
ただし、尿酸が濃い黄色・オレンジ・緑などいつもと違う色なら、便と一緒に尿酸も病院へ持っていきましょう。
出典:AZEAH「爬虫類の異常なフンの見分け方」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の住まいと食事(飼い主向け)」
4種に共通する下痢の原因
ここで紹介する原因は、レオパ・カナヘビ・ヤモリ・フトアゴのどれにも起こりえるものです。大きく分けると、飼育環境と感染症の2つです。
| 原因 | 主な特徴 |
|---|---|
| 温度が低い・環境が合わない | 消化がうまく進まず、水分や栄養を処理しきれない |
| 寄生虫(回虫など) | 狭いケージやストレスで、たくさん寄生しやすくなる |
| 原虫(コクシジウム) | 卵が環境中で数週間生き残り、くり返し感染しやすい |
| 原虫(クリプトスポリジウム) | 体重が大きく減る。確実に効く治療が少ない |
| 原虫(アメーバ) | 粘液や血の混じった下痢。植物食より肉食の種類でかかりやすい |
| 細菌 | 体が弱っているときに起こりやすい |
まず見直したいのは温度
爬虫類は、体温を外の温度に頼って保っています。MSD獣医マニュアルによると、温度や光、湿度が合っていないと、水分や栄養をうまく処理できません。
ケージには、暖かい場所と涼しい場所の差(温度勾配)をつくるのが基本です。適温の幅があることで、消化や免疫の働きも保たれます。
温度計は暖かい側と涼しい側に1つずつ置き、ヒーターはサーモスタットで管理しましょう。
「最近動きが鈍い」と感じたら、まずケージの温度を確かめてください。適温なのに元気がなければ受診を、とRSPCAは案内しています。
寄生虫・原虫はフンからまた口に入る
MSD獣医マニュアルでは、体内の寄生虫は飼育下の爬虫類で最も多い健康トラブルの1つとされています。
多くは宿主が1匹いれば増えることができ、フンに出た卵などから同じ子にまた感染します。
コクシジウムの卵は、環境中で数週間生き残ります。ケージに残ったコオロギがフンから卵を取り込み、それを爬虫類が食べてしまうこともあります。
コクシジウムは2〜4週間治療しても、いなくなるのは半分ほどのケースにとどまるとされています。
だからこそ、フンと食べ残しの虫を毎日片付けることが大切です。
クリプトスポリジウムという原虫は、国内の調査で幅広いトカゲから見つかっています。
ヒョウモントカゲモドキ科・ヤモリ科・アガマ科(フトアゴの仲間)・カナヘビ科と、この記事の4種すべての仲間が含まれます。
レオパでは、下痢・食欲不振・極端な痩せが見られた報告があります。
出典:MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の住まいと食事(飼い主向け)」/科研費データベース(KAKEN)「輸入爬虫類の侵入感染症に関する疫学的・病理学的研究」/Open Veterinary Journal「アルゼンチンのヒョウモントカゲモドキにおけるクリプトスポリジウム感染」/RSPCA「爬虫類の体調不良に気づくには」
種類別に気をつけたいこと
原因は共通していても、適温や食べ物は種類によって違います。下痢が続くときは、その子に合った環境になっているかを確認しましょう。
レオパ(ヒョウモントカゲモドキ)
MSD獣医マニュアルでは、レオパが好む温度帯は25〜30℃とされています。
ホットスポットはそれより5℃ほど高く、夜は5℃ほど下げるのが目安です。
レオパは昆虫を中心に食べます。コオロギなどの生き餌は寄生虫の運び役にもなるので、食べ残しをケージに入れっぱなしにしないようにしましょう。
国内では2001年に、レオパでクリプトスポリジウムの感染が初めて確認されました。
下痢に加えて痩せてきた・尻尾が細くなってきたときは、早めに検査を受けると安心です。
痩せや拒食が気になる場合は、こちらの記事もあわせて確認してください。
フトアゴヒゲトカゲ
フトアゴが好む温度帯は25〜32℃で、紫外線(UVB)ライトが欠かせない種類です。昆虫と植物の両方を食べます。
フトアゴで特に注意したいのが、アデノウイルスです。フンが口に入ることでうつり、元気がない・体重が減る・下痢などのはっきりしない症状が出ます。
若い個体ほど発症しやすく、急に亡くなることもあります。症状はコクシジウムや栄養の病気とよく似ていて、見た目だけでは区別できません。
回復したあとも、少なくとも3か月はほかの個体と分けておくよう、MSD獣医マニュアルはすすめています。
カナヘビ
適温は種類によって違うため、MSD獣医マニュアルでも、迎えたお店や獣医師に確認するようすすめています。
国内の調査では、クリプトスポリジウムの感染が確認されたトカゲの中に、カナヘビの仲間(カナヘビ科)も含まれていました。
新しく迎えた爬虫類は、3〜6か月ほど別のケージで様子を見る(検疫)のが推奨されています。
下痢がほかの子に広がるのを防ぐためにも、いきなり同じケージに入れないようにしましょう。
ヤモリ
ヤモリの仲間(ヤモリ科)も、国内の調査でクリプトスポリジウムの感染が確認されたグループの1つです。
ヤモリもレオパと同じく昆虫を食べるため、フンを毎日取り除き、食べ残しの虫を片付けるといった基本の対策がそのまま役立ちます。
出典:MSD獣医マニュアル「主な爬虫類の飼育条件(表)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の飼育管理(獣医師向け)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」/科研費データベース(KAKEN)「輸入爬虫類の侵入感染症に関する疫学的・病理学的研究」
病院へ行く前にできること

便を確保して持っていく
AZEAHによると、下痢便は少量を湿らせたペーパータオルにのせ、ビニール袋に入れて持っていきます。
室温で保管し、4時間以内に病院へ届けるのが目安です。粘液が多いときは粘液も、尿酸の色がおかしいときは尿酸も一緒に入れましょう。
床材を新聞紙に替える
MSD獣医マニュアルでは、体調の悪い爬虫類の床材には新聞紙がすすめられています。
掃除がしやすく、フンや吐き戻しの様子が見やすいからです。砂や細かい砂利は、飲み込むと腸が詰まるおそれがあるので注意しましょう。
温度と水分を確保する
ケージの暖かい側・涼しい側の温度を確かめ、適温から外れていれば直します。
脱水ぎみの爬虫類は、適温に保ったケージの中で浅い水に浸からせると、水を飲むことがあります。ただし重い脱水では、病院での点滴などが必要です。
家でやらないほうがいいこと
- 無理やり餌を食べさせる(脱水した子への強制給餌はかえって体に負担をかけることがあり、獣医師の指示のもとで行う)
- 検査をせずに駆虫薬を使う(寄生虫の種類によって効く薬が違う)
- 具合の悪い子を、ほかの子と同じケージに置いたままにする
出典:AZEAH「爬虫類の異常なフンの見分け方」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の住まいと食事(飼い主向け)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」
飼い主さんへの感染に注意
爬虫類のフンには、人にうつる菌がいることがあります。
厚生労働省によると、カメなどの爬虫類のフンを調べた文献では、50〜90%からサルモネラ菌が見つかっています。
サルモネラを持っていても爬虫類の見た目は元気なので、下痢をしていない子でも油断は禁物です。
- お世話や掃除のあとは、石けんでしっかり手を洗う
- ケージから出して部屋を自由に歩かせない。台所など食品を扱う場所に近づけない
- 水入れなどの飼育用品は、食器を洗う流し台で洗わない
- 小さな子ども・高齢の方・免疫が弱っている方がいる家庭は特に注意する
飼い主さんが下痢や発熱で受診するときは、爬虫類を飼っていることを医師に伝えましょう。
なお、爬虫類のクリプトスポリジウムが人にうつることはまれとされています。
出典:厚生労働省「ミドリガメ等のハ虫類の取扱いQ&A」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」
よくある質問
Q. 1回だけ下痢をした。様子を見てもいい?
AZEAHは、いつもと違うフンを見つけたら、便を持って獣医師に寄生虫などの検査をしてもらうようすすめています。
1回きりでも、便を確保しておくと相談がスムーズです。前の章のサインがあるときは、早めに受診を検討しましょう。
Q. 同じケージのほかの子にもうつる?
うつる可能性があります。コクシジウムの卵は環境中で数週間生き残り、フンを通じて広がります。
MSD獣医マニュアルでは、1つのケージには1種類だけが理想で、単独で飼う爬虫類がいちばん健康なことが多いとされています。
フンをすくう道具も、ケージごとに消毒しましょう。
Q. 寄生虫の薬を先に使ってもいい?
まずは便の検査で、寄生虫の種類を確かめることをおすすめします。駆虫薬には多くの種類があり、寄生虫に合わせて獣医師が選ぶものだからです。
コクシジウムのように、治療に2〜4週間かかるものもあります。
Q. 下痢が治ったあとに気をつけることは?
RSPCAは、行動・食欲・フン・体重を、少なくとも週1回チェックする習慣をすすめています。
成長期の子は少しずつ体重が増え、大人は体重を保っているのが正常です。体重が急に、またはじわじわ減っているときは、受診を検討しましょう。
出典:AZEAH「爬虫類の異常なフンの見分け方」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の飼育管理(獣医師向け)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の住まいと食事(飼い主向け)」/MSD獣医マニュアル「爬虫類の病気(飼い主向け)」/RSPCA「爬虫類の体調不良に気づくには」
あわせて読みたい
カナヘビ・ヤモリ・レオパのほかの病気についても、こちらの記事で解説しています。
まとめ
- トカゲのフンは便・尿酸・尿でできている。白い部分は尿酸で、それだけなら心配いらない
- 便そのものが形を保てず、やわらかい・水っぽい状態が下痢
- 原因はレオパ・カナヘビ・ヤモリ・フトアゴで共通。まず温度などの飼育環境と、寄生虫・原虫を疑う
- フトアゴはアデノウイルス、レオパはクリプトスポリジウムにも注意
- 血や粘液が混じる、食べない・痩せる、元気がないときは、便を持って早めに動物病院へ
- フンと食べ残しの虫は毎日片付け、お世話のあとは石けんで手洗いを
この記事は獣医学の資料をもとにした一般的な情報で、診断や治療の代わりになるものではありません。体調に不安があるときは、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。
ぽちたま薬局では、トカゲ・ヘビ・カメなど爬虫類に使用されるお薬も取り扱っています

幼少期にやんちゃなビーグル・うさぎ・ハムスターと過ごしました。現在は動物と暮らしてはいませんが、オウムと猫の動画を見て栄養補給を欠かしません。






